PISAから見るフィンランドの学力
出典: Jinkawiki
(フィンランドのPISA結果)
PISA(Programme for International Student Assessment)とは、経済協力開発機構(OECD)が実施している国際学力調査であり、義務教育修了段階の15歳が持っている知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価することを試みたものである。これまで2000年、2003年と二度調査が行われており、それぞれ32カ国、41カ国が参加している。当初調査は、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーの3分野について実施されていたが、2003年の調査から、新たに問題解決能力が加わっている。 フィンランドは2000年調査においては、読解力1位、数学的リテラシー4位、科学的リテラシー3位、さらに2003年調査においては、読解力及び科学的リテラシー1位、数学的リテラシー2位、問題解決能力3位といずれも好成績をおさめている。
(読解力)
読解力において、2000年、2003年ともに1位になる過程には、1990年代後半頃に大学入学資格試験や全国テストなどの結果の分析から、母語力の低下が指摘されていた。その状況を打破するため、1997年を「読解力年」とするなど、国を挙げて母語力向上に力を入れた背景がある。また学校教育段階においても、2001年から2004年までLUKU-Suomi(ルク・スオミ)というプログラムも進められた。次に挙げる七つのプログラムから構成されている。
①読み書きのスキルを高め、文学に関する知識を増やすことを視野に入れながら、すべての教科のカリキュラム開発を行うこと
②学校図書館を改善し、学校-公共図書館間の連携を促進すること
③基礎教育と特別支援教育間の連携を強化する試みとして、読み書きのスキルを高めること
④すべての教科を通じて、読解力、特に演繹的・批判的読解力を高めること
⑤さまざまなジャンルの文章を書くこと、すべての教科において書くことをベースにした学びを推進すること
⑥男子生徒に対する教育を改善すること
⑦才能児に対する特別教育を行うこと
この結果、読書の頻度と関心が高まり、多様な活字媒体にふれる機会を持つことができ、読解力向上へとつながった。
(数学的・科学的リテラシー)
数学的・科学的リテラシーが上位を占める理由として、1996年にスタートしたLUMAプログラムの成果を挙げている。これは理数科教育の推進をねらいとし、科学的知識・技能を国際的な水準に引き上げることを目的としていた。次に挙げる十のプログラムから構成されている。
①コミュニケーション・開発・普及のための地方自治体-学校-教育機関間ネットワークの形成
②LUMAプログラムに関する評価・研究・研究者養成
③理数科教育の重点化
④学習プロセスの一部としての質的評価の実施
⑤平等の推進
⑥才能児や学業不振児に対する特別支援
⑦理数科教員養成改革
⑧就学前教育から成人教育までを包含する生涯学習の推進
⑨地方自治体、産業界、研究機関との連携・協力
⑩高・大(後期中等教育・高等教育機関間の)連携の推進
理数科教育を国際水準にする試みが、PISAの好成績を生み出したといえる。
※参考文献『フィンランドに学ぶ教育と学力』庄井良信,中嶋博