方言3

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2012年8月10日 (金) 12:05の版
Bunkyo-studen2008 (ノート | 投稿記録)

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Daijiten2014 (ノート | 投稿記録)

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-== 消滅の危機にある言葉 ==+== 方言とは ==
 +方言とは、地域の言語の総体(体系)である。そもそも、日本の国語は日本語である。私たち日本人の大部分は日常生活で日本語を話しているが、ひとくちに日本語といっても、その内容は地方によって大きく異なる。たとえば青森県の人と鹿児島県の人が家族どうしで話している言葉を使って会話をしようとしても互いにほとんど通じないであろうし、それどころか同じ県内であっても方言圏が異なれば、その中身はかなり違う。このように、同一の国語の中で地域差が認められるとき、それぞれの地域で話されている言語を方言(dialect)という。冒頭で言ったように、方言は地域の言語の総体(体系)であって、私たちが英語を学ぶときに英単語を覚えるだけでなく、発音もアクセントも文法体系も学ばなければならないのと同様に、各地域の方言を話すためには、これも、発音、アクセント、語彙、文法などのすべてに習熟する必要がある。
-現在世界で話されている言語の数はおよそ6000語と言われている。2009年,ユネスコ(国連教育科学文化機関)はそのうち,およそ2500語が消滅の危機に瀕していると発表し,日本においてはアイヌ語,八重山語,与那国語,沖縄語,国頭語,宮古語,奄美語,八丈語の8つの言語が消滅危機のリストに加えられた。2月20日の朝日新聞(1)は,538言語が最も危険な「極めて深刻」に分類され,このうちの199語は話し手が10人以下だったことを明らかにした。また,502語が「重大な危険」,632語が「危険」,607語が「脆弱」とされたことも示している。アイヌ語は「極めて深刻」,八重山語と与那国語が「重大な危険」,沖縄語,国頭語,宮古語,奄美語,八丈語が「危険」と分類されたことも報じている。 
 +== 地域方言と社会方言 ==
 +特にことわりなしに方言といえば、地域方言を指すのがふつうであるが、同じ地域であっても、年齢や職業などによって、使われる言葉がかなり異なる。このように、同一地域において言葉使いに年齢差や職業差などが認められるとき、それぞれの階層の用いる言語を社会方言(social dialect)と呼ぶことがある。現代の若者の多くは仲間内ではかなり特色のある言葉使いをしているが、これらは社会方言の一種であり、若者方言とも呼ぶことができる。
-== アイヌ語(北海道 二風谷)への取り組み ==+== 地方共通語 ==
 +現代の日本人は老いも若きも方言と共通語を使い分けている。すなわち、日常のくつろいだ場面では方言を使い、あらたまった場面では共通語を用いるのがふつうである。しかし、地方の人たちが話す言葉は完全な共通語ではなく、音声、アクセント、語彙、文法的特徴の一部に方言的特長が混在するのがふつうであり、このような方言交じりの共通語のことを地方共通語という。これは一般に、高齢層であるほど地方共通語の色彩が濃い。また、このような地方共通語に対して、方言色のない共通語、すなわち全国に通用する共通語は全国共通語と呼ばれる。明治、大正期以降、社会の近代化につれて、日本の方言は共通語化の道をたどったことで昔ながらの方言を話す人が少なくなっていったが、世間で言われているほど方言が衰退しているわけではなく、地域の人々の共通使用能力の増大が方言の衰退と誤認されている面もある。とはいっても、各地の方言における方言語彙の衰退は著しく、方言音声も次第に失われつつあるのが現状でもある。このような共通語化の影響を受ける以前の方言を伝統的方言と呼ぶことがある。一般に、方言調査においては、高齢者を調査対象に選ぶことが多いが、それは、これらの調査の目的が伝統的方言の調査研究を目的としているからである。現代の地方言語の実態を把握するためには、中年層、若年層の方言や、方言と共通語の使い分けの実状にも目を向けることが必要である。
