東北地方太平洋沖地震
出典: Jinkawiki
東北太平洋沖地震とは、2011年(平成23年)3月11日(金)14時46分18.1秒、日本の太平洋三陸沖を震源として発生した地震のこと。東日本大震災を引き起こし、東北から関東にかけての東日本一帯に大きな被害をもたらした。
2013年(平成25年)7月10日時点で、震災による死者・行方不明者は18,550人、建築物の全壊・半壊は合わせて39万8,711戸が公式に確認されている。
日本政府は震災による直接的な被害額を16兆から25兆円と試算している。この額は、被害が大きかった岩手・宮城・福島の3県の県内総生産の合計に匹敵する。地震災害による経済損失額としては世界史上最大のものである。
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地震発生
この地震は、2011年(平成23年)3月11日14時46分18秒(日本時間)、宮城県牡鹿半島の東南東130km、仙台市の東方70kmの太平洋の海底を震源とする東北地方太平洋沖で発生した。地震の規模はモーメントマグニチュード (Mw) 9.0であった。大正関東地震(1923年)の7.9や昭和三陸地震(1933年)の8.4をはるかに上回る日本観測史上最大であるとともに、世界でもスマトラ島沖地震(2004年)以来の規模で、1900年以降でも4番目に大きな超巨大地震であり、日本観測史上最大である。
震源は広大で、岩手県沖から茨城県沖までの南北約500km、東西約200kmのおよそ10万平方キロメートルという広範囲すべてが震源域とされる。最大震度は宮城県栗原市で観測された震度7で、宮城・栃木・福島・茨城の4県36市町村と仙台市内の1区で震度6強が観測された。
地震の特徴
・連動型地震
数十年~百数十年間隔で発生する海溝型のマグニチュード8前後の大地震ではなく、それらが複数同時に発生する連動型地震であった。日本では、19世紀終盤の近代観測開始以来、初めて明瞭に連動型地震と断定されるものであった。
・海溝型地震
北アメリカプレートと、その下に沈み込む太平洋プレートの境界部、日本海溝と呼ばれる地域で発生した海溝型地震であった。
・予想外の規模
地質調査や文献調査では、東海・東南海・南海地域において20世紀中盤から、関東地域において20世紀終盤から広く認識されていた一方、東北太平洋沖、北海道や千島列島の太平洋沖、九州や南西諸島の太平洋沖ではそれぞれ21世紀に入ってから、その可能性を示す知見が得られつつあった程度で、地震学界でも強く認識されていなかった。そのため、被害想定でもマグニチュード8前後の海溝型地震までしか想定されていなかった。本地震後、新たな知見の集約や地震想定を見直す動きが活発化している。
・広範囲の強い揺れ
規模が大きく震源域が南北に長かったため、平行する本州・東日本の広範囲で強く揺れた。また、減衰しにくい長周期地震動によって名古屋、大阪など遠方でも揺れを観測した。
・余震や誘発地震の多発
本震後、余震、誘発地震が多発した。このことによって、「地震酔い」をする人も現れ、地震が起きていなくても起きている錯覚に陥る人が多数いた。研究者・行政双方から、東日本では地殻変動の影響で被害をもたらすような地震の発生が促されているとの発表がなされ、警戒が強められている。
・長時間続いた揺れ
本震の地震動は東日本全域で6分間以上継続し、長い揺れとして体感された。長周期地震動は10分間以上、地球を自由振動させる超長周期地震動に至っては数十時間にわたって観測された。断層が滑る過程で、強い地震波を放出する破壊が数回に分けて断続的に発生したことが原因だとする説が発表されている。
被害
・高い津波の発生
東北・関東・北海道などの太平洋岸に数m以上の津波が到達、内陸の浸水が広範囲に及んだ。津波地震でみられるようなゆっくりとした断層の滑りや、津波が高さを増すような複数回にわたる滑りが生じていたことなどが原因だとする説が発表されている。この津波により、多くの建物が崩壊され、家をなくしてしまった人たちがたくさん出た。
・液状化現象の多発
液状化現象も各地で発生した。地震の揺れには耐えた家でも、 その後の液状化により大きく傾く家が続出し、23,000軒を超える住宅が被害を受けた。特に、千葉県浦安市をはじめとした湾岸地区、内陸部でも埼玉県久喜市のような田んぼを埋め立てた土地においての被害が大きかったと言われている。
・原子力発電所事故
