裁判所
出典: Jinkawiki
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最高裁判所
司法機関として憲法に定められた最高の国家機関。
最高裁判所長官と14人の最高裁判所判事で構成されており、最高裁判所長官は内閣の指名にもとづいて、最高裁判所判事は内閣が任命し、天皇が認証する。 最高裁判所における裁判は、裁判官全員で構成される大法廷と5人ずつで構成される3つの小法廷で行われる。最上級の裁判所として、下級裁判所の判決に対する上告および下級裁判所の決定に対する特別抗告の裁判権を有する。
上告には,まず(1)高等裁判所の第二審又は第一審の判決に対する上告があり,これが上告事件の大部分を占めるが,そのほかにも(2)地方裁判所若しくは家庭裁判所の第一審の判決又は簡易裁判所の刑事の第一審の判決に対するいわゆる飛躍上告,(3)高等裁判所に対する上告又は控訴で一定の事由に基づき移送されるもの,(4)高等裁判所の民事の上告審の判決に対するいわゆる特別上告,(5)刑事の確定判決に対する非常上告がある。最高裁判所に対する上告の理由は,民事事件及び行政事件においては,憲法違反,法が列挙した重大な手続違反に限られる。
最高裁判所には,我が国で唯一の最高の裁判所としての司法裁判権が与えられている。さらに,憲法は司法権の完全な独立を守るために,訴訟に関する手続,弁護士,裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について規則を制定する規則制定権を,また,下級裁判所の裁判官に任命されるべき者の指名,裁判官以外の裁判所職員の任命及び補職,裁判所に関する予算の編成への関与及び実施等のいわゆる司法行政権を,最高裁判所はもっている。
最高裁判所は終審として最終的な判断を下す権限を持っているので、「憲法の番人」と呼ばれる。
(法令審査権と法令解釈の統一)
最高裁判所が受理した事件は、まず小法廷で審理するが、事件の性質上①法律、命令、規則または処分が憲法に適合するか否かを判断するとき、②法令の解釈適用が、最高裁判所が従前に行った裁判に反するときは、大法廷で処理しなければならない。前者が法令審査権で後者が法令の解釈適用の統一の問題である。
法令審査権は、法令の内容が上位の法規に抵触しているため無効であることを審査することのできる権限であり、特に国会の制定する法律が憲法に違反するとの理由で無効か否かについて審査する権限を違憲立法審査権という。
法令の解釈適用の統一は、法令の解釈適用が最高裁判所の以前の裁判に反するときは、異なる解釈の可能性をもつ小法廷ではなく、大法廷での裁判が必要になる。
高等裁判所
下級裁判所のなかで最上位の裁判所。札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・高松・福岡の8か所に置かれており、6か所の都市に支部が設けられている。また,特別の支部として,東京高等裁判所に知的財産高等裁判所が設けられている。(知的財産高等裁判所は,東京高等裁判所の管轄に属する事件のうち,特許権に関する地方裁判所の判決に対する控訴,特許庁が行った審決に対する取消訴訟など,一定の知的財産に関する事件を取り扱う。)
高等裁判所は,高等裁判所長官及び判事によって組織されている。高等裁判所長官は,内閣によって任命され,天皇の認証を受ける。
高等裁判所は、最高裁判所と地方裁判所の中間的な裁判所という性格を反映して、
①地方裁判所若しくは家庭裁判所の判決又は簡易裁判所の刑事の判決に対する控訴
②地方裁判所の民事の第二審判決に対する上告及び簡易裁判所の民事の判決に対する飛躍上告
③地方裁判所又は家庭裁判所の決定に対する抗告について裁判権を持っている。
そのほか,高等裁判所は,選挙に関する行政訴訟,内乱罪等に関する刑事事件について,第一審裁判権を持っており,東京高等裁判所は,さらに,公正取引委員会や特許庁のような準司法的機関の審決に対する取消訴訟について,第一審裁判権を持っている。
高等裁判所における裁判は,原則として3人の裁判官から成る合議体によって審理される。なお,内乱罪及び公正取引委員会の審決の訴訟等は,5人の裁判官から成る合議体によって審理されることになっている。