-アイヌ民族は,東北北部から北海道,千島列島,樺太といった地域で暮らしてきた北方先住民である。アイヌ民族は古くから独自の文化と言葉を育みながら生活してきた。その中で,独自に発達してきたのがアイヌ語である。しかしアイヌ民族の言葉であるアイヌ語は今では,ユネスコが認定した「消滅の危機にある言語」の中でも最高ランクの「極めて深刻」な言語だとされている。アイヌ語が日常的に話されていたのは,江戸時代の頃までと言われている。明治時代になると,開拓のために日本各地から,多くの人が移住した。さらに1899年には「北海道旧土人保護法」が施行され,アイヌ民族に日本語の使用が義務づけられ,それによりアイヌ語を受け継ぐ者が少なくなっていった。 
-しかし,アイヌ語教室やアイヌ資料館を設置したり,口承文献を残したりなど,アイヌの言葉を残そうとする活動は受け継がれている。これにより,アイヌ語教室は各地に設置されるようになった。住民のおよそ8割がアイヌ民族というアイヌの町である北海道沙流郡にある二風谷にも,アイヌ語教室が設けられている。ここではアイヌ語の学習のほかにも,ユカラという,文字を持たないアイヌ民族が昔から口伝えで継承してきたアイヌ民族の英雄叙事詩についても学ぶことができる。また,子どものクラスもあり,アイヌ語を子どもたちにも伝えていく取り組みがなされている。 
 +== 共通語と標準語 ==
 +方言(地方方言)に対立する概念が共通語(common language)である。共通語とは、たとえば、「英語は世界の共通語である。」といわれるように、地域を越えて広く用いられる言語を指す。すなわち、共通語は現実に存在する多数の地域言語の一つであって、「共通語」という別個の言語が存在するわけではない。世界の国々の中には言語が複雑な状態にあったり、言語が原因で政治紛争になったりしているという現実がある中で、日本では、日本語が唯一の公用語、教育語、日常語であるため、この日本の言語状況は極めて幸福であるといえる。事実、今日では衛星放送で英語によるニュースが放送されたり、日本のテレビ局でも英語が併用されたり、国際英語検定の得点を管理職登用の条件にする企業が現れるなど、日本社会の中に英語が少しずつ定位置を占め始めている。そんな状況下の日本だが、日本の共通語の地位を占めているといえるのは東京地方で話されている言葉、つまり、東京方言であろう。東京を含む首都圏で話されている言葉の大部分、すなわち、首都圏方言が共通語の地位を獲得しているのである。標準語(standard language)は共通語と意味の類似する概念であり、時には全く同じ意味で使われる。共通語はそれぞれの地域の人たちがよその地域の人たちと話をするときに用いる現実の言語であるが、標準語は人が規範として頭の中に持っている言語形式、または、言語(日本語)の専門家が規範と定めた言語形式である。また、共通語が話し言葉であるのに対して、標準語は書き言葉的な性格が強い。ある単語が標準語であるかどうかを知るためには、その言葉が辞書の見出しにあるかどうかが目安となる。しかし、「帽子を脱ぐ」「帽子をとる」のようなイディオム(慣用語)や「父にもらった」「父からもらった」のような文法形式に関しては、いずれが標準的用法であるのか、辞書によって判断することは困難である。
-== 八丈方言(八丈島)への取り組み ==+投稿者:UFO
-八丈島は,東京の南に浮かぶ伊豆諸島ひとつである。東京都に属するこの島は,高温多湿な気候から「東京都亜熱帯区」とも呼ばれている。八丈語とは,八丈島や,青ヶ島で使用されている言語である。荒々しい風が吹き付ける八丈島では,風に関する言葉が発達してきた。島の人々は北東の風を「ナリヤー」と呼び,北西の風を「コオムラ」と呼んできていて,風に対する独特の感性が言葉にも現れている。 
-昔は学校でも,教師や生徒たちの間でも島言葉が交わされていたが,1960年代半ば,島外で生活するのに困らないよう,共通語の使用がルールとなった。そのため,八丈島の言葉を受け継ぐ人が次第に減少していってしまった。そのことに危機感を覚え,最近では島言葉を記した冊子が発行された。また,八丈島の言葉を残すための活動として,島の言葉そのままで劇を演じる劇団などもつくられている。そして,学校でも再び島言葉が見直され,島言葉で劇を行ったり,方言かるたで学習したりするなどして,子どもたちに島言葉を伝えている。 
- +== 参考文献 ==
- +「方言の研究」著者:東條操 刀江文庫
-== 奄美方言(奄美大島)への取り組み ==+「全国方言辞典」http://dictionary.goo.ne.jp/dialect/
- +「生きている日本の方言」 佐藤亮一 新日本出版社
