EU6

出典: Jinkawiki

目次

EU(欧州連合)

EUとは

欧州連合(European Union、略称:EU)は、欧州連合条約により設立されたヨーロッパの地域統合体で28か国が加盟している。約5億800万人の人口を持ち、現在アメリカ合衆国をしのぎ、世界最大の経済圏となっている。2013年5月の発表によると、全体のGDPは、16兆4000億ドルであり、公式通貨はユーロである。また、すべての欧州市民に平和、繁栄および自由を保障するとともに平和構築や開発援助を通じて、世界平和と安定に積極的に貢献することを目指す。

EU加盟国(28か国)

原加盟国:ドイツ、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フランス、イタリア 第1次拡大(1973):デンマーク、イギリス(離脱予定)、アイルランド 第2次拡大(1981):ギリシャ 第3次拡大(1986):ポルトガル、スペイン 第4次拡大(1995):フィンランド、スウェーデン、オーストラリア 第5次拡大(2004~2007):エストニア、ラトヴィア、リトアニア、ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、スロヴェニア、マルタ、キプロス、ルーマニア、ブルガリア 第6次拡大(2013):クロアチア 以上28か国

候補国:アイスランド、マケドニア、モンテネグロ、トルコ、セルビア 潜在的候補国:ボスニア・ヘルツェゴヴィア、アルバニア、コソヴォ 欧州自由貿易連合諸国:ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン

EUのしくみ

2010年リスボン条約が制定されてから、EUの運営や法律制定のために4つの主要機関を有する。欧州理事会、EU理事会、欧州議会、欧州委員会である。 欧州理事会:議長ドナルド・トゥスク(ポーランド出身)議長の任期は2年半であり、1度限りの再任が認められる。各EU加盟国の大統領または首相で構成される。年に4回開催されるEUの最高意思決定機関である。   EU理事会:各EU加盟国の閣僚で構成される。特定の人物を議長とはせずに、加盟国が6か月ごとに議長を務めている。新しい法律を作ることができ、そのため既存の国内法を置き換えることができる。   欧州議会:議長マルティン・シュルツ(ドイツ出身)全EU加盟国における直接選挙で選出された約750人の議員で構成される。任期は5年としている。   欧州委員会:委員長ジャン=クロード・ユンケル(ルクセンブルク出身)計28名の欧州委員で構成される。1つの加盟国から1人の委員が選出されている。  

EUの歴史

 欧州では、戦争のたびにヨーロッパの安定と平和、統合の夢が語られてきた。ローマ時代から第二次世界大戦にいたるまで、欧州では、大規模な紛争、戦争が繰り返し起こり大量の死者が出た。第一次世界大戦では、世界全体で2000万人もの人が亡くなった。欧州だけでも、第一次世界大戦で800万人近く、第二次世界大戦では3300~3500万人の死者を出している。これは、日本の首都圏がほぼ全滅したと同じほどの死者数である。EUが統合されるきっかけとなった戦争が第二次世界大戦である。統合が目指された理由、それは1つ目に欧州を2度と戦争で争う地としないこと。2つ目に民族と領土をめぐる戦いを明増の共同に変えること。さらに、3つ目に世界戦争が二度おこった欧州において欧州の衰退を食い止め、世界における指導的役割を保持し続けること。という目標があったからである。1950年5月9日、当時のフランス外相ロベール・シューマンが、あらゆる軍事力の基礎となっていた産業部門を共同管理する超国家的な欧州の気候の創設を提唱する。これが、シューマン宣言として知られ、欧州統合の出発点となる。

EUの成り立ち

 1952 パリ条約       石炭鉄鋼共同体(ECSC)  1958 ローマ条約       欧州経済共同体(EEC)       欧州原子力共同体(ユートラム)  1973 EC(欧州共同体)誕生、第1次拡大  1981 EC第2次拡大  1986 EC第3次拡大  1993 マーストリヒト条約       EU(欧州連合)誕生  1995 第4次拡大  2002 EU12か国でユーロ現金流通開始  2004~第5次拡大  2009 リスボン条約発効  2010~ユーロ危機  2012 ノーベル賞受賞  2013 第6次拡大

EUに関する偉人1

リヒャルト・クーデンホーフ・カレルギーは、第一次世界大戦が終わり、ドイツ、ハプスブルク、ロシア3帝国の崩壊後、欧州統合の夢を実現させようとして奔走した人物である。よって、「欧州統合の父」と呼ばれるようになった。彼は、多民族国家ハプスブルク帝国の外交官、ハインリヒ・クーデンホーフ・カレルギーの息子であり、帝国の崩壊と民族独立を体験し、民族対立の融和を切望していた。ハプスブルク帝国は、10を超える民族からなる多民族国家である。また、カレルギーの母親は、青山ミツという日本人で、はじめてヨーロッパに貴族の妻としてわたった日本女性といわれている。 カレルギーは、ヨーロッパを26の国家からなる統合体と考え、その歴史的基礎をギリシャ・ローマに置いた。さらにその歴史的経緯をゲルマンと啓蒙運動、ナポレオンにいたるヨーロッパ理念に置き、諸民族の融和と協同を説いた。 興味深いのは、「小ヨーロッパか、大ヨーロッパか?」として、パン・ヨーロッパを基本的にヨーロッパ大陸に限ったことである。イギリスは、ヨーロッパ外に植民地と自治領をもっているがゆえに、パン・ヨーロッパには加わらないとした。またロシアは、軍事力においても統一体としてもヨーロッパに勝り、世界革命ないし世界戦争を目指しているため、パン・ヨーロッパはロシアに対抗して団結しなければならないと説いた。「パン・ヨーロッパ」理念の背景には、友愛と共同を主張する結社というフリーメイスンの思想が存在した。これは、秘密の教義ももち、当時のヨーロッパを中心に世界に広く普及していた。 どんどんと彼の考えが広まり、1920年代のヨーロッパ全土の多くの政治家たちに影響を与えた。1926年には、パン・ヨーロッパ会議がウィーンで開かれ、各国の首相や外務大臣など、24か国から2000人が集まるほどの盛大な会議となった。1929年には、フランスの首相アリスティード・ブリアンが、国際連盟の枠内で、パン・ヨーロッパを実現する提案を正式に行い、さらに、イギリスのチャーチルもカレルギーの統合を支持することになる。 しかし、1929年の世界恐慌をはじめとする、ナチス・ドイツの台頭、ヒトラーによるパン・ヨーロッパ運動の禁止で、運動は中断されてしまう。ここで、第二次世界大戦が起きていなければ、ヨーロッパ統合は1930年代に実現できていたのかもしれない。そして、統合していたら、多くの犠牲者を出さなくてよかったのかもしれない。 EUは、多くの人の無念の死のうえに成り立っている。二度とこの地で戦争を起こさないという理念のもとにこの地の安定・平和・繁栄を図るカレルギーの信念、3000万人を超える死者を出した各地の市民の平和と安定、復興・繁栄の願いとして、存在し続ける。

