新自由主義2
出典: Jinkawiki
1980年代以降に世界的に支配的となった経済思想・政策の潮流。1960年代の末から70年代にかけて、ドル・ショック(アメリカの経済的衰退を明確にしたドルの金兌換中止)、オイル・ショック、激化する労働運動、そして低成長下のインフレーションなど、第二次世界大戦後、高成長を維持してきた先進国の資本主義は大きな危機にみまわれた。その際、その高成長を支える思想体系としてのケインズ主義(市場を自由放任にするのではなく、政府が積極的に介入する)にとってかわる危機の解決として現れ、80年代から資本主導のグローバリゼーションのイデオロギー、実践的な知として支配的潮流の座についたのが新自由主義である。その源流にはフリードリヒ・ハイエク、シカゴ学派のミルトン・フリードマンといった経済学者がいる。
そもそも自由主義は、いわゆる「自由放任主義」としてイメージされるような、市場の論理を制約する一切をただただ退ける消極的な議論ではない。18世紀にデビッド・ヒューム、アダム・スミスらによって提起された古典的自由主義は、それまでの絶対王政や重商主義に取ってかわり、国家ではなく、市場を介してみずからの利益を理性的に追求する諸個人からなる自律的な社会の運動法則から出発する統治の技法を提案する実践的な知でもあった。絶対王政を支えた国家理性の教義が、統治能力の向上と国家の肥大とを密接に結びつけていたとすれば、自由主義は統治能力の向上のためには国家はむしろ介入の領域をみずから制約しなければならない、と発想の転換を促したのである。
新自由主義は古典的自由主義と同じく、実践的な知である。たとえば、古典的自由主義は、絶対王政の「過剰統治」と国家の肥大化を批判し、「神の手」によって運営される市場の論理にもとづく市民社会の自律性をうたいながら登場したが、新自由主義はケインズ主義的福祉国家の所得再分配政策などがもたらす「過剰統治」と国家の肥大化こそがシステムの機能不全の原因として、規制緩和、福祉削減、緊縮財政、自己責任などを旗印に台頭した。その場合、古典的自由主義とは区別される新自由主義の特徴は、独特の保守的側面と「ラディカル」ともいえる徹底した側面にある。すなわち前者が絶対的な国家秩序を批判しつつ啓蒙主義的勢力として現れたのとは対照的に、新自由主義は新保守主義と手をたずさえながら、家族の価値のような保守的道徳観の復活、治安の強化、マイノリティの権利の削減、排他的ナショナリズムといった強い国家の再編成を促す傾向にある一方で、従来は市場の論理にはなじまないとされてきた領域――たとえば公教育、福祉、犯罪政策など――にまで、その論理を拡大する徹底した傾向をもつ。
こうした新自由主義による改革の効果は、アメリカのように一部の先進国の経済成長に資した部分もあったが、企業権力の肥大化、南北間のみならず一国内での貧富の格差の拡大、弱肉強食イデオロギーの浸透による市民の連帯意識の衰退といった負の効果ももたらし、90年代以降は「第三の道」と呼ばれるヨーロッパでの社会民主主義勢力や、アンチ・グローバリゼーションの運動など、さまざまなレベルで新自由主義にかわる社会のあり方が模索されている。
出典http://100.yahoo.co.jp/detail/%E6%96%B0%E8%87%AA%E7%94%B1%E4%B8%BB%E7%BE%A9/