-奄美群島は,鹿児島県の南西,370キロから560キロにわたって広がる,島嶼である。生物多様性の島として知られている奄美群島では,文化や言葉の多様性も大切にしていこうと,2月18日を「方言の日」としている。また奄美市のFMラジオ局では,地域の方々の協力を得て,方言によるニュース番組や,奄美に古くから伝わることわざなどを解説する番組を放送している。+
-行政と地域の方々の協力で作られた方言マップは,奄美群島の小中学校に配られ,島の子ども達が方言を覚えるために活用されている。また「島唄」を通して奄美の言葉に親しんでもらおうと,「島唄から学ぶ奄美の言葉」という小中学生用のテキストも作られた。子ども達は島唄を練習し,学習発表会で唄うなどして奄美方言と触れ合っている。島の宝とされる「島唄」であるが,年々島言葉の意味や,島唄の由来がわかる唄者が減少している。そこで,この島の宝を後世に残していくために「奄美島唄伝承事業」なども始められた。同事業については,地元の新聞(2)でも報じられている。それによると,「奄美島唄伝承事業」は,地域の伝統文化の伝承とともに島唄をまちづくりや奄美の魅力の発信に活用しようと,鹿児島県が2011年度から3ヵ年間計画で進めている文化庁の補助事業である。奄美各地の島唄を把握し,データベースとして歌詞集,CDなどを作成し,教材や情報発信ツールなどとして活用を期待するものである。2011年度は554万2千円の予算を盛り込んだ。+
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-== 国頭方言(与論島)への取り組み ==+
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-国頭方言は,沖縄諸島北部,および鹿児島県奄美群島の与論島と沖永良部島で話される方言の総称とされる。与論島は,鹿児島県の南部,奄美群島の最南端に位置する。この島では島独自の言葉のことを「ユンヌフトゥバ」と言われる。この「ユンヌフトゥバ」を学ぶために,以前から様々な取り組みが行われていることから,与論島は方言教育の先進地と言われている。その一つが「方言カルタ」である。このカルタは,「ユンヌフトゥバ」を覚えるために作られたものであり,毎年2月には「ユンヌカルタ大会」が開催されている。また島全体で方言に取り組む与論島では,「ユンヌフトゥバ」の日が制定されている。この与論島の「ユンヌフトゥバの日」にならって,今では奄美群島全体で2月18日を「方言の日」と定めることになった。+
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-== 沖縄方言への取り組み ==+
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-沖縄本島には,およそ120万人の人が暮らしている。沖縄方言とは,琉球語(琉球方言)のうち,沖縄諸島中南部で話される方言(言語)の総称である。また,沖縄方言はウチナーグチ(沖縄口)とも言われる。+
-ウチナーグチ保護の取り組みはさまざま行われていて,ニュースでも取り上げられている。2002年6月3日の琉球新報(3)では,「ウチナーグチを伝えよう」と題して,方言の保存・継承に向けた活動を続けている,沖縄方言普及協議会による,6月からスタートされた「沖縄方言新聞」(季刊)の第1号を取り上げている。「沖縄方言新聞」は全四ページで,広告など一部を除いて漢字交じりの方言で記述されている。一面には会長の「新聞始(じがみはじ)みーる御挨拶(ぐえーさち)」を載せ,沖縄方言の大切さと沖縄文化への誇りを訴えている。特徴としてあげられていることは,ラジオ沖縄の「方言ニュース」の担当者ら会員のエッセーや地域の方言保存・継承の取り組み,また,子供向けに魚の名前を紹介するなど,楽しみながら方言を学べる紙面づくりである。 そして,2012年3月29日の琉球新報(3)では,ウチナーグチ普及に向けて,職員が庁舎窓口を訪れた市民にウチナーグチであいさつをする「那覇市ハイサイ運動」が4月から本格的に始まるのを前に,市役所での,市長による,運動のキックオフ宣言を報じた。そして,琉球新報では,市が運動を盛り上げるために,19日に「那覇市ハイサイ運動推進計画」を策定したことも取り上げている。この計画には,職員のあいさつ文は「ハイサイ」で始まり「ニフェーデービル」で終わるよう作成することや,学校現場でも伝統文化の普及啓発に関わる内容を盛り込むことなどが明記されている。このほか,ポスターや職員が作成したロゴマーク,市長自らが出演するPRビデオなどを使い,ウチナーグチの普及に努めることを目標としている。ウチナーグチに詳しくない職員のため,会話集も用意するなどの配慮もある。将来は企業の協力も得て,住民票などの自動交付機やATM(現金自動預払機)にもウチナーグチの音声を取り付けたい考えであることを明らかにしている。+
