死刑
出典: Jinkawiki
現在、国際連合の定めた死刑廃止条約に批准したため、死刑が廃止されている国も多いが、日本や中国、アメリカ(全米15州と海外領土を除く)やアジア諸国で死刑制度が存置されている。また、一般犯罪においては死刑を廃止しているが、戦時犯罪行為では死刑を定めている国もある。 様々な国によって適用のされ方、考えられかたが違ってくる。
■アメリカ
アメリカの政治体制は連邦制であり、各州に大きなイニシアティブを与えている一方で、連邦最高裁判所の権限は尊重される。連邦レベルでは、例外的犯罪だけに死刑が適用される。 各州は固有の刑法を持つが、ただしこれは、連邦法に抵触しないと判断される限りにおいてである。憲法的統制はほぼ自動的に働くようになっており、死刑判決は執行される前に最高裁所によって再審議される。 すでに19世紀にもさまざまな州で死刑を廃止しては、また復活させるということが何度も繰り返されてきたが、いうまでもなく連邦裁判所が各州の死刑廃止に反対することは決してなかった。 全体では、50州のうち36州で、再審が行われたことを条件に加重事由のある殺人で死刑を認めている。執行方法は、電気椅子・致死量の毒の注射・ガス室での窒息死・絞首刑・銃殺刑など、州によってさまざまである。1977年以降、法律によって極刑を復活させた36州のうち、すべての州が死刑を執行しているわけではないが、ここ数年死刑執行は増える傾向にあるように思われる。1977年から1992年の間にアメリカで執行された死刑は170件に及び、さらに2500人以上の死刑囚が自らの定めを体験することを待っている。
■イギリス
ロベスピエールやモンテスキューは、かつて日本を世界で一番残虐で野蛮な死刑方法を行っていた国と評した。江戸時代の多種多様な死刑方法を指してそういったのである。しかし、ヘンリー8世国王時代と比べると、その残虐ナンバーワンの我国さえ顔負けである。ヘンリー8世にとって、確かに死刑は楽しい見世物であったのであろう。1509年~1543年までのヘンリー8世の在位中約72000人の罪人が絞首されたという。 英国の死刑廃止運動に多大に貢献したのは『20世紀における死刑』を刊行したロイ・カルヴァートであった。カウヴァートは1925年に死刑廃止全国協議会書記長に若干28歳で就任した。スカンジナヴィアやノルウェーなどの死刑廃止国の廃止後の殺人状況などを丹念に調査して、実証的な死刑廃止論を訴えた。これが国内で死刑存置論者も含めて大きな反響を呼んだ。 カルヴァートが国会に働きかけた死刑廃止法案は一時下院を通過、国会も5年間を試験期間として死刑廃止を勧告したが、第一次世界大戦が起こり実現しなかった。その後、カルヴァートはわずか36歳の若さで急死した。英国議会では、その後も何度も死刑廃止法案が繰り返し提案され、議論が続いた。そんな中で、世論を死刑廃止に向かって大きく揺さぶったのは誤判事件の続出だった。 議会では死刑廃止に賛成か反対か徹底した議論が行われたが、死刑が廃止されると犯罪が増えるかどうかが争点になった。英国ではそれまで数多くの罪が死刑相当罪になっており、漸次減少していったが、そのために対象の犯罪が増えたことはなかった。 論争が続く中、死刑永久廃止法案が労働党のウィルソン内閣によって提出された。マスコミや世論の一部には暴力犯罪が急増し、治安に対する不安感が増しているのに、時代に逆行するものとの、この法案に批判的な声もあった。キャラハン内相はこれらの声を代表する存置論者の反対意見に対しては、敢然と次のように答弁した。「議会はときに、世論に先行して行動し、それを指導しなければならない時がある。刑罰問題に関しては、以前にも議会がこのように行動したことはまれではないが、この場合、議会は間違っていなかった。今日われわれは再び、それを指導しようではないか。」 こうして1969年に死刑の永久廃止が決まった。
■中国
社会主義国や発展途上国である中国は、欧米先進国は死刑廃止の議論が尽くされ、政治的、思想信条の自由が確保されているのに対し、社会主義国や開発途上国では死刑制度は反対制運動の弾圧と圧殺の武器にされている。 中国の死刑の実情や数字は政府が一切明らかにしていないので、カベ新聞や旅行者の話しや外国の新聞などによって部分的に推測する以外にない。中国の死刑制度の特徴は執行猶予制である。死刑判決に2年間の執行猶予があり、この間に基づいた改造を受け、死刑囚が悔い改めたり、すすんで改造を行う態度を示した場合は、2年後に減刑されるケースがある。ただ、死刑判決後にすぐ処刑されるケースもあり、この執行猶予制とのかねあいは、次の言葉が一つの判断の基準にされる。「殺人またはその他のもっと重大な罪があり、処刑しなければ人民の憤りをしずめることのできない者、および国家の利益にもっとも重大な損害を与えた者に対しては断固として死刑の判決をくだし、ただちに執行しなければならない。その罪が死刑に該当する者のうち、人を殺害したことがなく、人民の憤りも激しくない者、あるいは国家の利益に重大な損害を与えはしたが、その損害の程度が決定的に重大だというほどでない者に対しては、死刑ただし執行猶予2年という判決を下し、猶予期間に労働を課して、その態度をみるという政策をとるべきであるという意見も出てきている。
参考文献
http://www.jca.apc.org/stop-shikei/epamph/dpinjapan.html