フェティシズム
出典: Jinkawiki
2015年7月29日 (水) 15:41の版 Bunkyo-studen2014 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
最新版 Bunkyo-studen2014 (ノート | 投稿記録) (→='''宗教学におけるフェティシズム''') |
||
2 行 | 2 行 | ||
- | == '''宗教学におけるフェティシズム'''= | + | ='''宗教学におけるフェティシズム'''= |
フェティシズムの概念を作ったフランス人啓蒙思想者 シャルル・ド=ブロスは、フェティシズムと偶像崇拝との区別を次のように特徴づけた。宗教でないフェティシズムと宗教の一形態である偶像崇拝との相違点は明確である。前者においては崇拝者が自らの手で可視の神体(フェティシュ)を自然物の中から選び取るが、後者においては、神は不可視のものとして偶像の背後に潜む。つまり前者ではフェティシュそれ自体が神であるのに対し、後者においては偶像の背後か天上に何かいっそう高級な神霊が存在する。また、フェティシズムにおいてフェティシュは、信徒の要求に応えられなければ虐待、または打ち棄てられるが、偶像崇拝において神霊は信徒に対し絶対者なのだ。 | フェティシズムの概念を作ったフランス人啓蒙思想者 シャルル・ド=ブロスは、フェティシズムと偶像崇拝との区別を次のように特徴づけた。宗教でないフェティシズムと宗教の一形態である偶像崇拝との相違点は明確である。前者においては崇拝者が自らの手で可視の神体(フェティシュ)を自然物の中から選び取るが、後者においては、神は不可視のものとして偶像の背後に潜む。つまり前者ではフェティシュそれ自体が神であるのに対し、後者においては偶像の背後か天上に何かいっそう高級な神霊が存在する。また、フェティシズムにおいてフェティシュは、信徒の要求に応えられなければ虐待、または打ち棄てられるが、偶像崇拝において神霊は信徒に対し絶対者なのだ。 | ||
フェティシズムの崇拝の対象をフェティッシュと言うがフェティッシュの概念はいつどのように生まれたのだろうか。フェティッシュの語源は、15世紀末ポルトガルの商人たちがアフリカ黄金海岸を訪れた際現地人の宗教およびそれに関わるモノを「フェティソ」と呼んだのが始まりである。そのころのポルトガルではフェティソという言葉には「魔術・呪術」を意味する言葉として使われていた。このことから、フェティッシュは特別に新しい意味を持つ言葉として生み出されたのではなく元々の意味のまま使われているということがわかる。17世紀にはアフリカ原住民の宗教とその関連物を表す国際語となり、次第に「フェティソ」という言葉から「フェティッシュ」に変形していき、「フェティソ」という言葉はポルトガルのローカル語から「フェティッシュ」という形で一般共通語となった。 | フェティシズムの崇拝の対象をフェティッシュと言うがフェティッシュの概念はいつどのように生まれたのだろうか。フェティッシュの語源は、15世紀末ポルトガルの商人たちがアフリカ黄金海岸を訪れた際現地人の宗教およびそれに関わるモノを「フェティソ」と呼んだのが始まりである。そのころのポルトガルではフェティソという言葉には「魔術・呪術」を意味する言葉として使われていた。このことから、フェティッシュは特別に新しい意味を持つ言葉として生み出されたのではなく元々の意味のまま使われているということがわかる。17世紀にはアフリカ原住民の宗教とその関連物を表す国際語となり、次第に「フェティソ」という言葉から「フェティッシュ」に変形していき、「フェティソ」という言葉はポルトガルのローカル語から「フェティッシュ」という形で一般共通語となった。 | ||
- | |||
- | |||
- | |||
== '''参考文献''' == | == '''参考文献''' == | ||
・田中雅一 『フェティシズム論の系譜と展望』 2009年 | ・田中雅一 『フェティシズム論の系譜と展望』 2009年 | ||
+ | |||
・石塚正英 『フェティシズムの信仰圏』 1993年 | ・石塚正英 『フェティシズムの信仰圏』 1993年 | ||
+ | |||
・石塚正英 『歴史知とフェティシズム』 2000年 | ・石塚正英 『歴史知とフェティシズム』 2000年 |
最新版
フェティシズムという言葉は、主に宗教学、経済学、性の三領域で使われる言葉である。宗教学的にフェティシズムという言葉を日本語に訳すと『呪物崇拝』となる。呪物崇拝とは、自然物、人工物を問わず持ち運びのできるような手頃な物体の崇拝することを意味する。経済学においてフェティシズムとは、マルクスが資本主義社会における商品の在り方を商品フェティシズムと名付けたことが始まりである。また、私たちが普段使用している『フェチ』という言葉は、フロイトによって身体の部位や衣類・装飾品への特異な欲望を性的フェティシズムと名付けたころから、フェティシズムを略しフェチという言葉が生まれた。宗教学においては真実であるはずの神を誤認して木片を崇拝し、商品フェティシズムにおいて人間の活動を否定し商品や貨幣を崇拝し、性的フェティシズムにおいては本来の欲望の対象(性器)を誤認して下着や足を性的欲望の対象としている。このように、人間の感情によって神や労働、性器の真実としての在り方が曲げられているのだ。
宗教学におけるフェティシズム
フェティシズムの概念を作ったフランス人啓蒙思想者 シャルル・ド=ブロスは、フェティシズムと偶像崇拝との区別を次のように特徴づけた。宗教でないフェティシズムと宗教の一形態である偶像崇拝との相違点は明確である。前者においては崇拝者が自らの手で可視の神体(フェティシュ)を自然物の中から選び取るが、後者においては、神は不可視のものとして偶像の背後に潜む。つまり前者ではフェティシュそれ自体が神であるのに対し、後者においては偶像の背後か天上に何かいっそう高級な神霊が存在する。また、フェティシズムにおいてフェティシュは、信徒の要求に応えられなければ虐待、または打ち棄てられるが、偶像崇拝において神霊は信徒に対し絶対者なのだ。 フェティシズムの崇拝の対象をフェティッシュと言うがフェティッシュの概念はいつどのように生まれたのだろうか。フェティッシュの語源は、15世紀末ポルトガルの商人たちがアフリカ黄金海岸を訪れた際現地人の宗教およびそれに関わるモノを「フェティソ」と呼んだのが始まりである。そのころのポルトガルではフェティソという言葉には「魔術・呪術」を意味する言葉として使われていた。このことから、フェティッシュは特別に新しい意味を持つ言葉として生み出されたのではなく元々の意味のまま使われているということがわかる。17世紀にはアフリカ原住民の宗教とその関連物を表す国際語となり、次第に「フェティソ」という言葉から「フェティッシュ」に変形していき、「フェティソ」という言葉はポルトガルのローカル語から「フェティッシュ」という形で一般共通語となった。
参考文献
・田中雅一 『フェティシズム論の系譜と展望』 2009年
・石塚正英 『フェティシズムの信仰圏』 1993年
・石塚正英 『歴史知とフェティシズム』 2000年