PISA型読解力とそのテスト方法

出典: Jinkawiki

PISA(OECD生徒の学習到達度調査)では,「読解力(Reading Literacy)」を「自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力」と定義している。従来,国語教育等で用いられてきた「読解」あるいは「読解力」とは意味が大きく異なることから,PISAで調査している「読解力」は“PISA型「読解力」”と呼ばれている。 PISAでは,義務教育終了段階にある生徒が,文章のような「連続型テキスト」及び図表のような「非連続型テキスト」を幅広く読み,これらを広く学校内外の様々な状況に関連付けて,組み立て,展開し,意味を理解することをどの程度行えるかを,可能な限り客観的にみることをねらいとして「読解力」の調査を行っている。 このため,PISAでは次の3つの観点を設定して「読解力」を調査している。

(1)行為のプロセスとして,テキストの中の事実を切り取り,言語化・図式化する「情報の取り出し」

(2)書かれた情報から推論・比較して意味を理解する「テキストの解釈」

(3)書かれた情報を自らの知識や経験に位置づけて理解・評価(批判・仮定)する「熟考・評価」 また,出題形式では,自由記述が約4割を占めている。 これらから,PISA型「読解力」には以下のような特徴があることがわかる。

(1)テキストに書かれた「情報の取り出し」だけではなく,「理解・評価」(解釈・熟考)することも含んでいること。

(2)テキストを単に「読む」だけではなく,テキストを利用したり,テキストに基づいて自分の意見を論じたりするなどの「活用」も含んでいること。

(3)テキストの「内容」だけではなく,構造・形式や表現法も,評価すべき対象となること。

(4)テキストには,文学的文章や説明的文章などの「連続型テキスト」だけではなく,図,グラフ,表などの「非連続型テキスト」を含んでいること。

PISA型の読解では、与えられたテキスト(課題となる問題文)に基づき、その内容を踏まえて個人の意見を述べることを求めている。そして、PISAが求めているのはテキストが本当のことを言っているのか、内容や文体が本当に価値の高いものなのかを疑ったり、評価したりするクリティカル・リーディングである。 クリティカル・リーディングの基盤はクリティカル・シンキングであり、事実を正確に理解し、分析し総合して、問題点を発見して課題を解決する思考法である。クリティカル・シンキングは全教科において必要である。現在の日本では表現力、自由回答能力が低下してきておりPISA型が重要となってきている。

従来日本でよく行われてきた国語のテストは以下のとおりである。

選択式問題がほとんどを占める

文章がほとんどである

生徒の興味関心とかけ離れたことが多い

実生活とかけ離れた趣味的な課題が多い

文学や評論がほとんどである

読んだことについて、教師が与えた唯一の正しい答えのみを答えることを求める

自分の体験や主観的な憶測に基づいた意見でも容認されることが多い

本文を無批判に受け容れて感動することを求められることが多い



一方PISA型読解に基づいて行われる試験は以下のとおりである。

記述式問題が約4割を占める

表やグラフ・地図など非連続テキストが約4割を占める

生徒の興味関心を重視している

実生活と関連の深い課題が多い

理科・社会などと関連した幅広い領域から出題される

読んだことについて、自分独自の意見を表現することを求める

意見の根拠が必ず本文の中になければならない

本文について評価したり批判したりすることが求められる


子供にPISA型読解力を付けさせる方法としてまず生徒に書かせることが必要だ。日本でも記述問題はあるが、これまでは記述問題を「表現」の問題と考え、「読解」の問題として取り扱ってこなかった。PISAでは表現と読解を一体として捉え、思考の過程を見 るために表現させている。選択肢から選ばせると思考の過程は見えませんから、子どもたちが文章から何を読み取り、どのように考えてその結論を導き出したのかを知るためにも、記述させることは必要である。具体的には、教師が考える正解を生徒に押しつけないことです。間違っていてもよいので、生徒に自分で考えさせることが大切である。 また、授業時間数には限りがあるので、精読主義を改める必要がある。精読主義は、精読しないとすべての単語の意味は分からない、内容を理解できないという立場。1段落ずつ精読していくので、文章全体を見渡した読みができない。欧米では、文章全体を通読し、全体に関する質問をして、生徒の理解を促す。フィンランドの教科書を見ると、各段落や単語についての問いはありません。テキストに書かれている内容について、全体の理解を促す質問をして、理由を挙げて解答させるようにしている。

PISAで問われる力は、国際社会で生きて行く力そのものであるから、学習のスタイルが変わっていくと思われる。高校入試では、PISA型の設問が少しずつ増えてきえている。教師は、カリキュラム・指導・評価方法を蓄積し、変えていく必要がある。


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