自我同一性

出典: Jinkawiki

自我同一性

 アメリカの精神分析学者エリクソンの用語。心理社会的発達によって青年期に獲得されるもので、アイデンティティともいう。人間は、母親、父親、兄弟、友人、教師などとの対人関係のなかで社会化されながら自我を発達させていく。自分にとって意味のある重要な他者との関係で「息子としての自分」「男性としての自分」「学生としての自分」などさまざまな社会的自己・役割を形成していくのである。こうした社会的自己・役割を見直し、取捨選択して統合した人格的同一性を形成することが青年期の発達課題である。どんな人種的集団、あるいは社会的階層の一員であるか、どんな職業生活を選択し、どんな人間になろうとしているかについて、自分を反省し、これが矛盾なく全体として統一のとれた体制をつくっていれば、自分がだれであるかを明らかにすることができ、自我同一性ができあがるといわれる。青年期は自我同一性の確立をめぐってさまざまな試行錯誤が行われるが、これは社会的役割実験といわれる。こうした役割実験はかならずしも成功するとは限らず、失敗に終わると同一性の拡散とよばれる混乱状態がおこる。この意味で青年期は同一性の危機の時代であるといわれるが、しかし自我同一性は青年期に限ったものではなく、誕生から死に至るまでにわたる人間の課題であり、容易に解決できるものでもない。

参考文献

・エリク・ホーンブルガー・エリクソン著 小此木啓吾訳

     『自我同一性――アイデンティティとライフ・サイクル』新装版(1973・誠信書房)

・鑪幹八郎他編『自我同一性研究の展望』(1984・ナカニシヤ出版)


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