ファシズム2

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== 参考文献 == == 参考文献 ==
-*社会学事典 昭和63年2月10日 株式会社 弘文堂+*社会学事典 昭和63年2月10日 株式会社 弘文堂 編 見田宗介、栗原彬、田中義久
 +*ファシズム 昨日・今日・明日 1997年5月10日 発行 刀水書房 著 ワダル・ラカー
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目次

ファシズムとは

 狭義におけるファシズムとは、1922年から43年までイタリアを支配したムッソリーニ(1883~1945)の思想・運動・体制を指すが、他方では、第一次大戦から第二次大戦の間の時期にさまざまな国々に登場した類似の運動とイデオロギーにファシズムを見出し、さらにドイツのナチス第三帝国(1933~45)、スペインのフランコ(1892~1975)体制、日本の二・二六事件(1936)もしくは大政翼会成立(1940)以降の体制をファシズム体制とする立場も有力である。一般にファシズムと呼ばれる現象は、立憲主義と議会政治の否認、一党制の確立を指向し、自由主義・共産主義・国際主義の排撃と全体主義・急進的ナショナリズム・軍国主義を高唱し、独裁者への個人崇拝と指導者原理に基づく社会の再編集を断行しようとする点、ならびにその結果として、極右政党ないし軍部・官僚中の急進右派分子による政治的独裁の主張もしくは樹立に終わる点で、共通の特徴を有しているといえる。しかしながら、今日では、実証的歴史の研究の前進の上に、何が「ファシズム」であるかについてはできるだけ限定的に解釈し、さらには、一般概念としての「ファシズム」を否定する(つまり、イタリア・ファシズムについてしか「ファシズム」という呼名を使用しない)研究動向さえ見受けられる。こうした状況においては、問題を思想・運動・体制の三つのレベルに分けて考えることから始めるほかはないと思われる。


  • まず、思想のレベルでいえば、前述の諸主張が「ファシズム」の共通の特徴であることは否定できないにしても、問題なのは、単なる復古主義的反動(もしくは保守反動)とファシズムとの区別である。その点では、ファシズムの思想は、根底として保守的感情と激しい現状変革の欲求との結合の上に展開されており、その意味でつねに伝統と革新との二面性を示していることが注目される。その特有の思想内容としては、「共同体の敵」の排除、ナショナリズムと「社会主義」の結合による新体制自立の提唱、社会ダーウィン主義に基づいたエリート主義、「生存圏」思想に根拠づけられた帝国主義の四つがあげられる。


  • また、運動面では、それらが一般には新旧の中間層を中心にして社会各層のマージナルな分子を広範に結集して登場する点、指導者原理を組織原理とし、さらに暴力の行使を正面から正当化する運動形態をとるところも特有である。その結果ファシズムの運動は、単なる「保守反動」と異なり、強烈な疑似革命的様相を示すことにもなる。こうした諸特徴をもったファシズムのイデオロギーと運動は、1930年の世界恐慌を背景とする危機のなかで、アングロサクソン諸国を含めて広範囲に存在していたことが今日では確認されている。


  • それに対して、こうした思想や運動が勝利して新しい支配体制を確立しえた国の数は日・独・伊の後発帝国主義国家とその支配下にはいった国々に限られてくるし、また、そうした国々においても、ファシズム体制は、独伊を含めて、本来のファシズム運動と既存の支配勢力のなかの親ファシズム分子との同盟によって成立したのが実情である。またファシズム体制(一党独裁の蔭での執行権力の無制約な貫徹が基本的特徴)の定着とともにファシズム内部の急進分子が排除され、テクノクラートの優位と技術的近代化の貫徹が見られるようになるのも共通である。最後に、ファシズム現象についてはその世界史的位置づけが重要であり、イタリアはファシズムの世界史の舞台への登場の突破口、ドイツ・ナチズムはその極限形態であり、日本はその二つの前例の存在によって単なる軍国主義からファシズムへの転換を経験することになったのだといえる。


ファシズムの本質

 ファシズムが政治の舞台に登場した時、それは全く新しい種類に属する、根本的に新しい要素を持っていた。当時は、広く認識されていなかった。ナチズムとファシズムの方位が極度のナショナリズムであった。ファシズムがそれ以前の独裁権力と区別するのは、大衆政党であったこと、自らの防衛部隊と軍隊を背後にし、権力を独占していたこと、さらに常軌を逸した暴力の行使によってすべての政党を排除したことにある。 この新しい党は、事実上無制限の権力を持ち、追随者の献身的支持を受け、疑似宗教的崇拝の対象となった指導者に率いられていた。党の教義は党員だけでなく、全市民の尊守すべき誓約条項となり、強力なプロパガンダ機構を通じ、絶え間なく伝達された。


ファシズムの教義

 ファシズムはなによりもナショナリズムであり、エリート主義(少数派支配)であり、アンチリラベルである。また、ミリタリズムでもあり、ファシストが支配した国が強力な場合は、帝国主義と領土の拡大を弁護する。しかし、ナショナリズムは1914年以前の多くの国に圧倒的な影響力を持っており、その魅力は右翼と中道派に止まらず、エリート主義も新しい発明ではなかった。アンチリベラリズムはカトリック教会と右翼に蔓延している。また、帝国主義の弁護は、保守派にも自由主義者にも社会主義者にも見られた。


ファシズムの文化

 ファシズムは唯物論の精神に抵抗するロマン主義者を魅了し、同時に古典的で合理的なフランスの伝統、調和と理性と明晰さへの復帰を弁護するアクション・フランセーズの反ロマン主義精神を鼓舞した。さらに、ファシズムは、近代社会が伝統とヒエラルキー(階層的秩序)と宗教的価値を失っている保守主義者に好まれ、ファシズムを資本主義の打倒のために必要な一段階であると信ずる若い反ブルジョア的反逆者たちの心もとらえていた。こうした人々のすべてに共通しているのは、リベラルなデモクラシーはすでに破産しているという認識、そして、ファシズムは多くの欠点はあっても、強い信念と行動力をもった、妥協を知らない者たちの運動であるという認識である。こうした知識人たちは自分たちの自由に対する制限を自ら受け入れようとしていた。それが国家の再興と新しい文明の誕生をもたらすであろう文化ルネサンスのための代償と見たからである。


参考文献

  • 社会学事典 昭和63年2月10日 株式会社 弘文堂 編 見田宗介、栗原彬、田中義久
  • ファシズム 昨日・今日・明日 1997年5月10日 発行 刀水書房 著 ワダル・ラカー


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