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-== 宮古方言(宮古島) ==+
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-宮古島は,沖縄本島から南西に300キロ離れた場所に浮かぶ島である。宮古島では島独自の言葉のことを「ミャークフツ」と呼ぶ。「ミャークフツ」とは,琉球語の内,宮古列島で話される方言の総称である。昔から海での漁が盛んであった宮古では,言葉に独特の調子が存在する。現在,「ミュークフツ」は,島の若い人の間では,ほとんど使われなくなってしまった一方で,中学校では「ミャークフツ」に慣れ親しむための取り組みが行われている。「今を生きる言葉,宮古島のことわざ」をテーマにして,宮古のことわざを自分たちが考えたストーリーに合わせて発表するなどの授業が行われている。また,ミャークフツで語る紙芝居などを作成した幼稚園もある。そして,沖縄県立博物館では,ミャークフツを学ぶための講座も開かれている。+
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-== 八重山方言(石垣島)への取り組み ==+
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-石垣島は,沖縄本島の南西,八重山列島に位置する。石垣島では,島言葉「スマムニ」の魅力を子ども達に伝えるために,夏休みのラジオ体操の歌詞が「スマムニ」で流れているという取り組みがなされている。これは,子どもにも親しみやすく,新川スマムニラジオ体操とよばれる。この企画は,地域の運動会をきっかけにしてはじめられた。また,石垣島に伝わるわらべ歌55曲を集めた「バガー島のわらべ歌」というCD付冊子が発行されている。冊子の発行は,島の文化を伝えるために活動している児童文化サークル「くにぶん木の会」によるものである。幼稚園では,このわらべ歌をお遊戯に取り入れている。+
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-== 与那国方言(与那国島)への取り組み ==+
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-与那国島は,日本の最西端である,南西諸島の八重山列島に位置する。与那国島の中学校では,島の文化を伝える授業が活発に行われている。例として,与那国の言葉で演じる狂言・キングイの魅力を伝える,郷土学習の授業などがある。その特徴として,郷土の文化と言葉,両方を親しめるということがあげられる。また,与那国民俗資料館には,島の文化を今に伝える民具が多く並んでいる。+
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-参考・引用文献+
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-方言ってなんだろう?+
-http://www.hougen-gakushu.net/about_this_site/index.html+
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-(1)朝日新聞デジタル+
-http://www.asahi.com/shimbun/nie/kiji/kiji/20090302.html+
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-(2)南海日日新聞+
-http://www.nankainn.com/+
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-(3)琉球新報+
-http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-101453-storytopic-86.html+
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方言とは

