薬物依存

出典: Jinkawiki


目次

薬物依存とは

薬物依存症と聞くと、法律で禁じられている麻薬や、過剰な睡眠薬などへの依存状態を指すと思っている人が多いようです。正確には、日常的な息抜きに用いられるニコチン、アルコール、カフェインなどへの過剰な依存も薬物依存症として扱われます。

薬物依存症の内容や深刻さは個々のケースで差異が大きいもの。例えば、どうしても禁煙できないニコチン依存と、法律で禁止されて いる薬物である覚せい剤依存とを同列に扱うのは、感覚的にも違和感があると思います。 それでも薬物依存症には、どの原因物質にも共通する特徴、原因、症状のパターンがあります。

薬物依存の特徴

「薬物依存症」と診断されるほど薬物依存が進むと、原因薬物を前にした時に自分の意思で使用をコントロールすることができなくなります。依存症の原因薬物が手許にない場合は、薬物のことが意識の中心を占めるようになり、それを求めるために多くの時間や労力を費やし、薬物中心の暮らしを送るようになってしまいます。一旦、薬物依存が強固になってしまうと、依存状態から自力で脱出することは大変困難です。

もっとも、薬物依存症はその原因薬物を試した人のすべてがなるとは限りません。例えば広義での薬物依存の一種であるアルコールの場合、毎晩グラス1杯のワインで満足するもいれば、飲み始めると必ず記憶がなくなるまで飲んでしまう人もいます。前者からは後者のタイプはあまり理解できず、「意思が弱いから酒に溺れている」「だらしがない」といったネガティブな印象を持ってしまいがち。しかし、原因薬物(この場合アルコール)に対するコントロールが効かなくなることは、決して意思の弱さや性格の問題とは限りません。


薬物依存の原因

薬物依存症になるほど依存が強固になってしまう要因の一つは、脳の神経科学的機能の変化。薬物依存症は心や性格というより、脳の病気と見ることができます。

報酬や快感を得ると、脳内の神経伝達物質であるドーパミンなどが活性化しますが、薬物依存症になるとドーパミンなどが関連する脳内 部位に何らかの病的変化が生じてしまうようです。実際にPETなどの画像検査で病的変化がはっきりと認められる場合もあります。 こうした脳内の病的変化は、薬物依存の場合は中枢神経系に作用する薬物が原因で起こりますが、薬物以外のギャンブル、ショッピング、セックスなどの行為でも生じると言われてます(これらは薬物依存症とは別に「ギャンブル依存症」「買い物依存症」などと呼ばれます)。脳の病的変化のせいで、原因薬物や行為への依存がさらに深刻になってしまうことも指摘されています。

一言で薬物依存症といっても、麻薬のように依存性の極めて高いものから、アルコールのように人によって依存度に差が出るものまでさまざま。薬物依存症の原因薬物が脳内にどう影響するかは、以下のような要因が相互作用して起こります。 ・本人の遺伝情報(脳内の神経伝達物質の受容体の化学構造など) ・気持ちの慢性的落ち込み ・不安定な人間関係などの心的要因 ・生活環境 ・日常のストレス

薬物依存の症状

薬物依存症の症状は、精神依存と身体依存の2つに分けられます。

■精神依存的な症状 心理的に原因薬物を激しく渇望する状態。原因薬物が手許にない場合、その薬物に関する思考が意識の中心を占め始めます。重度になるとその薬物に関する思考(使用時の快感度への思い)などによって、日常的に意識が乗っ取られたような状態になります。

■身体依存的な症状 身体依存とは、その原因薬物のために生じる体内の生理機能の変化のこと。耐性の形成と退薬症状の2つが起こります。「耐性の形成」とは、以前より多く摂取しないと、以前と同じ効果が得られなくなること。アルコールに強くなったと喜ぶ人もいるようですが、今までと同じ量では酔えなくなったということでもあるので、アルコールへの耐性が形成されていると考えられます。アルコールへ身体依存が生じている一つの証拠と考えることもできるのです。

「退薬症状」とは、その薬物の摂取を中断したときに出現する以下のような不快な症状のこと。原因薬物によって症状の出方に差異があります。 ・気分の不快感 ・不眠 ・発汗、動悸など自律神経系の亢進(こうしん)症状 ・手の震え ・頭痛、腹痛 ・痙攣 ・強いイライラ感

こうした耐性の形成や退薬症状の内容、深刻度は、原因薬物の種類、摂取期間、摂取量、個人の要因によって差異がありますが、耐性の形成、退薬症状の2つはともに原因薬物の摂取をエスカレートさせる原因にもなります。耐性が形成されると、今までどおりの効果を得ようとより多く摂取するようになり、摂取量の増加によって出現する不快な退薬症状を抑えるために、再び原因薬物を摂取するという悪循環から抜けられなくなるからです。


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