地震と津波により福島第一原子力発電所事故が発生し、10万人を超える被災者が屋内退避や警戒区域外への避難を余儀なくされた。全電源を喪失して原子炉を冷却できなくなり、1号機・2号機・3号機で炉心溶融(メルトダウン)が発生。水素爆発により原子炉建屋が吹き飛び、大量の放射性物質の漏洩を伴う重大な原子力事故に発展した。警戒区域外でも、放射性物質漏れによる汚染が起きているほか、日本の原子力発電所の再稼働問題、電力危機なども発生している。
・大規模の停電
停電世帯は800万戸以上にのぼった。また、この時期の東北地方はかなり寒く、停電してしまったために暖房機器が使えなくなり、被災者たちは厳しい寒さに耐えなければいけない状況に陥った。
復興活動
地震発生から数年経った現在(2013/8/7)でも復興活動は続いている。
国内の多数の企業・団体も震災後に物資提供や金銭などの支援を表明している。また通信・報道企業が災害用伝言板・安否情報提供の運用や情報インフラ支援などを行ったのをはじめ、震災の影響に応じた様々な支援やサービスを提供しているところがある。
地震直後より、国際連合を始めとした国際機関、アメリカ合衆国やロシア連邦を始めとした世界各国も日本に対して支援の用意があると表明、様々な対応や支援を行っている。特にアメリカは、洋上基地として原子力空母ロナルド・レーガンを派遣するなどの「トモダチ作戦」を展開した。
諸外国政府による公式な対応、支援以外にも、日本国内外を問わず様々な組織・団体または有志が、この地震に対しての支援を表明・実行している。
この地震に対する救援・支援の輪が広がったことから、日本漢字能力検定協会が公募選定する2011年の『今年の漢字』には『絆』が選ばれ、その理由の筆頭に東日本大震災が挙げられた。
復興方針の骨格を決める東日本大震災復興基本法(6月20日可決、6月24日施行)、国の復興業務を一本化した復興庁(2012年2月10日設置)を軸として政府の復興事業は進められている。しかし、当初より原発事故や計画停電に関する件を中心として政府や東京電力などに対して「対応が遅い」などの批判が相次いだ。津波被災地の多くで仮設住宅の建設や基幹産業である水産業の中枢である港湾の復旧が重点的に進められているほか、国の予算配分や有志による義援金の配分に基づいて復興計画が進められている。
自衛隊も最大で10万7,000人、7月21日時点でも2万3,000人規模で救助・捜索・避難所支援や復興支援活動を行い、7月下旬に岩手県・宮城県、12月下旬に福島県(原発事故対応を含む)での活動を終えた。
今後の地震対策
この予想をはるかに超えた東北地方太平洋沖地震をふまえて、長期評価の見直し、津波想定の見直し、津波警報の見直しなどがなされた。
長期評価の見直しでは、政府の地震調査委員会は、東海、東南海、南海地震などの海溝型地震の長期評価を見直すことを決めた。2011年11月に、三陸沖から房総沖までの長期評価を見直したものを発表し、今回のような地震(Mw8.4~9.0)が平均600年間隔で発生していると認定した。また、三陸沖から房総沖までの海溝寄りで、津波マグニチュード8.6~9.0の津波地震が30年以内に発生する確率が約30%あるとした。ただし、この発表は従来の予測手法によっており、今後さらに検討される。
津波想定の見直しでは、国の中央防災会議の専門調査会が、この地震を教訓とした津波対策について検討した。これからは確度の低いものでも考えうる最大のものを想定することを求めた。また、津波のレベルとして、住民の避難を柱にした総合的な対策を取るべき最大規模の津波と、防潮堤などで浸水を防げる比較的頻度の高い津波の、2つを想定する必要があるとした。
津波警報の見直しでは、最初に発表された津波警報の予想高さが過小評価となって避難の遅れにつながった面があったため、気象庁は津波警報の改善を検討し、マグニチュード8を超える可能性がある場合には、その海域で想定される最大マグニチュードに基づいて津波警報の第一報を出す方針を決めた。津波警報の発表には、3分程度で算出できる気象庁マグニチュードを通常は基にする。
参考HP
・気象庁 http://www.jma.go.jp/jma/index.html
・東日本大震災復興支援財団 http://minnade-ganbaro.jp/
・東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN) http://www.jpn-civil.net/