IPS細胞2

出典: Jinkawiki

iPS細胞

目次

概要

人間の皮膚などの体細胞に、ごく少数の因子を導入し、培養することによって、様々な組織や臓器の細胞に分化する能力とほぼ無限に増殖する能力をもつ多能性幹細胞に変化する。 この細胞を「人工多能性幹細胞」と呼ぶ。英語では「induced pluripotent stem cell」と表記し、頭文字をとって「iPS細胞」と呼ばれている。 名付け親は、世界で初めてiPS細胞の作製に成功した京都大学の山中伸弥教授である。

経緯

 病気やケガで失われた臓器などを再生するための研究は数十年前から研究されていた。 1981年には、ケンブリッジ大学(イギリス)のマーティン・エバンス卿らが、マウスの胚盤胞からES細胞(embryonic stem cell:胚性幹細胞)を樹立することに成功した。 ES細胞は代表的な多能性幹細胞の一つで、あらゆる組織の細胞に分化することができる。その17年後、1998年にウィスコンシン大学(アメリカ)のジェームズ・トムソン教授が、ヒトES細胞の樹立に成功。 ヒトES細胞を使い、人間のあらゆる組織や臓器の細胞を作り出すことにより、難治性疾患に対する細胞移植治療などの再生医療が可能になると期待された。しかし、ES細胞は、不妊治療で使用されず廃棄予定の受精卵を用いるものの、発生初期の胚を破壊して作るため、子になる可能性を持った受精卵を壊すことに抵抗感を持つ人々も少なくなく、ES細胞研究に対して厳しい規制をかける国も少なくなかった。 このような状況下では、研究目的といえども、ES細胞を作製することが容易ではなく、また、患者さん由来のES細胞を作ることは技術的に困難なので、他人のES細胞から作った組織や臓器の細胞を移植した場合、拒絶反応が起こるという問題もあった。このような問題を回避する多能性幹細胞の作製方法が世界中で研究されていたが、山中教授のグループは2006年にマウスの、2007年に人間の皮膚細胞からiPS細胞の樹立に世界で初めて成功したと報告した。

課題

iPS細胞が腫瘍化するメカニズムは、大きく分けて2つの理由が考えられてきた。1つはiPS細胞から目的の細胞へ分化させる際に分化が不完全で、未分化なiPS細胞が混入することでテラトーマと呼ばれる奇形腫(良性腫瘍)が形成されてしまうリスク。もう一つはiPS細胞を作製する過程や培養する過程でゲノムに傷がつくことで、iPS細胞が腫瘍化してしまう、というリスクである。1つ目については、初期化の質を高める研究、目的細胞への分化効率を高める研究、未分化細胞を除去する研究などが進んでおり、安全性の確保がなされている。2つ目については、作製したiPS細胞ストックのゲノム配列を解析して、ガン化のリスクとして知られている様なゲノム配列の変化が無いかどうかの確認を進めている。

参考URL

iPS Trend(http://www.jst.go.jp/ips-trend/about/story/no01.html)

京都大学iPS細胞研究所CiRA(サイラ)( http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/faq/faq_ips.html)


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