酸性雨8
出典: Jinkawiki
酸性雨とは
酸性雨とは、直接雨滴に酸性物質が溶け込むか、水滴中に酸性物質が生成して生じるもの。汚染物質として、硫黄酸化物、炭化水素、自然排出源である火山から排出される二酸化硫黄、畑地から発生する窒素酸化物などがある。これらの汚染物質は大気中で、太陽光による化学反応やさまざまな反応を受けて、酸性のガスや粒子状物質が生成される。この粒子状物質が遠く離れた場所まで流れていき、雲や雨に取り込まれ酸性雨となる。
酸性雨の被害
土壌への影響として、土壌中に生息している植物根、土壌動物、土壌微生物には吸収するための栄養量が減少するため影響を与える。植物や生物、微生物に及ぼす影響は森林に大きな影響を与える。森林は生産資源であると同時に保水機能により水資源の確保、水害の防止に役立っている他、レジャーの場の提供や野生生物の保護にも役立っている。このような森林が酸性雨の影響で衰退、枯死する可能性がある。他にも、土壌水の酸化により湖沼を酸化させる一因となるなど、環境に与える影響が大きい。環境への問題だけではなく、建造物への影響も懸念されている。例としてロンドンのウェストミンスター寺院や、南ドイツのケルンの大聖堂にも被害が及び始め、その補修費用は高額なものとなっている。建造物には物質を新陳代謝など適応する生物がいないため、被害が最も受けやすくなっている。
酸性雨への国際対策
1972年にスウェーデン政府の呼びかけにより、「国連人間環境会議」がストックホルムで開催された。その際にスウェーデンが会議に提出した報告書で、酸性雨の原因の大部分が他の欧州諸国にあり一国では解決不可能なこと、このまま化石燃料の消費が増え続ければ来世紀にはさらに悲惨な結果になることを強調して、早急な汚染物質の排出削減を訴えた。1975年ヘルシンキで開催された全欧州安全保障協力会議の席上、旧ソ連のブレジネフ共産党書記長は東西欧州が協力して取り組まないといけないことを議題として提案した。この会議が、環境問題でも初めての広域酸性雨対策の条約を生む起爆剤となった。1979年ジュネーブにて、米国、カナダを含む35か国が「長期距離越境大気汚染条約」(ジュネーブ条約)に署名。硫黄酸化物の削減の見通しが立ち、もう一つの原因である、窒素酸化の規定へ国際社会は動き出した。その後1986年アムステルダムで開催された。酸性雨と政策に関する国際会議」によって、窒素酸化物の研究を推進する決議を条約化した。
参考
酸性雨と酸性霧(1993年) 村野健太郎 裳華房
酸性雨(1992年) 石弘之 岩波新書
ティス