S-HTP法

出典: Jinkawiki

高橋は描画テストによるパーソナリティ理解 (1) 人が成長し、精神的に成熟するにつれて、自己や外界を適切に認知し、表現方法も豊かになるので、その描く内容や表現の仕方は変化する。したがって描かれた絵によって、精神的成熟度を知ることができる。 (2) 人は心のうちに経験している感情や思考のすべてを、言葉によって適切に表現できないことが多く、この場合言葉の代わりに絵や芸術作品にそれを象徴して表現することがある。これは図示的コミュニケーションと呼ばれるものでありこれによって言葉で伝達できない思考や感情に内容を理解できる。 (3) 言葉によって表現できる観念内容であっても、特定の人物への敵意や性的内容のように、それをそのまま表現することが自我の存在を脅かす場合精神分析学が主張するように、人はそれを無意識のうちに抑圧して、形を変えて表現する。したがって絵に表現されたものを偽装された表象としてとらえることにより、パーソナリティのより深い面を理解することができる。 S-HTP法の実施法はA4判の画用紙を1枚と鉛筆2~3枚と消しゴム1個を用意しておく。画用紙は横にして使うことを指示し「家と木と人を入れて、何でも好きな絵を描いてください」と言い始める。「家と人と木を描いてください」と言うと単に課題を羅列する可能性が強くなるので最初のように言う。自由度を高め課題相互の関連付けをするか否かを見るためである。また、①絵の上手、下手を見るのではない、②ただし、いい加減ではなく丁寧にかく、③写生ではなく思ったとおりに描く、④時間は自由である、⑤集団検査の場合はとなりの人の絵を見たり邪魔をしたりしないという注意を加える。検査中の「人は何人描いていいですか?」や「他のものも入れていいですか?」などの質問に対しては「三つの課題が入っていれば、あとは好きなように描いてください」と答えこちらからは一切暗示しない。個人検査の場合は受検中の言動、書いた順番、修正箇所も記録しておく。描画後の質問は一定の質問ではなく検査者に応じて柔軟に行う。集団検査の場合は一人一人に深く接せないため描画後の絵で判断する。わかりにくい所は可能な範囲で質問する。 S-HTP法は使用利点として、(1)1枚に描くため受検者に与える心理的負担が軽度でエネルギー水準が 低下した人や描画に抵抗がある人でも、より気楽に受検しやすい。また、検査者にとっても施行が簡便で集団検査もしやすくフィールドワークにも便利である。(2)家・木・人それぞれをどのように関連付け描いたかを見ることによって新たな情報が加わる。この家と木と人の相互関係こそ自己と外界、意識と無意識などの関係性が鮮明に投影されるのでより重要な判断基準となる。(3)被検者は家と木と人をどのように描くかに加えてそれらをどのように組み合わせて描くかも自由であるため、より自由度が高まって被検者の心的状態が直接的に表現されやすい。検査の構造面から考えるならば、S―HTPは個別の課題画と自由画の中間に位置するものと思われる。(4)以上のように、自由度が高まり、組み合わせも複雑になるので、客観的な判断がさらに困難になるように思われるが、実際にはより信頼性の高い判定が可能となる。と言うのは、これまでの描画法の信頼性・妥当性に関する研究において、描画の部分的特徴よりも、全体的な評価の方が信頼性が高いことが明らかにされており、S-HTPは家と木と人との相互関係において、より多様な全体的評価が可能だからである。 というのがある。この家、木、人の3つによりさまざまな心が見えてくる。言葉にはしてなくても絵でわかるということは人のイメージは心もうつすということである。そう考えるとイメージというのは人の心を写す鏡であるといえる。 この家と木と人にどのような意味があるのかBuck(1948)は「住居としての家屋は家庭内や家庭内人間関係に関する被検者の連想が表現されてくるだろうし、環境からの多くの圧迫をうける生き物としての樹木には被検者が通常の環境との間で体験している基本的人間関係に関わる連想が浮かびあがってくるだろうち予測されるし、人間としての人物は特定な人間関係も一般的な人間関係も含めて両方の関係の連想内容が表現されてくると考えられる」と述べている。 この描いてもらったものの評価法としては統合性、絵の大きさ、3つのもの以外のものを入れているか、3つの関連付けがあるかなどがある。統合性は1個ずつを羅列して書こうが関連付け一つの絵として描こうが自由である。実際は健常者の人は羅列的に書く人は少なく、何らかの場面を想定し3つを統合的に描く人が8割を占める。臨床的に見ても神経症でも統合的に描く人がほとんどであるため羅列的な絵の場合問題があるといえる。うつ病には羅列的な絵を描く人が半数である。一つの場面を浮かべるだけのエネルギーがなくめんどくさいなど生きる気力がなくなっているといえる。絵の大きさは大きいほどその人のエネルギーを表す。画用紙は環境を表し環境に対してどれくらい働き掛けて、外界からどれだけものを得ているかなと環境との関わり方もわかる。たしかに元気な子どもは豪快に大きく絵を描くイメージがある。3つ以外の他のものを入れているかどうかでは健常者の8割は他のものをいれ、子どもでも幼稚園ですでに6割、小学生以上は8割以上が何か他のものを入れている。家と人と木を一つの絵として描くには道や草花、山などを入れることになる。もし他のものが入っていない場合は受動的な態度や柔軟性の欠如、無気力、機械的な対応を表すともいえる。他のものを入れるには自分で考えるということをしなくてはいけないから他のものがない場合自分から意欲的にという部分が抜けているのかもしれない。何を描くかは小学生までは雲、太陽、草花、動物、蝶など身近な自然が多く、中学以降は山、道、囲い、川など遠近感を加えるものが多く、どの世代でも男子は乗り物、女子は草花を描く人が多い。人、家、木の関係付けて描いているかは重要なポイントである。家は家庭との関係、木は深い部分の無意識な自己像を表すとすれば人と家を関係づけていれば家族との関係によりどころを求めている。木と関連づけていれば深い部分の自己をよりどころにしているといえる。


参考文献:「S-HTP法 統合型HTP法による臨床的・発達的アプローチ」 三上直子著 誠心書房


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