育児不安
出典: Jinkawiki
育児不安とは?
私たちが現在置かれている社会は「ストレス社会」といっても過言ではないほどストレスに囲まれている。さまざまなストレスが原因で心身に支障をきたしてしまう人も多い。特に神経症やうつ病、心身症や睡眠障害など心の病が増加しており、ストレスへの対応の重要性が増している(厚生労働省、2005)。 私はこれから、それらのストレスの中でも子育ての中で母親が感じている育児不安と育児ストレスを題材に取り上げていくことにする。多くの場合子育てに従事しているのは母親であるので、母親の育児にフォーカスしていく。 母親にとって、育児は本来楽しく幸せなひと時が感じられるものであってほしいと願うところであるが、実際には辛く大変なものであったり(大日向,1988)育児中に激しい苛立ちを自覚したり、子どもは持たないほうがよかったと思うことさえあるという母親も多い(佐々木,1996)。子育てをしている母親のほとんどが育児にストレスを感じているのが現状である(日下部・坂野,1999)。
育児不安は、親が子の育児に際して感じる不安(ストレス)などの総称であるが、子供への否定的な感情といった心理的な情緒・感情の変化から衝動的な攻撃を伴うものまでかなりの幅がある。これらは育児ストレスや育児ノイローゼ(→ノイローゼ)とも表現されるがそのような病的な状態に至らずとも、もっと漠然とした不安や困惑なども育児不安の語で表される。ただし、乳幼児の育児について育児の細々した方法や こどもの疾患などで、一時的・瞬間的に不安や戸惑いを覚えるようなものはこれには含めない。育児不安とされるものは、それらのストレスと感じる不安が継続的に続くものとされる。また、出産の直後や産後2,3日から3週間くらいの時期、母親が情緒的に不安定になり涙もろくなったりするものは、「マタニティーブルー」といい、育児不安とは区別する。ただこれは、そのまま改善しない場合、産後うつ症に移行することもある。この育児不安は、父親に見られることは少ない。その一方で、父親が子育てに非協力的な場合、母親が産後うつ症になりやすいことも指摘されている。(wiki)
原因と背景
・乳幼児とのかかわり自体に嫌悪感、不快感 → 望まない妊娠など。 ・育児の不慣れ → 乳幼児の疾患、発達に関しての情報不足、経験不足。幼児をペット化、ブランド物の服や靴。ただし、幼児の健康には疎い。 ・育児雑誌、他の家庭との比較 → 育児雑誌で何ヶ月でどんな行動とあるのに対して、一喜一憂。他の家庭の子の発達についても同様。 ・育児からの被害妄想、育児での被害者意識 → 幼児の為、自分の時間が拘束、束縛されていると、幼児を逆恨みする場合。度を越すと、虐待(→児童虐待)につながる。(wiki)
いずれの場合にも乳幼児の発達と行動、さまざまな疾患についての情報が不足していること、また父親の育児参加の不足、相談相手のないことなどが大きく影響していると見られる。その一方で先進国一般の現代社会では育児に関する情報が書籍からインターネットに至るまで溢れている面もあり、あれこれと情報を得た結果としてそれらに一貫性が 無かったり幾つもの可能性が考えられたりして結果的に混乱し不安を覚える場合もある。自治体では、公立保育園で、電話で育児相談に応じるようなシステムにしているところも多い。また電話相談で頻繁にある質問に対しては、Q&Aのパンフレットを作成し、市役所の担当部署や公立保育園の窓口で配布するといったことも実施されている。(wiki)
社会的背景
最近の社会では子どもや家庭をめぐる問題が複雑・多様化し、育児不安や虐待など多くの社会問題が生じている。現代社会における少子化や核家族化の進行は子どもと地域、大人との接触経験の少なさや地域と母親の交流関係が薄れてしまっていること、相談する相手が居なくなってしまっていることなどが重なり、孤立した育児環境を生み出してしまっている。そしてそれはもちろん育児不安を増幅させる原因であるのは明らかだ。「少子化社会白書」(平成16年版、内閣府)では、少子化の原因を晩婚化・未婚化・夫婦の出生率の低下などにあり、その背景として ①仕事と子育てを両立できる環境整備の遅れ。高学歴化。 ②結婚・出産に対する価値観の変化 ③子育てに対する負担感の増大 などがあるとされている。このような少子化を助長するものへの対策として近年様々な育児支援が計画・施行されてきた。日本では、育児不安という概念を牧野が1982年に提起してから20年以上が経つが、育児不安への絶対的に有効な対処法が存在するとは考えにくく、現代の社会状況や環境も絡み合い、母親の不安や孤立感は高まる一方である。少子化に歯止めをかけるべく出生率を高めるためにも、安心して育児をするためにも、より良い育児支援の環境が必要であることは明白である。