難民10
出典: Jinkawiki
・難民とは
武力紛争、暴力、迫害など何ならの理由で居場所を追われ、さらに国境を跨いで移動せざるを得ない人々のことを指す。
・現在の難民の数
今日に及ぶ迫害などで移動を強いられている難民の数は6500万人に上る。今の世界では113人に1人が迫害を迫られているのだ。その中で難民は2130万人に上るという。
・難民の発生の起源と原因
難民は人類の歴史を俯瞰したとき、難民現象は[人々の移動]の1つの側面として浮かび上がる。現代に限らず古代より人間は[移動する動物]出会ったことを考えると難民の動きも特殊ではないことがわかる。今で言う難民の現象は昔からあった。事例は多くあり、だれもが知るキリストもヘロデ王から命を狙われエジプトに逃げた難民だったと言える。ユダヤ人や朝鮮半島の百済と新羅の時代や近代ではフランスのルイ14世の時代も多くの国民がフランスから逃げ、難民となったのだ。このように難民の現象は目新しいものではなく、人間の歴史に常に付き添ってきたものである。だが、難民が国際社会の共通の概念となり、国際的な保護の対象として認識されるまでには時間がかかった。その契機が訪れたのが第一次世界大戦であった。この第一次世界大戦においてロシア、オスマン、ドイツ、オーストリアの白人の帝国が崩壊したことも1つの要因となっている。大戦後のヴェルサイユ条約は、戦後の国際秩序を築くものだった。その中で新設されたのが難民問題の国際的な政策課題であった。
そもそも難民が発生する原因は難民発生国の[ガバナンス(統治)の失敗]であるが、その影響は外部周辺の国にまで及ぶのである。
また難民が発生する原因の1つには戦争や内紛を繰り返していく中で多くのマイノリティと呼ばれた少数民族が民族浄化にあたった。ここで言うとするならば、宗教、言語、文化、共通の歴史など文化的歴史的なきょうつうせいを共有する集団をさす。民族浄化を通じて、これらを共有できないマイノリティが、国民から排除され難民に転換していくのである。
また、最近の戦争においては異なるアイデンティティの人々や、異なる意見を持つ人々を排除することにより住民をコントロールすることを、目指している。これにより近代では異なる意見を言ったものが国民から排除され、難民へと変化していくのである。それ以外にもアフリカや中東では貧困や内紛が起き難民が発生していることもある。
・難民の保護
1950年に一部諸国の主導により、国際法レベルで難民条約が採択され、その後当事国を増やしながら、現在までに140の諸国において国内実施のための法制度が各国それぞれに整えられている。しかし、難民の流入がある場合、周辺の受け入れ国は、国家の利益と外国人の人権保護のバランスに苦慮することとなる。悲惨な難民を見て心を痛めるが、彼らの保護のために多大な経済的、社会的、政治的なコストを引き受けざるを得ない苦しみもありなかなか難民の保護や受け入れが進まないのだ。また、難民だけではなくアフリカからは、経済移民や生存移民など難民とは異なった違う人々も難民と一緒にやってくる。その中で受け入れ国が難民だけを選び出して保護することも容易ではなく、ここに難民問題の保護の難しさが存在するのだ。この問題を抱えなかなか国際社会が動かなかった際に難民が大挙してヨーロッパにやってきたのは記憶に新しい事件である。
日本でも難民の保護を行なっている。日本では2010年以前には1000人だった難民の申請者が2014年には5000人、2015年には7586人に増えた。しかに、日本の法務省によって難民と認定されたのはそれぞれ11人と27人だった。この数は先進国に比べてごく少ない数である。何故なら日本の法務省が定めた難民の定義が狭く、かつ難民を判断する基準が厳しいことが挙げられる。また日本が外国人に対する日本語教育や職業訓練などの支援体制も十分ではなく、難民は日本で生活をする際に様々な困難に直面するからという理由もある。日本が今後難民を受け入れるにあたり、必要となるのは難民認定における基準を緩和し明確にすることである。また海外への難民支援活動への資金協力も必要になるだろう。これらを、行い国際社会や難民が日本に期待することを祈るばかりである。
・参考文献
墓田 桂 「難民問題」中央公論新社 2016年発行
滝澤 三郎/山田 満 「難民を知るための基礎知識」 株式会社明石書店 2017年 発行