緑地生態学

出典: Jinkawiki

目次

緑地生態学の概念

緑地生態学には二つの意味がある。狭義には、緑地(open space)という空間を対象とする生態学のことである。広義には、景域(landscape,Landschaft)を対象とする生態学のことである。景域とは自然的要因と社会的条件を統合した複合的地域生態系であると定義すれば、緑地生態学は景域の管理、保全、回復、建設を目指した生態学、すなわち景域生態学(landscape econology,Landschaftsokologie)ということができる。

一方、狭義の緑地生態学は、緑地を生態学的に取り扱う専門分野であり、自然公園地域、農林業地域、都市緑地などの個別の緑地生態系を対象としている。また、広義の緑地生態学は、広義の緑地生態学地域の生態学的土地秩序の保全と創出を目的としたものであり、複合的地域生態系(または地域生態系複合)を対象にしている。 狭義の緑地生態学は、広義の緑地生態学に含まれるものであり、生物的空間を主な目的として、自然科学的、技術的側面から接近したものと位置付けることができる。

歴史的背景

初期には農地、林地、湖沼、河川などの個別の生態系を対象として研究されていた。しかもその目的は主として、農林業などの生物生産を安定的に増強させようとするものであった。これは、狭義の緑地生態系であり、生産科学的緑地生態学といって差し支えない。ところが1970年代に入ると環境保全の問題がクローズアップしてくるのにつれて、上記の対象空間のほかに自然地域や都市緑地をも対象に加えて、環境保全的側面を強く意識した研究が進むようになった。これも狭義の緑地生態学であり、環境保全的緑地生態学ということができる。都市生態系の研究や生態系保全を目的とした緑化工技術の進展などは、この時期の成果といっていい。

今後の展望

近年、環境問題の深刻化は生物的空間を自然科学的手法で研究するだけでは解決しえない事態になってきている。しかも問題が広域化し、国際的、地球規模にまで拡大してきており、酸性雨、砂漠化、熱帯雨林の減少などにみられる諸現象には社会科学的側面からの接近も不可欠である。人間の移住空間を、物理的、生物的、社会的、歴史的に統括した全体の地域システムとしてとらえ、この複合的地域生態系を太陽とした新たな研究分野が要請されてきた。これはシステムの永続的安定性を目的とした人間科学的学問領域であり、広義の緑地生態学である。これへの関心は、1980年代以降に急速に高まりつつあり、かつ世界的な傾向にもなっている。

参考資料

1.井手久登・亀山章「緑地生態学―ランドスケープ・エコロジー」朝倉書店、1993年

2.花木啓祐「都市社会論」岩波書店、2004年


H.merida


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