環境問題16
出典: Jinkawiki
2016年7月29日 (金) 16:02の版 Bunkyo-studen2014 (ノート | 投稿記録) ← 前の差分へ |
2016年7月29日 (金) 16:37の版 Bunkyo-studen2014 (ノート | 投稿記録) 次の差分へ → |
||
45 行 | 45 行 | ||
特定の漁業資源の乱獲、混獲した魚類の廃棄、海洋汚染の動向は、漁業部門の経済に深刻なリバウンド効果をもたらしている。これまで見てきたように、多くの漁場では漁獲量が最大持続生産量を超えたため、漁獲できる魚が減って、その採捕には一層の漁獲努力が必要となっている。また、乱獲されている漁業資源の現行リストには高価格種の魚類が多く挙がっていることから、乱獲のもたらす経済的影響は、漁獲量から考えるよりも重大である。海洋汚染に関しては、外洋はまだ比較的きれいだが、沿岸水域は深刻な汚染の脅威にさらされている。特に、多くの魚種がライフサイクルの一定時期を沿岸水域で過ごすため、海洋環境の劣化は、魚類の生息域や漁業資源にマイナスの影響を及ぼす可能性がある。こうした影響には、水質、水文学的特性、栄養塩類濃度、魚類の生息環境、餌の供給、などの変化が含まれる。このようなマイナスの影響や漁業資源の変化が汚染の結果だと最終的に確定することは、非常に難しく、生物学的な要因、魚の種の性別や年齢、生殖特性や移動性の違いがさらにそれを難しくする。これらの影響は、漁業部門のみならず、ポストハーベスト部門にまで及ぶ。漁期を規制されると、漁獲競争に拍車がかかり、漁期はますます 短くなる。加工工場にはわずかな期間だけ原料の魚があふれるが、それがすぎると長い原料不足の時期に入るので、加工コストが必要以上に高くなる。また、品質が下がる可能性もある。 | 特定の漁業資源の乱獲、混獲した魚類の廃棄、海洋汚染の動向は、漁業部門の経済に深刻なリバウンド効果をもたらしている。これまで見てきたように、多くの漁場では漁獲量が最大持続生産量を超えたため、漁獲できる魚が減って、その採捕には一層の漁獲努力が必要となっている。また、乱獲されている漁業資源の現行リストには高価格種の魚類が多く挙がっていることから、乱獲のもたらす経済的影響は、漁獲量から考えるよりも重大である。海洋汚染に関しては、外洋はまだ比較的きれいだが、沿岸水域は深刻な汚染の脅威にさらされている。特に、多くの魚種がライフサイクルの一定時期を沿岸水域で過ごすため、海洋環境の劣化は、魚類の生息域や漁業資源にマイナスの影響を及ぼす可能性がある。こうした影響には、水質、水文学的特性、栄養塩類濃度、魚類の生息環境、餌の供給、などの変化が含まれる。このようなマイナスの影響や漁業資源の変化が汚染の結果だと最終的に確定することは、非常に難しく、生物学的な要因、魚の種の性別や年齢、生殖特性や移動性の違いがさらにそれを難しくする。これらの影響は、漁業部門のみならず、ポストハーベスト部門にまで及ぶ。漁期を規制されると、漁獲競争に拍車がかかり、漁期はますます 短くなる。加工工場にはわずかな期間だけ原料の魚があふれるが、それがすぎると長い原料不足の時期に入るので、加工コストが必要以上に高くなる。また、品質が下がる可能性もある。 | ||
- | *1990年おおおお | + | ==林業における環境問題== |
- | *1991年おおお | + | |
+ | 森林は木材製品、レクリエーションの機会、生態系サービス(生態系の公益的機能)などさまざまなサービスを人間に提供する。世界全体でみると、人間が使うために収穫された木材の約半分は燃料材に使われ、残りの半分は産業用(建築材、紙製品など)に使われる。木材および燃料材に対する世界の需要はこの数十年間着実に増加したが、現在では横ばい状態とみられる。木材は、人為的影響を受けていない天然材、木材生産用に管理されている半天然林、木材および繊維生産用に計画的植樹と集約的栽培が行われている完全な「人工林」から収穫される。