東海大学医学部付属病院事件3
出典: Jinkawiki
入院中であった末期がん患者に塩化カリウムを投与し死なせたとして、担当医の大学助手が殺人の罪に問われた。親族ではなく医者によって行われた安楽死が問題になった初めての事件。
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概要
1991年、多発性骨髄腫により患者は昏睡状態に陥っていた。介護に当たっていた妻や長男は点滴やカテーテルを抜くなど治療の中止を医師に求め、医師はこれに応じた。その後患者の大きないびきを聞いた家族が「いびきを聞いているのが辛い。楽にしてやってください。」と申し出たため、医師は鎮痛剤、抗精神病薬を通常の2倍投与。その後家族が「今日中に家に連れて帰りたい」と申し出るなど、家族の再三の要請と患者の容態に動かされ、医師は最終的に殺意をもって塩化カリウム製剤20mlを投与。患者は同日急性高カリウム血症のため心停止、死亡した。
翌月にこのことが発覚し、患者自身の死を望む意思表示がなかったため嘱託殺人ではなく殺人罪で起訴されるに至った。
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判決
横浜地裁は有罪、懲役2年執行猶予2年の判決を下し、確定した。
判決では医師による安楽死が許されるための4要件として
①患者に耐えがたい苦痛があること
②患者が死を避けられず、死期が迫っていること
③患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし代替手段がないこと
④患者の明示の意思表示があること
が挙げられた。安楽死が医師によるものであるという前提のため、それは要件に入っていない。
この事件では患者が昏睡状態にあって意思表示がなく、また耐えがたい苦痛を感じていなかったため、①と④において要件が満たされていなかった。