地方裁判所
地方裁判所は,原則的な第一審裁判所で,他の裁判所が第一審専属管轄権を持つ特別なものを除いて,第一審事件のすべてを裁判することができるものとされている。さらに,地方裁判所は,簡易裁判所の民事の判決に対する控訴事件についても裁判権を持っている。
各都道府県に1つずつと、北海道に4つ設置されているので全国に50か所あり,地方裁判所に支部が設けられているので,その総数は203になる。 地方裁判所の事件は,最高裁判所や高等裁判所と異なり、原則として単独制を採用しており、合議制で裁判を行うのは例外とされている。合議制の場合、3人の裁判官によって構成され、そのうち1人が裁判官となる。
合議制が必要とされる事件は
①「合議体で審理及び裁判をする」旨を合議体で決定した事件
②死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪の事件(強盗罪,準強盗罪,これらの未遂罪,盗犯防止法に規定される常習強窃罪の事件等は例外とされています。)
③控訴事件
④その他法律によって合議事件と定められたものである。
家庭裁判所
家庭の平和を維持し、少年の健全な育成を図るという理念の下、戦後、憲法の施行に伴う民主化の一環として、地方裁判所の支部であった家事審判所と行政機関であった少年審判所とを併合して、独立の裁判所として創設された。
家庭裁判所とその支部は,地方裁判所とその支部の所在地と同じ所にあり、このほか,特に必要性の高いところに家庭裁判所出張所が設けられている。
家庭裁判所においては,夫婦関係や親子関係の紛争など家事事件について調停や審判を,非行を犯した少年の事件について審判を行うほか,少年の福祉を害する成人の刑事事件について裁判をする。また,平成16年4月1日からは,人事訴訟法の施行に伴い,夫婦,親子等の関係をめぐる訴訟についても取り扱うことになった。
家庭裁判所は,法律的に白黒をつけるというのではなく,紛争や非行の背後にある原因を探り,どのようにすれば,家庭や親族の間で起きたいろいろな問題が円満に解決され,非行を犯した少年が健全に更生していくことができるのかということを第一に考えて,それぞれの事案に応じた適切妥当な措置を講じ,将来を展望した解決を図るという理念に基づいた裁判所である。そのために家庭裁判所調査官という職種が置かれ,心理学,社会学,社会福祉学,教育学などの人間関係諸科学の知識や技法を活用した事実の調査や人間関係の調整を行うことになっている。
簡易裁判所
簡易裁判所は,全国に438か所ある。
簡易裁判所は,民事事件については,訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件について,また刑事事件については,罰金以下の刑に当たる罪及び窃盗,横領などの比較的軽い罪の訴訟事件等について,第一審の裁判権を持っている。
簡易裁判所は,その管轄に属する事件について,罰金以下の刑又は3年以下の懲役刑しか科することができず、この制限を超える刑を科するのを相当と認めるときは,事件を地方裁判所に移送しなければならない。
簡易裁判所におけるすべての事件は,1人の簡易裁判所判事によって審理及び裁判される。
(手続きの特徴)
1、民事事件
①口頭による訴えの提起が可能である
②訴えの提起において、請求の原因に代えて紛争の要点を明らかにすれば足りること
③準備書面により口頭弁論を準備する必要がないこと、証人、当事者本人、鑑定人の尋問に代えて書面の提出が可能なこと、調書の簡易化等
2、刑事事件
略式手続と交通事件即決裁判
略式手続では被疑者に異議がない場合、検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判を開かずに証拠書類だけを取り調べて、50万円以下の罰金または科料に処することができる。 即決裁判では道路交通法またはこれに基づく命令違反に事件について、迅速適正な処理を図るため、交通事件即決裁判手続法により、刑事訴訟法の特例として認められている。
参考
http://www.courts.go.jp/about/sosiki/(裁判所HP)
『現代の裁判 第3版』著:市川正人・酒巻匡・山本和彦 出版:有斐閣アルマ
『裁判キーワード 新版』編:小島武司 出版:有斐閣