構成的グループ・エンカウンター

出典: Jinkawiki

目次

構成的グループ・エンカウンターとは

 エンカウンター・グループとは、「出会い」という意味であり、情報や知識や物事の善悪ではなく、感情の交流を主とし、自己についての発見や他者の存在や他者との関係を確認し、行動の変容と成長を狙ったグループ体験である。エンカウンター・グループには大きく分けて、「ベーシック・エンカウンター・グループ」と、「構成的グループ・エンカウンター」の2種類がある。


特徴

1)クラスなど、偶然集まった、多人数のメンバーでも活用できる。

2)個人の問題ではなく、エクササイズによる共通体験の中で起こった感情について、メンバー相互の交流をする。

3)エクササイズを誘発剤にして、交流の方向や深度をコントロールできる。

4)短時間でできる。

5)リーダーは、カウンセリングの基本的な素養は必要だが、プログラムの定型化により熟練者でなくても展開できる。的確な指示を出して、集団を引っ張っていく力が必要になる。


手順

1)導入

2)ウォーミングアップ

3)インストラクション

4)エクササイズ

5)シェアリング

6)まとめ


エクササイズのねらい

①自己理解:これは他者理解に通じている。自分のことが分かる程度に他者のことも分かる。私たちは自分の顔の実像を見たくとも鼻の頭くらいしか見ることができないが、周囲の人々はいつも実像を見ている。また、私たちは他人を鏡にして自分のことが分かるという場合もある。他者の力を借りることによって、自己理解が進む。その結果として他者のことも理解できるようになるのである。

②自己受容:これは他者受容に通じている。つまり、“I am OK.”(自己肯定)の状態であれば、“You are OK.”(他者肯定)になる。自己嫌悪感の強い人は他者受容が困難であると言える。ここで言う「自己受容」とは、欠点や短所もあるが、そんな私にだって長所やチャーム・ポイントがあるという「ほどほどによい」自分自身をあるがままに受け入れているという心理状態のことである。

③自己表現・自己拡張:今ここでの感情を素直に表現したり、自分の考え方や気持ちを主張すること。自己表現は自己開示と同義語である。

④感受性:言語的または非言語のコミュニケーションにおける感受性はきわめて重要である。感受性が良いつまり、察しが良いと、打てば響くような対話(会話ではない)が可能になる。

⑤信頼体験:これは他者との間で頼る(自分を任せる)、頼られる(任せられる)という体験である。または甘える、甘えられるという体験である。つまり、相互依存の体験である。甘えばかりでは幼児的である。甘えられない場合には甘える能力を持たないということになる。

⑥役割遂行:参加メンバーはまず役割を通じて関係づくりができる。感情交流できる関係づくりに時間のかかる参加者には、役割関係を通じてコンタクトできる場面があると気持ちが楽になれる。また「隠れた役割(hidden role)の発見である。苦手な(自分の性格と正反対の性格)役割に挑戦してみて、自分の意外な能力を発見することもある。


エクササイズの方法

歩き回る・握手、二人組(聞き合う)、マッサージ、将来願望、印象を語る、リーダーについて聞きたいこと・感じたこと、四人一組(他者紹介・自己を開く)、ブレイン・ストーミング、自己表現訓練(視線による会話、手による会話、表現による会話、音声による表現、アニマル・プレイ)、傾聴訓練(受容、繰り返し、明確化、支持、質問)、自己概念カード、みじめな体験・成功体験、いいとこさがし など


シェアリング

 エクササイズに取り組んだ後、必要に応じてメンバー同士でシェアリングをする。エクササイズとシェアリングは相互補完的な役割を果たす。シェアリングとはエクササイズを取り組んでみて「感じたことや気づいたこと」を共有するという意味である。シェアリングには「ショート」と「ロング」の2種類あるが、一般的にはショート・シェアリングがよく使われる。ショート・シェアリングの意義として以下の3つが挙げられる。1つ目は、同じエクササイズに取り組んだとしても、体験の内容はそれぞれみな違っていることである。感じ方は十人十色であり、メンバー相互の固有の内的世界(体験)が開かれることで学ぶことができるのである。2つ目は、メンバーが感じたこと気づいたことを話し合うことを自由に話し合うことで、自分の感じたことや考えたことや行動したことなどについて、整理することができることである。整理できるとそれらの定着が促進される。すなわち、エクササイズのねらいである自己理解・感受性・信頼体験などが促進されるということである。3つ目は、ある感情を「体験する」ことや「体験している」という時に、“experience”や“experiencing”ということである。このような感情体験の心理過程をシェアリングで引き出すためには、「今どのように悲しいのか」「どんな風に怒っているのか」という月並みな質問となってしまうが、メンバー相互が自分の固有の体験を開くことや、体験によって自分が開かれていく過程においては極めて重要な質問となり得る。“oneness”(受容や共感を軸とした理解的態度)とは、このようなメンバー相互の関わりによって生まれてくるのである。


介入

 介入とは、エンカウンターを進めていく上で、リーダーが必要に応じて口を挟む指導のことを意味する。介入を行う状況や場面においては、参加メンバーが他者のプライドを傷つけたような発言をした時や、シェアリングの場面で、あるメンバーが場面を仕切るようなことをした場合や、発言を強要した時である。介入が必要とされる根拠として、以下の4つがある。1つ目は、参加者の心的外傷を予防するためである。こころの準備のないところで、突然プライドを傷つけられるような発言をされると、メンバーは極めて不愉快になったり憤りを感じる。このような場面でリーダーが介入することで参加者メンバーの人権を守ることができる。シェアリングにおける沈黙の自由を擁護するのは、人権擁護の視点に立っているということである。2つ目は、参加者に対して行動の仕方を学習させるためである。このことは、リーダーが補助自我となり、参加者の人権を守るとともに自己主張の仕方を教えていることになる。3つ目は、エクササイズのねらいを達成するためである。4つ目は、参加者が自分の中に起きている抵抗に気づけるようにするためである。メンバー自身がこの抵抗に気づくと、防衛という鎧が取れて、ふれあいと自己発見が促進される。メンバー自身が自然と話したくなった時にリーダーが適切な介入を行うことで、エンカウンターがよりよいものとなる。



参考文献

片野智治『構成的グループ・エンカウンター』駿河台出版社

野智治『構成的グループ・エンカウンター研究 SGEが個人の成長におよぼす影響』図書文化

國分康孝, 國分久子『構成的グループ・エンカウンター事典』図書文化

國分康孝, 國分久子, 片野智治『構成的グループ・エンカウンターと教育分析 : structured group encounter. 』図書文化


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