移民政策
出典: Jinkawiki
国境をこえた人の移動が加速し、世界人口の3%は自分が出生した国と異なる国に生活の本拠を置いているといわれる今日、移民の存在を大前提とした政策はあらゆる国にとって不可欠なものとなっている。移民の受け入れや国内での処遇についての移民政策は、アメリカ等建国以来多くの移民を受け入れることで発展してきた移民国家や、ドイツ、フランスなどヨーロッパ諸国で体系化されてきた。フィリピンやメキシコなどの移民送り出し国側の政策も含んで移民政策と呼ぶこともある。
移民政策と多文化主義
白人政策をとっていたカナダやオーストラリアでは、1970年代以降から「多文化主義」へと転換する。カナダは、1971年に「多文化主義宣言」を行い、1987年に「多文化主義法」を制定。オーストラリアでも1970年代前半に「リベラル多元主義」とよばれる「共通言語としての英語や、基本的人権、民主主義等の価値・規範を公的生活の基本」におきつつ、「私的な領域での民族言語、文化の維持」を認め、援助し「人種・民族をめぐる差別を禁止」し、「非英語系の人びとに対して生活機会の平等を保障」する政策をとった。他にもベトナム難民の大量受け入れに踏み切るなど、現在もカナダ、オーストラリア両国では多文化主義を基本とした移民政策が継続発展している。
移民政策とヨーロッパ
ヨーロッパは第二次世界大戦後にヨーロッパ域外から戦後復興の労働力を受け入れた。しかし、1990年代以降ドイツの統一や東西冷戦構造の崩壊で東欧からの労働者が急増したり、EUの出現で域内の労働力移動も加速したこともあり、今日のヨーロッパの移民政策はEU域内と域外で二重構造になっている。つまり、域内においては「多言語・多文化」のヨーロッパ共同体を実現しているが、域外からの移民は徹底的に排除している。景気の低迷などで移民への世論が排斥傾向となる中、各国は「社会統合」(移民を含む様々なマイノリティが福祉の枠から排除されることなく配慮された社会をめざす考え方)を新たなキーワードとして移民政策の見直しをはかっている。
参考文献
多文化共生キーワード事典編集委員会「多文化共生キーワード事典」明石書店、2004
古賀正則「第三世界と人口移動」古今書院、1996 (T.I)