QOL
出典: Jinkawiki
クオリティ・オブ・ライフ(Quality of life)の略。生活を物質的な面から量的にとらえるのではなく、個人の生き甲斐や精神的な豊かさを重視して質的に把握しようとする考え方。医療や福祉の分野でいう。生活の質。生命の質。
世界保健機関(WHO,1984)は、健康を「身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態であることであり、単に疾病がないことではない」と宣言した。ほかにも多くの定義が「健康」と「QOL」双方について試みられてきており、しばしば、この2つを結びつけたり、あるいはQOLについては、しばしば幸福と生活の満足の要素が強調されたりしている。QOLは使う人や使う分野によって異なる事柄を意味するので、一義的に定義がしづらい用語である。
歴史的展開
QOLの定義に該当する最も初期の文献の一つは、ニコマコス倫理の中にみられ、アリストテレス(384~322BC)は次のように記している。『大衆、教養人ともに……「良いライフ」あるいは「うまく行くこと」は「幸せであること」と同じだと考えている。しかし、何が幸せを作っているかは議論を要する事柄で……あることをあげる人もいれば、別のことをあげる人もあり、それどころか往々にして同じ人が時が違えば違うことを言う。病気になれば健康であることが幸せだと思い、貧しい時には財産があることだと思う。』ギリシャ語の“ενδαιμονια”は一般には「幸せ」と訳されるが、1962年にHarris Rackhamという翻訳家がより正確な表現にはウェルビーイング(well being)が含まれるであろうと述べ、合わせてアリストテレスが“ενδαιμονια”によって感情の状態と一種の活動の双方を意味していたことを示した。現代の語法では、これは確かにQOLである。「クオリティ・オブ・ライフ」という用語は、2000年前のギリシャ語には存在しないが、アリストテレスは、QOLは人が違えば違うことを意味するだけでない、人のその時の状況によっても変化することを明確に示した。大きな影響力を持つWHOの1948年の定義は前述したとおりだが、これは身体的、精神的、社会的という3つの次元の重要性を疾病という脈絡において初めて認め、強調して表したものの1つといえる。
引用文献
ピーター・M・フェイヤーズ,デビット・マッキン(著) 福原俊一,数間恵子(訳) 2005 QOL評価学 測定,解析,解釈のすべて 株式会社中山書店
新村出(編) 2008 広辞苑第六版 岩波書店