人間が使うための木材を提供する以外に、森林は大気浄化機能、炭素収穫源、流域保護、砂防、生物多様性、野生動物の生息地などのきわめて重要な環境サービスを提供する。すべての森林はこれらの重要な環境的機能に寄与しているが、その度合いは森林の大きさ、構造、密度、管理状態によって異なる。経済的サービスや環境サービスを提供する森林の能力を制限する主な要因は、森林減少(土地利用の変化による森林皆伐)と森林劣化(土地利用の変化がない場合の森林蓄積量の減少)である。天然林地域の断片化と単一種からなる人工林の造成は野生生物の生息地としての森林の質を低下させる可能性があり、肥料や農薬を使った集約的な造林は土壌、水、大気の質に影響する可能性がある。多くの場合、様々なサービスを提供し続けるように天然林を管理することは可能であり、それにはたとえば、限られた木材の収穫をレクリエーションの機会として提供したり、生物多様性に対して質の高い生息地を提供したりすることなどがある。 | ||
+ | |||
+ | ===林産物需要=== | ||
+ | |||
+ | 世界中で伐採される木材の約半分は産業用丸太に利用され、残りの半分は燃料材として利用される。産業用丸太の用途は、紙・パルプ用とその他(製材品、合板、単板)がほぼ半々である。用材の需要には人口と取得水準が、製材品とパネルの需要には建設事業の水準が、それぞれ大きく関係する。燃料材の大部分は開発途上国で消費され、推定総消費量に占めるOECD諸国の割合は10%にも満たない。燃料材の需要が発生する主な要因は、開発途上国の人口増加と代替エネルギー源(電力供給など)の不足である。1975年から1990年の間に主な林産物の消費量はOECD地域でもそれ以外の地域でも約50%増加したものの、1980年1980年代半ば以降は増加の伸びが止まっていた。それに比べて、1970年からの木質パネルや紙・板紙の消費量ははるかに大きな増加を示したが、製材品の需要は建設業の穏やかな成長を反映して比較的低い伸びにとどまっている。加工製品の消費はおおむね景気循環と連動している。世界の燃料材消費量は、開発途上国における人口増加と所得の低さが原因となって、1970年代以降着実に増加している。OECD地域では、人口レベルが安定し、古紙リサイクルの増加によってバージンループの需要が下がるため1995~2020年における主な林産物需要の伸びは弱まる公算が大きい。開発途上国の用材需要の予測には大きな幅があるが、増加の伸びが2010年以降緩やかになる点では、大半の予測が一致している。紙・パルプ工業に投入する一次繊維(産業用丸太、古紙、非木材繊維を含む)に対する需要は、2020年まで世界全体で増加すると予測されているが、丸太よりも古紙の需要のほうが大きく伸びる見通しである。2020年までには、古紙が紙・パルプ工業に投入する繊維全体の半分近くを占めることが見込まれている。それに比べて、今後の燃料材の総使用量を測定することが困難だということが挙げられる。開発途上国で予測される所得増加によって、通常ならば燃料材から他のエネルギー源への転換が進むところだが、引き続き人口も増加するためそうはならず、世界の燃料材使用量は2020年まで横ばいを保つものとみられる。OECD諸国における燃料材使用量は現在年間2億㎥に満たず、1980年代半ば以降着実に減少しているが、今後OECD諸国の燃料材需要がわずかに(4%)増加すると予測されている。 |
2016年7月29日 (金) 16:37の版
目次 |
さまざまな産業化での環境
農業と環境問題
