被曝
出典: Jinkawiki
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外部被曝と内部被曝
放射線の線源が体の外にあり、放射線が体外から照射される場合は「外部被曝(体外被曝)」と呼ばれ、体内に取り込まれた放射性物質が放出する放射線を被曝する場合には「内部被曝(体内被曝)」と呼ばれる。病院のレントゲン撮影は、外部被曝の例である。原爆被害者が火の玉から放射されるガンマ線や中性子線を被曝したのも外部被曝だ。原発事故で周辺地域に降り積もった放射性物質が放出する放射線を浴びるのも、外部被曝の例である。アルファ線は空気中で数cmしか飛ばないため、外部被曝の問題は起こらない。ベータ線も比較的飛程が短いので、特殊な場合以外は外部被曝の問題は起こらない。最も重大な被曝原因は、エックス線やガンマ線などの電磁放射線と中性子線であり、これらは時には空気中を何kmも飛ぶ。
病院の核医学的検査で、放射性医薬品を投与された時に起こるのは内部被曝の典型例である。又、原爆の爆発や核実験、あるいは、原発事故によって環境に放出された放射性物質が呼吸や食物摂取を通じて体内に入ってくれば、内部被曝の原因となる。
ウランやプルトニウムが体内に入ってアルファ線を放出すると、30~40μm(細胞1個分程度)しか飛べないが、そこで全エネルギーを消費して濃密に電離や励起を起こすので、細胞レベルでの致死的な影響を受ける。アルファ線は外部被曝の問題はないが、アルファ線放射体を体内に取り込むことは極力避けなければならない。
外部被曝を防ぐ方法
体の外にある放射線源から来るガンマ線や中性子線からの被曝を防ぐには、
①遮蔽物を線源と体の間に置いて減弱させる
②線源からできる限り距離をとって、体に到達する放射線の量を減らす
③被曝する時間を短くする
の3つの方法がある。”Time(時間)、Shield(遮蔽)、Distance(距離)”と言い習わされているが、重要性の順序は「遮蔽、距離、時間」である。遮蔽してその場所に到達する放射線の量を減らすことが本質的に重要で、次には距離による減弱効果を期待し、最後に、どうしてもその場にいなければならない場合には、被曝時間を短縮するのが原則である。放射線を出すだけ出しておいて、作業時間の短縮で被曝を減らすなどというのは本末転倒である。
遮蔽は放射線の種類やエネルギーごとに、その放射線と最も相互作用で発生する二時放射線にも注意しなければならない。
原発事故などで放射線物質が一面に降り積もった場所での外部被曝を減らすためには、家屋の中に留まる(=遮蔽)、できるだけ早期に(=時間を短縮)退避する(=距離)などの対策が講じられ
る。しかし、この場合には「早期退避」が最も重要で、汚染した現場に留まることは制限される必要がある。原発事故などの場合には、退避命令や避難勧告をタイミングよく出して周知すると
ともに、速やかに退避手段や避難所を確保することが重要になる。
内部被曝を防ぐ方法
放射線物質が体の中に入ってきて、体の中で放射線を放出する場合には、「外部被曝防護の3原則」(遮蔽・距離・時間)が全て成り立たない。従って、内部被曝を防ぐには
①できるだけ体にとりこまないようにすること
②体の中に取り込んだ放射性物質はできるだけ早く排出すること
の2つの方法しかない。例外は核医学診断の場合で、意図的に放射性医薬品を患者に投与し、その医薬品が出す放射線がもたらす情報で診断する。内部被曝を覚悟の上で、そのリスクを越える医療上のメリットを期待している。
放射性物質を体に取り込まないようにするには、大気や水や食品の放射能汚染を防ぎ、必要に応じて摂取制限を行わなければならない。必要な場合には、放射性物質の吸入を防ぐために防護マスクを着用しなければならない。
又、放射性ヨウ素は甲状腺に取り込まれる性質があるので、原発事故などの場合には、あらかじめ非放射性のヨウ素剤を服用して甲状腺を非放射性ヨウ素で満タンにする方法がとられる。後で放射性ヨウ素が体内に入っても、甲状腺への蓄積を防ぐ効果がある。
飲み込んで消化管に入った放射性物質を排出させるには胃洗浄や緩下剤投与を、放射性物質を吸引して肺が汚染した場合には肺洗浄を、体内の特定の部位に沈着した放射性物質を追い出すためにキレート剤などの投与を、腎臓からの排泄を促すために利尿剤を用いたりするが、いずれも専門医の管理下で行われる必要がある。
参考文献
安斎育郎(2007)「放射線と放射線」ラン印刷社
H.N ときあ