森の幼稚園11

出典: Jinkawiki

森の幼稚園11

目次

正規の幼稚園と森の幼稚園の相違点

「純粋の」森の幼稚園は、正規の幼稚園とは本質的に異なる。幼稚園の固有の建物は存在しない。子どもたちは、新鮮な空気の戸外で「風と天気」の下で遊ぶ。これが幼児たちに季節の規則的な移り変わりを直接肌で感じさせる。保育時間も違っていて、ふつう夏期は4時間だが冬期は3時間である。さらに、森の幼稚園では、閉鎖的な部屋よりも運動・活動の場所ははるかに大きい。したがって、この年頃の子どもたちが抱く生来の遊び・運動への衝動は、何にも邪魔されずに発揮できる。森は、躍り、走り、飛びはね、遊び、身を隠し、どろんこになり、その他いろいろなことに豊富な場所を提供する。だが、森の幼稚園の原型なら単純な運動神経の発達向上が図れるばかりでなく、森の幼稚園では複雑な運動能力の育成も軽視しない。

自然環境

 自然環境では、子どもたちの近代的精神的健康に決定的に役立つ。免疫組織が、新鮮な空気の中で過ごすことによって強められる。森の幼稚園児たちは、暖められすぎた部屋にしょっちゅうこもっている正規の幼稚園児たちに比べて、めったに風邪を引かない。空間が広ければ、鬱積した攻撃心は和らげられる。これはたどう多動性障害児がよくなるばかりではない。子どもたちは、自然に対して積極的な親近感を育む。彼らは森を何か比類のないものとして体験すれば、それは特別に守るに値するものとなる。ここで早くも、成人年齢になっても自然の中で自然に対して責任感のある触合いをするためのジシャクガ置かれることになる。

遊具の取り扱い

 遊具の扱いについては、森の幼稚園と正規の幼稚園とでは見解が真っ向から対立する。統一されたわずかな工具を除き、既成の遊具は完全に放棄される。子どもたちは個の分野では自立している。このことが、大いに言語の発育を支えるが、それはほかの子どもたちとの会話だけが頼りになるからだ。正規の幼稚園ではよくあるような刺激過剰な遊びの領域は森にはない。子どもたちは、「人形やレゴブロックの代わりにねっこや切り株と遊ぶ」この行動は、子供たちの自主性、創造力、とりわけ想像力を促進する。大きな集団とか限られた空間使用の場合の問題ー正規の幼稚園ではしばしばでくわすようなーは現れない。

クラスの大きさ

 クラスの大きさは、標準的な正規の幼稚園よりもはるかに小さい。通常はこのクラスは15人から20人の子どもたちで編成される。この世話は最小限2人だが、森の幼稚園では3人でする場合も幾らか見られる。このような恵まれた職員配備により、一人の子どもに対してそれぞれ多大な時間が割かれる。教諭[訳者注:幼稚園教員と小学校教員については以下の日本での正式名称の「教諭」を用いた]が病欠した場合には、たいてい母親がその代わりを引き受ける(ミュンヘンの森の幼稚園・ザートループの森の幼稚園)。

避難場所

 こういう施設の多くは、トレーラー・ハウスが避難小屋を持っており、突然の天候急変とか嵐や豪雨といった天候の悪条件の場合にはクラスはそこへ避難できる。だが、こういうことはふだんは滅多に起こらない。子どもたちは、森の中での雨、雪、あるいは氷点下のキオンニツイテモ一応の、知識は備えている。若干の森の幼稚園は、非常な悪天候の日には公的期間その他の施設から借りられる部屋を持っていて、そこでは必要な場合にはいつでも正規の幼稚園の日課を保証できる。

経費

 経費は正規の幼稚園よりは非常にわずかですむ。建物、暖房、清掃、栄繕、メンテナンスその他の費用は全くかからない。それに、森の幼稚園には、既成の遊具は全く置いていないので、この点でも費用は掛からない。工作材料、工具、その他わずかな調達品の費用以外は、ほとんど全てが人件費の支払いだけである。

体験

 われわれの機械化された世界では、子どもたちの人生において初体験はとりわけ重要である。森の幼稚園は、その変化に富んだ多面性により、こういった「直接」体験のための豊かな機会と十分な場所とを提供する。現代においては、多くの子どもたちはもはや自然と直接触れ合うことはない。だが、子どもたちは、自然野中での触合いによって、物づくりやそれによって感受性の最善な発達に役立てられる豊富な体験という理想的な機会をもつ。

障害児の受け入れ

 原則的に、多くの森の幼稚園は、障害児の受け入れに積極的に対応している。これが、幼稚園在園中にすでに障害者に対する偏見を払拭するのに決定的に役立っている。この受け入れは障害の程度いかんで左右され、前もって小児科医の判断を仰ぐ必要がある。(チュービンゲン、ヴィルヘルム村、バート・リーベンツェル、ウンターハヒングその他多数の森の幼稚園の本)。


まとめ 


 組織上の観点から見れば、森の幼稚園と正規の幼稚園との違いはごくわずかしかない。月々の費用も似たり寄ったりである。親たちの分担金は、ほとんどの森の幼稚園では正規の幼稚園のそれと相応する。(ロール、ローテンブルク、シェーンベルクの森の幼稚園)。怪我は、通常森の幼稚園ではわずかしか起こらない。(ローテンブルク森の幼稚園ホームページ)。保育時間も実質的に差はない。休日の日数は公立の正規の幼稚園とほぼ一致する。


参考文献

ペーター・ヘフナー、佐藤竺[訳](2009)『ドイツの自然・森の幼稚園―就学前教育における正規の幼稚園の代替物―』公人者

HN:KI


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