安楽死6
出典: Jinkawiki
2015年7月29日 (水) 15:27の版 Bunkyo-studen2014 (ノート | 投稿記録) (→'''オランダの安楽死''') ← 前の差分へ |
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世界で初めて安楽死法を制定したのは、オランダである。オランダで安楽死が国民的議論になったのは1971年に起きた事件がきっかけだ。その事件とは、医師のポストマが脳出欠の後遺症で麻痺や難聴、言語障害に苦しむ実母に対しモルヒネを注射し死なせたという事件だ。しかし当時、ポストマは殺人罪で起訴された。これに対し友人や知人、多くの一般市民から同情と支持が寄せられ、1973年、裁判所で「懲役一週間、執行猶予一年」と実質的に無罪の判決となった。それからも同じような安楽死に関する事例が多くあがり、国全体として安楽死をどう扱うべきなのかという議論が続けられ、2004年4月にいわばその総仕上げという形で安楽死法が制定されたのだ。この法律には「しかるべき配慮」が定められている。具体的に6つの項目に分かれている。 | 世界で初めて安楽死法を制定したのは、オランダである。オランダで安楽死が国民的議論になったのは1971年に起きた事件がきっかけだ。その事件とは、医師のポストマが脳出欠の後遺症で麻痺や難聴、言語障害に苦しむ実母に対しモルヒネを注射し死なせたという事件だ。しかし当時、ポストマは殺人罪で起訴された。これに対し友人や知人、多くの一般市民から同情と支持が寄せられ、1973年、裁判所で「懲役一週間、執行猶予一年」と実質的に無罪の判決となった。それからも同じような安楽死に関する事例が多くあがり、国全体として安楽死をどう扱うべきなのかという議論が続けられ、2004年4月にいわばその総仕上げという形で安楽死法が制定されたのだ。この法律には「しかるべき配慮」が定められている。具体的に6つの項目に分かれている。 | ||
①患者の要請が自発的で熟慮したものと確信が、医師にある。 | ①患者の要請が自発的で熟慮したものと確信が、医師にある。 | ||
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②患者の苦痛・苦悩が持続的で耐え難いものであるとの確信が、医師にある。 | ②患者の苦痛・苦悩が持続的で耐え難いものであるとの確信が、医師にある。 | ||
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③病状と先行きの見通しついて、医師が患者に知らせてある。 | ③病状と先行きの見通しついて、医師が患者に知らせてある。 | ||
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④患者の状況に対する合理的な解決法が他にないとの確信が、医師と患者にある。 | ④患者の状況に対する合理的な解決法が他にないとの確信が、医師と患者にある。 | ||
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⑤実行医師は、患者を診察して上記①~④の条項に関する意見を書面で提出した、一人以上の第三者の医師と相談している。 | ⑤実行医師は、患者を診察して上記①~④の条項に関する意見を書面で提出した、一人以上の第三者の医師と相談している。 | ||
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⑥医師は、しかるべき配慮をした上で、安楽死か自殺幇助を実行している。 | ⑥医師は、しかるべき配慮をした上で、安楽死か自殺幇助を実行している。 | ||
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このように、オランダでの安楽死法は現在では明確化しており、オランダ国民一人一人が安楽死について考えることができる環境が整っている。 | このように、オランダでの安楽死法は現在では明確化しており、オランダ国民一人一人が安楽死について考えることができる環境が整っている。 | ||
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日本では、いまだ安楽死に関する法律が制定されていない。日本で安楽死問題が大きく取り上げられた初めての事件は、1991年4月13日神奈川県伊勢原市の東海大学医学部付属病院の助手が、昏睡状態にある末期の多発性骨髄腫の患者に塩化カリウム液など心臓停止の副作用がある薬物を注射し、まもなく心不全で死亡させたという事件。患者の苦しそうな姿を見かねた患者の家族の要請により実行したという。しかし、この助手は殺人罪により横浜地裁で起訴され、有罪判決が出た。この判決で裁判長は積極的安楽死を実行した医師が罪に問われないための四条件を明らかにした。その四条件とは、 | 日本では、いまだ安楽死に関する法律が制定されていない。日本で安楽死問題が大きく取り上げられた初めての事件は、1991年4月13日神奈川県伊勢原市の東海大学医学部付属病院の助手が、昏睡状態にある末期の多発性骨髄腫の患者に塩化カリウム液など心臓停止の副作用がある薬物を注射し、まもなく心不全で死亡させたという事件。患者の苦しそうな姿を見かねた患者の家族の要請により実行したという。しかし、この助手は殺人罪により横浜地裁で起訴され、有罪判決が出た。この判決で裁判長は積極的安楽死を実行した医師が罪に問われないための四条件を明らかにした。その四条件とは、 | ||
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①患者に耐え難い肉体的苦痛がある。 | ①患者に耐え難い肉体的苦痛がある。 | ||
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②不治で死期が迫っている。 | ②不治で死期が迫っている。 | ||