方言とは、地域の言語の総体(体系)である。そもそも、日本の国語は日本語である。私たち日本人の大部分は日常生活で日本語を話しているが、ひとくちに日本語といっても、その内容は地方によって大きく異なる。たとえば青森県の人と鹿児島県の人が家族どうしで話している言葉を使って会話をしようとしても互いにほとんど通じないであろうし、それどころか同じ県内であっても方言圏が異なれば、その中身はかなり違う。このように、同一の国語の中で地域差が認められるとき、それぞれの地域で話されている言語を方言(dialect)という。冒頭で言ったように、方言は地域の言語の総体(体系)であって、私たちが英語を学ぶときに英単語を覚えるだけでなく、発音もアクセントも文法体系も学ばなければならないのと同様に、各地域の方言を話すためには、これも、発音、アクセント、語彙、文法などのすべてに習熟する必要がある。


地域方言と社会方言

特にことわりなしに方言といえば、地域方言を指すのがふつうであるが、同じ地域であっても、年齢や職業などによって、使われる言葉がかなり異なる。このように、同一地域において言葉使いに年齢差や職業差などが認められるとき、それぞれの階層の用いる言語を社会方言(social dialect)と呼ぶことがある。現代の若者の多くは仲間内ではかなり特色のある言葉使いをしているが、これらは社会方言の一種であり、若者方言とも呼ぶことができる。


地方共通語

現代の日本人は老いも若きも方言と共通語を使い分けている。すなわち、日常のくつろいだ場面では方言を使い、あらたまった場面では共通語を用いるのがふつうである。しかし、地方の人たちが話す言葉は完全な共通語ではなく、音声、アクセント、語彙、文法的特徴の一部に方言的特長が混在するのがふつうであり、このような方言交じりの共通語のことを地方共通語という。これは一般に、高齢層であるほど地方共通語の色彩が濃い。また、このような地方共通語に対して、方言色のない共通語、すなわち全国に通用する共通語は全国共通語と呼ばれる。明治、大正期以降、社会の近代化につれて、日本の方言は共通語化の道をたどったことで昔ながらの方言を話す人が少なくなっていったが、世間で言われているほど方言が衰退しているわけではなく、地域の人々の共通使用能力の増大が方言の衰退と誤認されている面もある。とはいっても、各地の方言における方言語彙の衰退は著しく、方言音声も次第に失われつつあるのが現状でもある。このような共通語化の影響を受ける以前の方言を伝統的方言と呼ぶことがある。一般に、方言調査においては、高齢者を調査対象に選ぶことが多いが、それは、これらの調査の目的が伝統的方言の調査研究を目的としているからである。現代の地方言語の実態を把握するためには、中年層、若年層の方言や、方言と共通語の使い分けの実状にも目を向けることが必要である。


共通語と標準語

方言(地方方言)に対立する概念が共通語(common language)である。共通語とは、たとえば、「英語は世界の共通語である。」といわれるように、地域を越えて広く用いられる言語を指す。すなわち、共通語は現実に存在する多数の地域言語の一つであって、「共通語」という別個の言語が存在するわけではない。世界の国々の中には言語が複雑な状態にあったり、言語が原因で政治紛争になったりしているという現実がある中で、日本では、日本語が唯一の公用語、教育語、日常語であるため、この日本の言語状況は極めて幸福であるといえる。事実、今日では衛星放送で英語によるニュースが放送されたり、日本のテレビ局でも英語が併用されたり、国際英語検定の得点を管理職登用の条件にする企業が現れるなど、日本社会の中に英語が少しずつ定位置を占め始めている。そんな状況下の日本だが、日本の共通語の地位を占めているといえるのは東京地方で話されている言葉、つまり、東京方言であろう。東京を含む首都圏で話されている言葉の大部分、すなわち、首都圏方言が共通語の地位を獲得しているのである。標準語(standard language)は共通語と意味の類似する概念であり、時には全く同じ意味で使われる。共通語はそれぞれの地域の人たちがよその地域の人たちと話をするときに用いる現実の言語であるが、標準語は人が規範として頭の中に持っている言語形式、または、言語(日本語)の専門家が規範と定めた言語形式である。また、共通語が話し言葉であるのに対して、標準語は書き言葉的な性格が強い。ある単語が標準語であるかどうかを知るためには、その言葉が辞書の見出しにあるかどうかが目安となる。しかし、「帽子を脱ぐ」「帽子をとる」のようなイディオム(慣用語)や「父にもらった」「父からもらった」のような文法形式に関しては、いずれが標準的用法であるのか、辞書によって判断することは困難である。


投稿者:UFO


参考文献

「方言の研究」著者:東條操 刀江文庫 「全国方言辞典」http://dictionary.goo.ne.jp/dialect/ 「生きている日本の方言」 佐藤亮一 新日本出版社


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