騎射三物
出典: Jinkawiki
騎射三物きしゃみつもの
1. 騎射三物
犬追物、笠懸、流鏑馬の三つをあわせて騎射三物とよばれている。古くは5世紀から、そして平安時代の武士が行った武芸修練。当時の武士は頑丈な鎧に身を包み、致命傷を与えることが難しかった。そこで、鎧武者の急所である顔面を狙い、敵が顔をあげたり、振り返ったりしたところを一矢にて仕留める技術を修練するためのものである。 射手の服装は、立烏帽子、綾藺笠(あやいがさ)を被り、鎧直垂に射小手を着け、行騰・太刀を履き、箙を負い弓矢を持った。また、騎射三物は現代でも流鏑馬だけ行われている。そして、笠懸は神事としても奉納されており全国でも上賀茂神社だけである。(女性の騎射)
2. 犬追物
犬追物は牛追物からきているとされ、鎌倉時代からはじまる。馬上から、犬を標的として弓を射てその技能を競うもの。250メートルの馬場の中央に縄で円形の囲いをつくり、その中に犬を放ち3手にわかれた射手が外周から射た。しかし、犬を殺傷しないように、やじりは取り除かれていた。(ひきめ、というものを使う)犬追物は生きた白犬を標的としたものなので、他の騎射と比べて難易度が高かったとされる。また、判定も難しく十分に追い詰めてから射ることが条件で、遠くから射てたまたま命中したとしても認められない。射手数を36騎、犬数は150疋を正式とした。射手は犬を追いながら、弓手、馬手、弓手切、馬手切、押交などあらゆる方向へ射る必要がある。馬も、犬追物用に、調教されたものは高値で取引されていた。 明治維新後にも、上野公園や麻布四の橋の自邸において天覧の犬追物が行われていた。しかし、その後は動物愛護協会からの反対があったため行われていない。
3. 笠懸
笠懸は、鎌倉時代の征夷大将軍に任ぜられた源頼朝が、1193年那須野へ狩に出かけた帰り新田の新田義重の館に立ち寄った。そのとき原野で騎射を催し、武将の綾藺笠(あやいがさ)の紐が切れて風に舞っているのを見て、その綾藺笠を的にし、その裏を射たことが名の由来といわれている。のちに、遠笠懸、小笠懸と区別されるようになり、他にも籤笠懸・百番笠懸・七夕笠懸・神事笠懸などの様式もある。 犬追物と並んで笠懸はより、狩猟や実践に近いもので、特に平安時代から鎌倉時代にかけて盛んにおこなわれてきた。犬追物と同様に、一矢で相手を射るための訓練である。また、足元の獲物を射るための訓練も目的であったとされている。 馬場は、直線一町(約109メートル)とし、その中にさぐり(砂浜などで、馬や犬など走らせた足跡のこと。笠懸では走路)をつけ両側に埒を設けた。さぐりの本末に扇方といわれる馬を折り返すための平地も設けた。遠笠懸は的をさぐりから約11メートルから22メートルとし、的までやや傾斜をつけた矢道を設けその両側に竹矢来を立ててそれを射る。小笠懸は、遠笠懸のあと馬を折り返して馬場を逆に馳せて、足元にある小さな的を射るもの。これらふたつをあわせて笠懸と呼ばれていた。
4. 流鏑馬
起源はいくつかあり、調停で5月5日の節会に左右近衛府の官人により行われた馬射が原型といわれている。また、本来の姿は今から約1400年前に神事として起こった「矢馳馬やばせめ」の訛化であり、広義には騎射の一種であっても、競技に類するものではなかったとも伝えられている。文献の初見としては、1057年藤原明衡著の新猿楽記の、中の君の夫の記事か、平安後期の右大臣藤原宗忠の日記である中右記の1096年4月の条に、白河上皇が鳥羽殿の馬場で流鏑馬をご覧になったことが書かれてあるもののどちらかとなる。ただし、これらの文献では流鏑馬そのものの起源と本質には全く触れられていない。 平安時代における流鏑馬は、宮廷行事の射術の公事くじに類するものであった。鎌倉時代から室町時代中期にかけては、南北朝時代の争乱期に中絶されていたものの、大方が武士の兵法修練の一環としておこなわれていたように説明されている。当時のことは吾妻鏡などからよくわかる。 流鏑馬とは、長さ2町(約218メートル)の馬場の両側に埒を結び、その間に設けられた3つの的を馬上から鏑矢で射るもの。これを奉射という。射手は一の組と二の組など幾つかにわかれて行う。馬を全力で走らせながら的を順番に、弓に矢を構えては放ち馬場を駆け抜ける。これを決められた回数くり返すのが一般的なものである。他にも競射など、さまざまな方式が各流によってある。
5. 参考文献
日本史・鎌倉時代2
http://www.geocities.jp/ishiinbr/kamakura2.htm (2011.1.15参照)
weblio http://video.weblio.jp/content/%E9%A8%8E%E5%B0%84%E4%B8%89%E7%89%A9 (2011.1.15参照)
日本の騎射 http://mgl-f.sakura.ne.jp/mountedarcery.japan.html (2011.1.15参照)
歴史 http://www.ogasawara-ryu.gr.jp/lessons/kisha/history/history.html (2011.1.15参照)
武田流弓場道 http://www.yabusame.or.jp/html/t_yabusame_J.html (2011.1.21参照)