音楽
出典: Jinkawiki
音楽的所作 さていま、音楽というものを、固定していて移調可能な音程を材料とする芸術、と解するとして、そのような芸術の起源をうまく説明しようとすれば、まず二つの問題を区別してかからねばなりません。一つは、感覚の特性と切離し感覚の相互関係を再認できる能力が、どうしてでき上ったのか。もう一つは、 方々の民族や異なる時代の音楽に実際に存するこのような一定の音程に、どんな筋道で到達し得たのか、です。 最初の問いは、抽象能力に関することです。この能力は、装飾とか肖像などをそのまま縮小してもそれと再認し得る類で、他の諸感覚印象にもこれは働いています。この一般的問いは、人間の全精神生活の定義にも関連し、また人間と動物との精神生活の境目などとも関係しています。動物は、等しくない質料から等しい関係を認識し抽出することがどの程度にできるのでしょうか。動物は、人や物や場所などの認識に際して、いろいろの色や照明だとか、その瞬間瞬間の見かけの大きさ等々から、どの程度に抽象を行うことができるのでしょうか。彼らにはそれは出来まいと予めきめてしまうことはむろんできません。けれどもはた他方例えば、犬がさまざはの遠距離や種々の照明のもとで、自らの主人を認めるときに、いつも一様な反応を示すとしても、それだけで、この動物は事態がいろいろに変っても形態を抽出思考する能力をもっているなどというわけにはゆきません。主人の体臭や声が手伝ったのではなく視覚的支持点だけによってその運動が起ったとしてみたところで、その事実から結論として出せるのは、せいぜい、感覚器官と神経系統とが或る刺激に慣れてしまった結果、この刺激は状況が変ってもなお刺激として働くようになったのだ、ということぐらいでしょう。人間でもそんな風に著しく常と異なる印象を受ければ、これと違ったやり方はやらないでしょう。しかし発達した精神生活においては、それと並んで、上述のような本来の意味での再認が現われます。この再認は単に等しい反応のことではなく、 等しいものの認識、または同一性の認識です。
参考 音楽のはじめ
投稿者 けんけん