食料は人間の生命にとって不可欠である。だが、食料生産は環境と複雑な関係にあり、その基盤となる生態系の状態を補強する可能性もあれば、劣化させる可能性もある。つまり、農業はどこでどのように行われるのかによって、洪水防止に役立つこともあれば洪水を助長することもあり、魅力的な景観を提供することもあれば魅力的でない景観を提供することもある。雨水をろ過したり雨水の影響を和らげたりすることもあればそれを破壊することもある。さまざまな食料生産システムが環境に及ぼす影響はその場所に固有のものであり、その重大さは国によって異なるだけでなく、同じ国の中でも場所によって異なる。 食料生産産業の性質が変化し、特定の農産物に対する需要が増すにつれて、環境への影響も大きく変化していく。たとえば、農業生産の集約化はエネルギー原単位を上げ、農業用化学品の利用に伴うリスクを増大させ、多くの地域で土地利用の転換を加速してきた。農業に対する高水準で継続的な援助と政府の貿易政策は、農業の投入物と生産物の相対的な価格を歪めつづけている。その反面、いくつかのOECD諸国では、ごく最近の規制と価格インセンティブにより、生産単位当たりの水、肥料および農薬の使用量が減っただけでなく、土壌、生息地および景観の価値を保護するための農法の導入が促進されている。
環境に対する農業生産の影響
農業は環境に対してプラスの影響もマイナスの影響も与えうる。従来の集約的な農法から有機農法に至るまで、あらゆる農法は現地レベルで持続可能なものになりうるが、実際にそうなるかは農業者が適切な技術と管理方法を採用するかにかかっている。環境の質に与える影響について現在得られている証拠は部分的で不完全だが、OECD諸国における農業開発の最近の動向、特に農業用化学品の大量使用とそのリスクの拡大、灌漑、大型で強力な農業機械の使用は、環境にマイナスの影響を与えてきたものとみられる。このような農法が、農業生産のエネルギー原単位増大、農薬と肥料による地下水と地表水の汚染、一部の地域における土壌侵食、化学的防除に対する病害虫の耐性増大をもたらしたのである。これらには迅速な取り組みが必要である。
大気の質と気候変動
農業部門からの大気汚染は、主に集約的な家畜生産とその結果生じる糞尿からのアンモニア発生に関係している。農業は酸性雨の発生源ではないが、大気によって運ばれるアンモニアは、何キロメートルも離れた風下の土壌を酸性化する可能性がある。農業からの大気汚染源には、崩れやすい土地から吹き飛ばされてきた表土がある。降下した表土は川や湖を汚染し、建物や機器に損害を与え、呼吸器系の問題を引き起こし、浄化費用を増大させる。 農業は地球の大気条件にも影響し、オゾン層破壊物質と温室効果ガスを排出してマイナスの影響を、農業土壌で炭素を吸収してプラスの影響を及ぼす。OECD諸国で排出されるメタンの約39%と亜酸化窒素のやく60%は農業生産によるものである。農業から排出されるメタンは主に反芻動物と糞尿処理から発生し、亜酸化窒素は主に窒素肥料から排出される。2020年までに農業関連のメタン排出量はOECD地域で現在の水準よりも約9%、世界水準としては22%以上も増えるものとみられる。過剰な施肥と家畜糞尿の排泄は、温室効果ガスである亜酸化窒素(N₂O)を発生させるとともに、水域の富栄養化につながる水路の硝酸汚染を招く可能性がある。上記のように、OECD地域の家畜生産から生じる窒素負荷は、2020年まで増加するものとみられる。しかしながら、農業はOECD諸国のCO₂総排出量の1%を占めるにすぎないとされており、農業部門からのCO₂排出量は2020年までに約15%減少すると見込まれている。
淡水の利用と汚染
農業はもっとも大量に水を利用している部門で、世界の淡水取水量の69%を使っている。近年国々では、価格インセンティブやインフラ改造や農業管理技術の改善が追い風となって、灌漑水の利用効率が大幅に改善された。そのため、OECD諸国の総灌漑面積は1980年以降16%増えたものの、その間に灌漑に使われた水量はほぼ安定を保ち、わずか4%増(世界全体では60%増)にとどまっている。だが依然として、持続可能な灌漑技術の導入は限られており、たとえば点滴灌漑が利用されているのは世界の灌漑面積の1%に満たない。その結果世界の農業用取水量のほぼ半分は、利用されるまでに至らず、効率の悪い水道管や灌漑設備を通る間に無くなってしまう。OECD地域の農業用水利用量は、今後20年間でさらに15%増えるとみられている。農業生産は、主に養分、農薬及び動物の排泄物の浸出、土壌の流出および堆積によって、水域を汚染する可能性がある。