産業革命4
出典: Jinkawiki
産業革命は道具から機械へと生産段階が変わったことに伴って工場制機械工業に基づく大量生産が始まり、産業上の飛躍的な発展に繋がり工業化社会が形成されていく過程のこと。18世紀後半のイギリスで始まり、19世紀に欧米諸国やアジアへ普及した。
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産業革命以前の欧州の商品生産様式
まず中世の都市では職人達が商品の生産を行った。職人達はギルドという組織を作って、相互扶助や過剰生産による共倒れを防ぐために生産量の調整などを行った。中世末以降になると問屋制家内工業と工場制手工業(マニファクチュア)が誕生した。問屋制家内工業とは、商人が職人に対して原材料と場合によって道具を貸与して、工賃を払って生産させるシステムのことでイギリスではギルドのよる生産統制が厳しい都市を離れ、農村地域で発達した。工場制手工業とは資本家が工場を建設して、労働者を雇って商品を生産する生産様式のことである。工場制手工業は多くの労働者を一緒に労働させる協業と生産過程をいくつかの工程に分けて生産する分業を特色としていた。
なぜイギリスで産業革命が初めて起こったか
まず第一にイギリスは機械を導入するだけの資本を持っていたことが挙げられる。イギリスは中世以降羊毛・毛織物産業を中心に商工業が発展し、郷紳や都市の商工業者が資本を蓄積していた。加えて、スペインとのスペイン継承戦争でスペイン植民地への奴隷の搬入権(アシエント権)を獲得し大西洋三角貿易の覇権を握った。これによってイギリスは大きな資本を持つこととなった。第二に経済活動の自由化が挙げられる。イギリスは産業革命以前の17世紀に起こったイギリス革命の結果の王権を制御した。国政は内閣が担い自由に経済活動ができる環境を整えた。第三に労働者の創出が挙げられる。イギリスは農村革命に伴う第二次囲い込みが発生しており、土地を追われた農民が数多くいた。こうした農民は生活の糧を求めて大量に都市に流入した。そして、都市の工場労働者となっていった。
イギリス産業革命の発展
繊維工業の発達
イギリスの産業革命は繊維工業から開始した。繊維工業では布を織る織機と布を原材料である糸から紡ぐ紡績機の二種の機械が発明された。織機の代表的なものとして飛び梭と力織機がある。飛び梭とは縦糸に横糸を絡ませる道具を左右両方からバネで弾いて速く布を織れるようにした機械でジョン=ケイによって開発された。力織機はカートライトが制作した蒸気機関によって動く織機で一人の労働者で複数台の織機を操作できるようになった。紡績機の代表的なものとして多軸紡績機と水力紡績機挙げられる。多軸紡績機はハーグリーヴスが発明した。別名ジェニー紡績機とも呼ばれている。このジェニーという名前はハーグリーヴスの妻もしくは娘の名前に由来していると言われている。この機械は大量の糸を同時に紡ぐことができ、1人で80本の糸を紡ぐことが可能だったが手動であった。その後、水車の動力を用いて糸を紡ぐ水力紡績機がアークライトによって開発された。後に多軸紡績機と水力紡績機の利点を組み合わせたミュール紡績機も開発された。
蒸気機関の発明・開発・発展
産業革命以降様々な分野の動力として用いられた蒸気機関であるが、当初はごく限られた分野でしか使用されていなかった。ニューコメンが開発した蒸気機関を用いた排水用ポンプは鉱山の排水には用いられたが、他に応用されることはなかった。ワットはニューコメンの蒸気機関を改良し、上下のピストン運転のみだったものを一本のクランクを用いて円運動に変更した。こうして、蒸気機関は色々な機械の動力として利点されるようになった。これは流水を動力としていた以前から工場の立地の選択肢が大幅に広がった。蒸気機関を用いた発明として有名なのは、蒸気機関車である。これはトレヴシックによって開発され、スティーヴンソンが改良が行った。1825年に石炭輸送のためにストックトンとダーリントン間が鉄道で結ばれこれが初の実用運転であった。これを皮切りに一般の旅客や物資の運搬も本格化した。
産業革命がもたらした社会的変化
産業革命の結果、工業の担い手である産業資本家が経済力が増し地主や商業資本家に対して、新興階級として台頭してきた。また産業資本家に使役されている労働者の数も増大し、現在に続く、資本家と労働者の二者構造がより顕著になった。また、機械化の流れの中で工業生産に熟練した技術が必ずしも必要ではなくなり、単純で長時間の過酷な労働が主流となっていた。高度な技術が必要でない分野では安価な労働力として女性や子どもが重宝された。このような流れの中で1811年にイギリス中部のノッティンガムを初めとして、機械化よって職を奪われた職人たちを中心として機械の打ち壊しを行うラダイト運転が起きた。産業革命は近代資本主義を生み出したと同時に労働問題をも生み出した。
引用文献
青木裕司 2015年 青木裕司 世界史B講義の実況中継③ 語学春秋社
ノーバード・ウィーナー 1979年 人間機械論 人間の人間的な利用 (鎮目 恭夫・池原止戈夫訳) みすず書房