アシュリー事件
出典: Jinkawiki
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優生思想
生命をめぐる倫理について「優生思想」というものがある。19世紀末イギリスの科学者フランシス・ゴルドンが「優生学」という言葉を作り出し、その内容として障害など一般的に健康でないとされる子供の出産を防ぎ社会全体の健康を作り出すことを目的としていた。優生学を中心とする優生政策はナチス・ドイツによってもっとも大規模に行われた。
日本でも優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する、母体の生命健康を保護するとの目的で1948年に優生保護法が成立された。しかし不良な子孫の出生を防ぐという優生思想的な考えが障害者などの対する差別と捉えられ1996年に母体保護法と改正・改称された。解消されたからと言って「女性の体を通して人口を管理しようとしている。」「体外受精などの生殖医療の技術が急スピードで発達する中で、女性の体がますます道具にされたり実験台にされたりしている。」との批判の声が上がっている。
優生保護法の目的
①優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する。病気や障害を持った子供が生まれてこないようにする。
②母体の生命健康を維持する
アシュリー事件
優生思想をめぐる問題として「アシュリー事件」という事例がある。2004年アメリカのシアトルに住むアシュリーという6歳女の子は重度重複障害を持っていた。この障害を治療するために両親が子宮の摘出と乳房の切除および、エストロゲンという女性ホルモンを大量に投与し身長抑制、盲腸摘出手術を行った。両親は全世界の障害を持った子供にこのような治療を行うべきだと主張した。
反対意見として、手術の傷跡が残ってしまい月経も起こらない体になってしまうなど女性として生きていく上でコンプレックスが残ってしまう、成長を永久に止めてしまうことの是非、アシュリーはこの手術を望んでいたのか、などが挙げられた。
これらの意見に対して両親は、この手術をアシュリー自身のQOLを重視したため行ったと説明した。
アシュリーが治療を望んでいたのかはわからない。しかし、両親なりにアシュリーの幸せを考えたうえでの選択した。アシュリーはいわゆる植物人間ではなく感情をつたないながらも表現することが出来る。そのうえで生理痛をなくす、乳房の発達による不快感をなくす、身長と体重の抑制による介護の効率化と旅行に行くために車いすを使い家族とすごすための時間を増やすなどのQOLの向上をめざした。そして何よりこのような治療は、同じような障害を待つ子供が5年以内に亡くなってしまうことを考慮するとありがたいことであると主張した。
参考文献
アシュリー事件に見る他者知覚と同一化
http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/bitstream/2261/55480/1/UTCP_Uehiro_002003.pdf
アシュリー治療の是非について −新しいタイプの生命倫