現在OECD諸国では、肥料の利用と家畜の排泄物による硝酸塩汚染が、おそらく地下水源にとってもっとも深刻な脅威となっている。OECD諸国におけるほとんどの農業地域では、高濃度の硝酸塩と農薬が検出されており、農業が特に集約的な場所では一様に水質基準を越えている。OECD諸国では、地表水に対する窒素排出量の平均40%、リン排出量の平均20%が農業によるものである。2020年までに、農業からの窒素と生物化学的酸素要求量(BOD)負荷による水質汚染は25%以上増加すると予測されている。OECD諸国の農薬使用量は見かけ上減少してきたが、集約的農業が行われている土地や流出水の影響を受けやすい地域、それに湿潤な地域では依然として水域が汚染され続けている。しかしそれよりも重大な問題は、地下水の農薬汚染である。もっとも広範に使われている農薬のいくつか(アトラジン、シマジン、アルジカーブ)は、通常の農業使用で土壌から浸出する力をもつ。総合的害虫管理戦略は、しだいにOECD諸国の農業生産者に採用されつつあり、これには、農薬の必要性と水源の農薬汚染リスクの両方を低減する可能性がある。
土壌劣化
OECD諸国の穀物地帯と集約的な家畜生産地域では、土壌有機物と肥沃度の減少が依然として深刻な問題になっている。土壌劣化は主に、風と水による浸食、圧密、塩類集積、酸性化、および生物浸食(有機物の減少など)によって起こる。こうした劣化プロセスは、農業管理方法や気候や技術の変化と結びついている。たとえば風と水による浸食は、単一栽培、飼料作物と輪作の減少、輪作期間の短縮、深耕や集約耕起、限界耕作地での栽培、集約的な家畜生産から生じる過放牧などの従来型農法によって加速される。土壌圧密は、土壌の上を移動させながら継続的に重い農業機械を使ったり、土壌が湿っているときに耕したりすると生じる。圧密は、水分と養分の保持力と動きを低下させることによって土壌肥沃度を減少させる。塩類集積と酸性化は土壌の化学作用を低下させ、最終的には収量を減少させる。世界の乾燥地域や半乾燥地域の大半では塩類土壌がふつうだが、灌漑された耕作地では、灌漑によって塩類集積が起きている。 OECD地域全体でみると、水と風による浸食から高いリスク、あるいは深刻なリスクにさらされている農地面積は広くないが、OECD諸国の中には、それが農地の10%以上を占めるところもある。この10年間、多くのOECD諸国では、水関連の土壌侵食が減少したものとみられる。それは主に、農業者が保全方法や不耕起栽培を採用していること、作物生産が集約的でなくなっている地域もあること、限界耕作地での生産が減りつつあることが理由である。同じく、データからは、他の土壌問題(酸性化、塩類集積、土壌圧密、毒物汚染)も一部のOECD諸国で改善しはじめていることが示唆されている。
自然資源、生物多様性、生息地
OECD諸国全体でみると、耕地向き作物と永年性作物に充てられた土地面積は、この数十年間でごくわずかに減少した。耕地面積が実質的に増えたのは、オーストラリアおよびニュージーランド地域だけである。OECD地域全体で1995年から2020年までの間に増える耕地面積はほんのわずかと予測しており、特にオーストラリアおよびニュージーランド地域、カナダ、メキシコおよび米国地域が中心的になるという。これとは対照的に西欧地域では、耕地面積は2020年までにわずか1%強増える見込みだが、これに対して牧草地は6%増える見込みである。 耕地面積がわずかに減少したにもかかわらず、近年の農業生産量が増えていることは、農業生産性の向上が主に集約化によって達成される傾向にあることを示している。集約化には、自然の土地にかかる農業拡大の圧力を取り除く可能性がある反面、野生動物の生息地と生物多様性にはマイナスの影響も与える。穀類の大規模な単一栽培、草原や湿地その他の生態系の改変、耕地整理措置、農業の機械化、集約的な家畜生産、それに肥料と農薬の使用増大は、多くの種の個体数を減少させ、動植物の多様性と生息地を減少させた。