EUに関する偉人2

 シューマンは、当時ドイツ領だったルクセンブルクに生まれた。両親の生まれは、父はフランス、母はルクセンブルクではあったが、2人ともドイツ国籍を得ている。第一次世界大戦後、アルザスロレーヌ地方がフランスに返還されると、シューマンはそこでフランス国籍を取得した。ドイツに大学に入学し、勉学に励み、第二次世界大戦中は、ナチスドイツに対するレジスタンス運動に参加した。だが、1940年にはドイツで逮捕されたが脱出したという意外な経験をもつ。「ヨーロッパは一日にしてならず、また単一の構想によって成り立つものではない。事実上の結束をまず生み出すという具体的な実績を積み上げることによって築かれるものである」という有名な一節で知られるシューマン宣言が発表される。この宣言の具体化によって、長年にわたり、ドイツ、フランスの紛争の源だったアルザスロレーヌ地方の資源を共同管理する「欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)」が誕生することになる。シューマン宣言が発表された5月9日は、現在、ヨーロッパ・デーとして祝われている。

EUに関する偉人3

 チャーチルは、イギリスで生まれ、士官学校を卒業して26歳で下院議員に当選した。1939年、第二次世界大戦の勃発とともに海軍大臣に着任、1940年には連立内閣の首相に就任している。1945年に、アトリー首相が誕生すると政権から遠ざかるが、その間、欧州統一運動を組織した。「バルト海のシュッテッテンからアドリア海のトリエステにかけて、大陸を横断する鉄のカーテンが下ろされた」とする有名な演説のもとをきっかけに、東西冷戦がはじまったといわれている。チャーチルは、戦後早い段階で大陸の欧州統合運動を促進させるよう動いたが、イギリスとしては大陸欧州と一線を引いた立場を貫き、欧州共同体(EC)の設立に参加することはなかった。


EUの言語

EUで使用されている言語は24ある。 それらは、ブルガリア語、チェコ語、デンマーク語、オランダ語、英語、エストニア語、フィンランド語、フランス語、ドイツ語、ギリシャ語、ハンガリー語、アイルランド語、イタリア語、ラトヴィア語、リトアニア語、マルタ語、ポーランド語、ポルトガル語、ルーマニア語、スロヴァキア語、スロヴェニア語、スペイン語、スウェーデン語、クロアチア語である。たくさんの言語がしようされているが、ほとんどの場面において実際に活用されているのは英語である。特に、防衛協力におけるミッション遂行など、短時間での意思疎通が必要な状況下におけるコミュニケーションはほとんど英語で行われている。そうはいっても、以後以外も必要に応じて対処できる体制はできている。特に、裁判があげられる。英語から、また英語からほかの言語への通訳、翻訳に限らず、ほかの言語同士の通訳、翻訳を行う。よって、実に500通りを超える組み合わせが考えられる。これを対処できる体制ができているというのは驚愕に値する。このほか、EUは少数言語の保護・普及も積極的に支援してきた。これらの言語の多くは話し言葉であったため、文法や単語のつづりが正しいとはいいがたかった。そこで、地方言語や少数言語の担い手は、書き言葉として統一を図りまがら教育カリキュラムに積極的に導入するなどして広めようと努力を行っている。EUは、教育にも関与し、支援している。

EUの通貨

 EUで使用されている通貨は11ある。 それらは、ユーロ(統一通貨)、イギリス・ポンド、ブルガリア・レフ、クロアチア・クーナ、チェコ・コルナ、デンマーク・クローネ、ハンガリー・フォリント、リトアニア・リタス、ポーランド・ズウォティ、ルーマニア・レウ、スウェーデン・クローナである。 とくに、ユーロは2002年1月1日に現金通貨として発足したため、よく聞くことがあるだろう。ユーロは、現金通貨として導入されたから、基軸通貨ドルをしのぐ勢いで成長した。しかし2008年のリーマン・ショックで打撃を受け、さらに2010~2012年の長期にわたり、不動産危機と南の国々の財政破綻に影響され、ユーロ危機に陥った。ユーロ危機によって、EU内の南北格差と内部対立を露呈させた。


参考文献 羽場久美子編著『EU(欧州連合)を知るための63章』赤石書店、2013年 『拡大するヨーロッパ、中欧の模索』岩波書店、1998年 ma29


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