福祉国家2

出典: Jinkawiki

福祉国家とは

福祉国家とは社会保障制度と完全雇用政策とを中心として、全国民の衣食住はもとより、健康で文化的な高度な生活を確保するような処置を講している国家を言う。 最も典型的な福祉国家はスカンジナピア諸国において、民主社会主義政党の長期政権下に、北欧学派の近代経済理論を応用して実現されている。 この場合、適度の経済成長によって国民所得の総額を継続的に増加することと、租税政策および社会保障を通じて、分配の公正化をはかることの二点が重要である。 前者の条件を欠く場合には、富の平等ではなくて、貧困の平等が実現し、福祉国家ではなくなる。また言論、集会、結社の自由を基礎とする議会制民主主義をとることは、国民の物質的福祉ばかりでなく、精神的福祉を確保するという意味で不可欠の前提となる。 スターリンのソ連やヒットラーの第三帝国も、社会保障を行い完全雇用を実現したが、政治的民主主義をまったく欠いていたために、福祉国家ではなかった。第二次大戦後、労働党内閣のもとで、イギリスはピバリッジ報告に基づいて、揺りかごから墓場までの社会保障を実施し、完全雇用政策とあいまって、福祉国家に仲間入りをした。 欧州諸国の中で、福祉国家が実現している度合いは、その国における民主社会主義政党の勢力に正比例しているといっても過言ではない。 世界一の生活水準を誇るアメリカには民主社会主義政党の勢力が有力ではないために、社会保障制度は極めて不十分である 。従ってアメリカは豊かな社会ではあっても福祉国家になったとは言い切れない。福祉国家は人間生活にとって最も大きな脅威である貧困と病苦との間題を解決した点に大きな意義があり、それは民主社会主義の歴史的功績と言ってよく、民主社会主義政党が福祉国家の実現をもって社会主義への前提条件と主張しているのも無理はありませんが、福祉国家にも多くの問題があり、福祉国家のサービスが強化されればされる程、累進課税率が高まり高額所得者の労働意欲を弱めることになる。 第二に社会保障が実現されるに従って、国家のサービスに依存する傾向が国民の間に強まり、独立独歩で自分の家計を切り開いていこうとする気構えが青少年や低賃金者の間に弱くなってくる。一応満ちたりた生活とはいえ、生命の充実感は必ずしも、充足されないために、性的犯罪や各種の反社会的な現象が生まれる。 福祉国家は社会問題を解決することにほぼ成功した反面に、欠点があることも事実であった。国民の精神的資質を高めることにより、質的に高度な福祉国家に進むことが必要とされる。


参考文献

福祉国家の可能性 岡本 英男 (著)


福祉国家の闘い―スウェーデンからの教訓 武田 龍夫 (著)

編集者 M.M


  人間科学大事典

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