統合失調症

出典: Jinkawiki

目次

統合失調症とは

 精神病の一つ。幻覚や妄想といった精神病症状や意欲・自発性の低下などの機能低下、認知機能低下などを主症状とする精神疾患。主に思春期から成年期にかけて発症し、男性のほうが重症化しやすいことが指摘されている。世界中の様々な地域で百人に一人ほどが発症すると考えられており、決してまれな疾患ではない。統合失調症の原因は明らかになっておらず、薬物療法や、認知行動療法などの心理社会療法が行われる。

原因

 先にも述べた通り、原因は明らかにはなっていないが推測される原因として三つ挙げられる。  一つ目は「生物学的要因」である。統合失調症は遺伝的根拠を持つという考えがある。この考えはある家族ではほかの家族よりも統合失調症が発症しやすいという観察に基づいている。いろいろな統計を調べてみると、統合失調症は総人口の1%以下、約0,85%に発生するということである。一方、ある家族を三世代にわたって調べると発生率はさらに高い。親や兄弟、姉妹が統合失調症で苦しんでいる場合は、発生率が4%から10%に上がる。この単純で直接的な観察によれば統合失調症には遺伝的根拠があるという仮定も成り立つ。しかし問題はそれほど単純ではなく、ハンチントン舞踏病、血友病などの疾病の遺伝的特質には疑問の余地がない。遺伝学者はこれらの病気がメンデルの法則あるいはメンデルの法則から派生したものに従うという認識ができている。ただ、統合失調症においてはこの法則を当てはめることはできない。遺伝的素因は確認されてきてはいるがただそれだけで「引き起こす」原因には不十分であるとされているのだ。  二つ目は「心理的原因」である。統合失調症患者の多くが児童期、青年期、成人前期において何らかの心理的トラブルを抱えている。患者の人生における心理的出来事は、生物学的要因により助長されるものではあるが、統合失調症の種々の中でも大変重要なものである。児童期、青年期、成人前期の家庭環境や体験が因果の連鎖をつくり、ついには不安栄で傷つきやすい生き方を送ることになる。傷つきやすい人は、一生を通して心理的防衛を築き上げようとする。すなわち自己同一性、個性、自尊心を防衛するための心理的手法を築き上げようとするのである。いくつもの防衛が不満足に終わり、自分自身を全く受け入れることができないとき、患者は精神病的防衛と呼ばれるものに訴える。統合失調症の症状が現れ、そうなるとそんなにみじめにならずに生き続けることができる。このように、統合失調症の人生における心理的傾向は、お互いに関連しあう多くの小さな原因が順次重なり合ってできた要因とみなすことができる。  三つめは「精神社会文化的要因」である。これに関しては統合失調症患者が特定された時点では社会文化的要因を変化させようとしても遅く、また変化させようとしてもゆっくりとしか変化させることができない。困難を生じる社会的要因は心理過程の仲立ちをする作用を通して間接的に統合失調症の発生を促す。特に親から充分面倒を見てもらう可能性を減少させたり、個人の自尊心に有害な影響を与えるとき、統合失調症の発生を促すのではないかと考えられている。

主な治療方法

 薬物療法が基本とされている。いろいろな症状は脳の神経伝達物質の機能異常によって現れることは明らかにされていることから、薬物療法は主に、その機能異常を調節して症状を抑えるために用いられる。ただし、薬物療法だけでなく患者本人および家族への心理社会的療法を併せて行うことが良好な予後に欠かせない。治療法の組み合わせによる一年後の再発率を調べた研究によると、「薬物療法のみを行った群」での再犯率が約30%であったのに対して、「薬物療法とリハビリテーションを併用した群」および「薬物療法と家族心理教育を併用した群」の再発率は8%と著しく低下していた。リハビリテーションや家族心理教育を行っても再犯率は低下しませんので、薬物療法と組み合わせることで高い治療効果が得られることになるといえる。したがって薬物療法とを行って症状を抑えるとともに、病気によって障害された社会生活機能の回復を図るリハビリテーションや患者本人を支える家族のケア能力を高めることが、高い治療効果や再発予防に有効であるといえる。

参考文献

 シルヴァーノ・アリエティ 「統合失調症入門ー病める人々への理解ー」 星和書店 2004年 岡田 尊士 「統合失調症」 PHP出版社 2010


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