漁業における環境問題
魚類は世界の人々の重要な食糧供給減であり、人間が摂取する動物性タンパク質全体の5分の1を占めている。魚類は再生可能資源であるため、長期に渡って漁獲し続けることが可能である。しかし現在の漁獲水準や漁法は、世界の漁場や海洋生態系に著しい圧力を加えている。漁業は、ある漁場で漁獲量がピークに達し、その後減少してくると、漁場を別の場所に移す、ということを繰り返してきた。このような慣行の結果、推計で世界の漁場資源の50%が満限まで漁獲され、15%が過剰に漁獲され、7%が枯渇状態にあり2%が乱獲から回復中である。世界の主な漁業資源のうち、残りの25%はいまだに高い生産量を上げることが可能である。 漁業活動は高価格魚種に影響を及ぼすだけでなく、混獲された非標的種の枯渇、海洋汚染、生息地の破壊の一因になることも多い。農業からの流出水、水質汚染、大気汚染による化学物質の沈着沿岸水域の開発、地球温暖化といった漁業部門以外の発生源資源はマイナスの影響を受けている。たとえば、主として商業海運船舶からのバラスト水の排出などによって漁場に外来種が持ち込まれても、漁場生態系には深刻な影響が及びうる。
漁業部門の動向と見通し
漁業がどのように推移するかは、いくつかの要因によって決まる。最終的には海洋漁業資源の生物学的限界がその足かせとなるが、漁獲能力の向上、漁獲のための技術開発、養殖産業の発展によってある程度それを相殺することは可能である。漁業からの水産物の供給は、魚類が生物であるということから制約を受ける一方で、水産物に対する消費者需要は増え続けている。この需要は、人口水準、食習慣、可処分所得や魚の価格によって左右される。
生態系の質
捕獲漁業では多くの場合、標的種とその他の魚種が混ざって網にかかる。使用する漁具の特性から非標的種が標的種と一緒に捕獲(混獲)されてしまうことがよくある。米国研究評議会の推算によれば、海洋での混獲量は年間2,700万トンにものぼり、これは海洋漁業の総漁獲量として報告されている量のほぼ3分の1に相当するという。漁業の種類や漁場によっては,漁網の種類や網目の大きさの指定、定期的な禁魚水域の設定、混獲や非標的種の死亡数規制、特定の漁具の義務付け(たとえばウミガメやイルカの混獲防止装置)など、混獲を減らすための多くの政策が実施されている。ダイナマイト漁法や底引き網漁法などの漁法は、サンゴなど海産種の生息環境破壊を引き起こす直接の原因となっている。大気中の温室効果ガス濃度上昇による海水温度の永続的変化や海水面の上昇、オゾン層破壊による紫外線β波への曝露増加などの地球規模の環境変化は、海洋生態系にも影響する可能性がある。
環境の変化が漁業部門に及ぼす影響
特定の漁業資源の乱獲、混獲した魚類の廃棄、海洋汚染の動向は、漁業部門の経済に深刻なリバウンド効果をもたらしている。これまで見てきたように、多くの漁場では漁獲量が最大持続生産量を超えたため、漁獲できる魚が減って、その採捕には一層の漁獲努力が必要となっている。また、乱獲されている漁業資源の現行リストには高価格種の魚類が多く挙がっていることから、乱獲のもたらす経済的影響は、漁獲量から考えるよりも重大である。海洋汚染に関しては、外洋はまだ比較的きれいだが、沿岸水域は深刻な汚染の脅威にさらされている。特に、多くの魚種がライフサイクルの一定時期を沿岸水域で過ごすため、海洋環境の劣化は、魚類の生息域や漁業資源にマイナスの影響を及ぼす可能性がある。こうした影響には、水質、水文学的特性、栄養塩類濃度、魚類の生息環境、餌の供給、などの変化が含まれる。このようなマイナスの影響や漁業資源の変化が汚染の結果だと最終的に確定することは、非常に難しく、生物学的な要因、魚の種の性別や年齢、生殖特性や移動性の違いがさらにそれを難しくする。これらの影響は、漁業部門のみならず、ポストハーベスト部門にまで及ぶ。漁期を規制されると、漁獲競争に拍車がかかり、漁期はますます 短くなる。加工工場にはわずかな期間だけ原料の魚があふれるが、それがすぎると長い原料不足の時期に入るので、加工コストが必要以上に高くなる。また、品質が下がる可能性もある。