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③肉体的苦痛の除去に方法を尽くし、ほかに代替手段がない。 | ③肉体的苦痛の除去に方法を尽くし、ほかに代替手段がない。 | ||
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④生命の短縮の明示的意思表示がある。 | ④生命の短縮の明示的意思表示がある。 | ||
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オランダの「しかるべき配慮」と比較するとかなり制限されているとは明白である。この差が生まれる要因は、日本のインフォームド・コンセントの不十分さが関係している。現在の医療現場において、医師と患者の距離間が離れすぎているため、医師と患者の関係性が不十分である。両者の間に深い関係が成立しているからこそ、命の重みやあるべき形がみえてくるものであるのだ。だから、今後日本では、医師と患者の関係性を今一度見直すことが必要である。 | オランダの「しかるべき配慮」と比較するとかなり制限されているとは明白である。この差が生まれる要因は、日本のインフォームド・コンセントの不十分さが関係している。現在の医療現場において、医師と患者の距離間が離れすぎているため、医師と患者の関係性が不十分である。両者の間に深い関係が成立しているからこそ、命の重みやあるべき形がみえてくるものであるのだ。だから、今後日本では、医師と患者の関係性を今一度見直すことが必要である。 | ||
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== '''参考文献''' == | == '''参考文献''' == | ||
・小笠原信之『プロブレムQ&A 許されるのか?安楽死』、緑風出版、2003年 | ・小笠原信之『プロブレムQ&A 許されるのか?安楽死』、緑風出版、2003年 | ||
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・産経ニュース【日本で安楽死論議が進まぬ理由 筑波大学名誉教授・土本武司】[http://www.sankei.com/life/news/140305/lif1403050015-n1.html | ・産経ニュース【日本で安楽死論議が進まぬ理由 筑波大学名誉教授・土本武司】[http://www.sankei.com/life/news/140305/lif1403050015-n1.html | ||
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安楽死とは、末期患者など回復が困難な患者が厳しい治療に伴う肉体的、精神的な苦しみから避けるために、楽に死にたいという感情を医師が理解し、薬物投与や治療行為の中止により、医師の手によって患者を死に至らせることである。しかし、人権の問題からこれを殺人罪だと考える意見も多くあり、国や地域によって安楽死の考え方は異なっている。
オランダでの安楽死
世界で初めて安楽死法を制定したのは、オランダである。オランダで安楽死が国民的議論になったのは1971年に起きた事件がきっかけだ。その事件とは、医師のポストマが脳出欠の後遺症で麻痺や難聴、言語障害に苦しむ実母に対しモルヒネを注射し死なせたという事件だ。しかし当時、ポストマは殺人罪で起訴された。これに対し友人や知人、多くの一般市民から同情と支持が寄せられ、1973年、裁判所で「懲役一週間、執行猶予一年」と実質的に無罪の判決となった。それからも同じような安楽死に関する事例が多くあがり、国全体として安楽死をどう扱うべきなのかという議論が続けられ、2004年4月にいわばその総仕上げという形で安楽死法が制定されたのだ。この法律には「しかるべき配慮」が定められている。具体的に6つの項目に分かれている。
①患者の要請が自発的で熟慮したものと確信が、医師にある。
②患者の苦痛・苦悩が持続的で耐え難いものであるとの確信が、医師にある。
③病状と先行きの見通しついて、医師が患者に知らせてある。
④患者の状況に対する合理的な解決法が他にないとの確信が、医師と患者にある。
⑤実行医師は、患者を診察して上記①~④の条項に関する意見を書面で提出した、一人以上の第三者の医師と相談している。
⑥医師は、しかるべき配慮をした上で、安楽死か自殺幇助を実行している。
このように、オランダでの安楽死法は現在では明確化しており、オランダ国民一人一人が安楽死について考えることができる環境が整っている。
日本での安楽死
日本では、いまだ安楽死に関する法律が制定されていない。日本で安楽死問題が大きく取り上げられた初めての事件は、1991年4月13日神奈川県伊勢原市の東海大学医学部付属病院の助手が、昏睡状態にある末期の多発性骨髄腫の患者に塩化カリウム液など心臓停止の副作用がある薬物を注射し、まもなく心不全で死亡させたという事件。患者の苦しそうな姿を見かねた患者の家族の要請により実行したという。しかし、この助手は殺人罪により横浜地裁で起訴され、有罪判決が出た。この判決で裁判長は積極的安楽死を実行した医師が罪に問われないための四条件を明らかにした。その四条件とは、
①患者に耐え難い肉体的苦痛がある。
②不治で死期が迫っている。
③肉体的苦痛の除去に方法を尽くし、ほかに代替手段がない。
④生命の短縮の明示的意思表示がある。
オランダの「しかるべき配慮」と比較するとかなり制限されているとは明白である。この差が生まれる要因は、日本のインフォームド・コンセントの不十分さが関係している。現在の医療現場において、医師と患者の距離間が離れすぎているため、医師と患者の関係性が不十分である。両者の間に深い関係が成立しているからこそ、命の重みやあるべき形がみえてくるものであるのだ。だから、今後日本では、医師と患者の関係性を今一度見直すことが必要である。
参考文献
・小笠原信之『プロブレムQ&A 許されるのか?安楽死』、緑風出版、2003年
・産経ニュース【日本で安楽死論議が進まぬ理由 筑波大学名誉教授・土本武司】[http://www.sankei.com/life/news/140305/lif1403050015-n1.html ]