方言3

出典: Jinkawiki

目次

方言とは

方言とは、地域の言語の総体(体系)である。そもそも、日本の国語は日本語である。私たち日本人の大部分は日常生活で日本語を話しているが、ひとくちに日本語といっても、その内容は地方によって大きく異なる。たとえば青森県の人と鹿児島県の人が家族どうしで話している言葉を使って会話をしようとしても互いにほとんど通じないであろうし、それどころか同じ県内であっても方言圏が異なれば、その中身はかなり違う。このように、同一の国語の中で地域差が認められるとき、それぞれの地域で話されている言語を方言(dialect)という。冒頭で言ったように、方言は地域の言語の総体(体系)であって、私たちが英語を学ぶときに英単語を覚えるだけでなく、発音もアクセントも文法体系も学ばなければならないのと同様に、各地域の方言を話すためには、これも、発音、アクセント、語彙、文法などのすべてに習熟する必要がある。


地域方言と社会方言

特にことわりなしに方言といえば、地域方言を指すのがふつうであるが、同じ地域であっても、年齢や職業などによって、使われる言葉がかなり異なる。このように、同一地域において言葉使いに年齢差や職業差などが認められるとき、それぞれの階層の用いる言語を社会方言(social dialect)と呼ぶことがある。現代の若者の多くは仲間内ではかなり特色のある言葉使いをしているが、これらは社会方言の一種であり、若者方言とも呼ぶことができる。


地方共通語

現代の日本人は老いも若きも方言と共通語を使い分けている。すなわち、日常のくつろいだ場面では方言を使い、あらたまった場面では共通語を用いるのがふつうである。しかし、地方の人たちが話す言葉は完全な共通語ではなく、音声、アクセント、語彙、文法的特徴の一部に方言的特長が混在するのがふつうであり、このような方言交じりの共通語のことを地方共通語という。これは一般に、高齢層であるほど地方共通語の色彩が濃い。また、このような地方共通語に対して、方言色のない共通語、すなわち全国に通用する共通語は全国共通語と呼ばれる。明治、大正期以降、社会の近代化につれて、日本の方言は共通語化の道をたどったことで昔ながらの方言を話す人が少なくなっていったが、世間で言われているほど方言が衰退しているわけではなく、地域の人々の共通使用能力の増大が方言の衰退と誤認されている面もある。とはいっても、各地の方言における方言語彙の衰退は著しく、方言音声も次第に失われつつあるのが現状でもある。このような共通語化の影響を受ける以前の方言を伝統的方言と呼ぶことがある。一般に、方言調査においては、高齢者を調査対象に選ぶことが多いが、それは、これらの調査の目的が伝統的方言の調査研究を目的としているからである。現代の地方言語の実態を把握するためには、中年層、若年層の方言や、方言と共通語の使い分けの実状にも目を向けることが必要である。


共通語と標準語

方言(地方方言)に対立する概念が共通語(common language)である。共通語とは、たとえば、「英語は世界の共通語である。」といわれるように、地域を越えて広く用いられる言語を指す。すなわち、共通語は現実に存在する多数の地域言語の一つであって、「共通語」という別個の言語が存在するわけではない。世界の国々の中には言語が複雑な状態にあったり、言語が原因で政治紛争になったりしているという現実がある中で、日本では、日本語が唯一の公用語、教育語、日常語であるため、この日本の言語状況は極めて幸福であるといえる。事実、今日では衛星放送で英語によるニュースが放送されたり、日本のテレビ局でも英語が併用されたり、国際英語検定の得点を管理職登用の条件にする企業が現れるなど、日本社会の中に英語が少しずつ定位置を占め始めている。そんな状況下の日本だが、日本の共通語の地位を占めているといえるのは東京地方で話されている言葉、つまり、東京方言であろう。東京を含む首都圏で話されている言葉の大部分、すなわち、首都圏方言が共通語の地位を獲得しているのである。標準語(standard language)は共通語と意味の類似する概念であり、時には全く同じ意味で使われる。共通語はそれぞれの地域の人たちがよその地域の人たちと話をするときに用いる現実の言語であるが、標準語は人が規範として頭の中に持っている言語形式、または、言語(日本語)の専門家が規範と定めた言語形式である。また、共通語が話し言葉であるのに対して、標準語は書き言葉的な性格が強い。ある単語が標準語であるかどうかを知るためには、その言葉が辞書の見出しにあるかどうかが目安となる。しかし、「帽子を脱ぐ」「帽子をとる」のようなイディオム(慣用語)や「父にもらった」「父からもらった」のような文法形式に関しては、いずれが標準的用法であるのか、辞書によって判断することは困難である。


投稿者:UFO


参考文献

「方言の研究」著者:東條操 刀江文庫 「全国方言辞典」http://dictionary.goo.ne.jp/dialect/ 「生きている日本の方言」 佐藤亮一 新日本出版社


  人間科学大事典

    ---50音の分類リンク---
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                  
                          
                  
          

  構成