林業における環境問題
森林は木材製品、レクリエーションの機会、生態系サービス(生態系の公益的機能)などさまざまなサービスを人間に提供する。世界全体でみると、人間が使うために収穫された木材の約半分は燃料材に使われ、残りの半分は産業用(建築材、紙製品など)に使われる。木材および燃料材に対する世界の需要はこの数十年間着実に増加したが、現在では横ばい状態とみられる。木材は、人為的影響を受けていない天然材、木材生産用に管理されている半天然林、木材および繊維生産用に計画的植樹と集約的栽培が行われている完全な「人工林」から収穫される。人間が使うための木材を提供する以外に、森林は大気浄化機能、炭素収穫源、流域保護、砂防、生物多様性、野生動物の生息地などのきわめて重要な環境サービスを提供する。すべての森林はこれらの重要な環境的機能に寄与しているが、その度合いは森林の大きさ、構造、密度、管理状態によって異なる。経済的サービスや環境サービスを提供する森林の能力を制限する主な要因は、森林減少(土地利用の変化による森林皆伐)と森林劣化(土地利用の変化がない場合の森林蓄積量の減少)である。天然林地域の断片化と単一種からなる人工林の造成は野生生物の生息地としての森林の質を低下させる可能性があり、肥料や農薬を使った集約的な造林は土壌、水、大気の質に影響する可能性がある。多くの場合、様々なサービスを提供し続けるように天然林を管理することは可能であり、それにはたとえば、限られた木材の収穫をレクリエーションの機会として提供したり、生物多様性に対して質の高い生息地を提供したりすることなどがある。
林産物需要
世界中で伐採される木材の約半分は産業用丸太に利用され、残りの半分は燃料材として利用される。産業用丸太の用途は、紙・パルプ用とその他(製材品、合板、単板)がほぼ半々である。用材の需要には人口と取得水準が、製材品とパネルの需要には建設事業の水準が、それぞれ大きく関係する。燃料材の大部分は開発途上国で消費され、推定総消費量に占めるOECD諸国の割合は10%にも満たない。燃料材の需要が発生する主な要因は、開発途上国の人口増加と代替エネルギー源(電力供給など)の不足である。1975年から1990年の間に主な林産物の消費量はOECD地域でもそれ以外の地域でも約50%増加したものの、1980年1980年代半ば以降は増加の伸びが止まっていた。それに比べて、1970年からの木質パネルや紙・板紙の消費量ははるかに大きな増加を示したが、製材品の需要は建設業の穏やかな成長を反映して比較的低い伸びにとどまっている。加工製品の消費はおおむね景気循環と連動している。世界の燃料材消費量は、開発途上国における人口増加と所得の低さが原因となって、1970年代以降着実に増加している。OECD地域では、人口レベルが安定し、古紙リサイクルの増加によってバージンループの需要が下がるため1995~2020年における主な林産物需要の伸びは弱まる公算が大きい。開発途上国の用材需要の予測には大きな幅があるが、増加の伸びが2010年以降緩やかになる点では、大半の予測が一致している。紙・パルプ工業に投入する一次繊維(産業用丸太、古紙、非木材繊維を含む)に対する需要は、2020年まで世界全体で増加すると予測されているが、丸太よりも古紙の需要のほうが大きく伸びる見通しである。2020年までには、古紙が紙・パルプ工業に投入する繊維全体の半分近くを占めることが見込まれている。それに比べて、今後の燃料材の総使用量を測定することが困難だということが挙げられる。開発途上国で予測される所得増加によって、通常ならば燃料材から他のエネルギー源への転換が進むところだが、引き続き人口も増加するためそうはならず、世界の燃料材使用量は2020年まで横ばいを保つものとみられる。OECD諸国における燃料材使用量は現在年間2億㎥に満たず、1980年代半ば以降着実に減少しているが、今後OECD諸国の燃料材需要がわずかに(4%)増加すると予測されている。