イラン核問題2

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==イランの核開発の問題点== ==イランの核開発の問題点==
イランの核開発問題は、2002年8月、イランが秘密裡にウラン濃縮施設を建設していた事実が暴露されたことに端を発する。イランは、国際原子力機関(IAEA)及び核拡散 イランの核開発問題は、2002年8月、イランが秘密裡にウラン濃縮施設を建設していた事実が暴露されたことに端を発する。イランは、国際原子力機関(IAEA)及び核拡散
-防止条約(NPT)体制下にあり、核兵器製造に転用し得るウラン濃縮1等の核関連活動の運用には高い透明性が求められるが、同国による秘密裡の核関連施設の建設は核兵器の開+防止条約(NPT)体制下にあり、核兵器製造に転用し得るウラン濃縮1等の核関連活動の運用には高い透明性が求められるが、同国による秘密に行った核関連施設の建設は核兵器開発を意図するとの疑惑を招いた。その後の調査により、イランによる過去18年間に及ぶウラン濃縮実験の事実等が報告され、IAEAに対する義務違反が明らかになるとともに核兵器開発疑惑が一層強まった。イランはこれに対し、NPT4条によって加盟国に認められた「原子力の平和利用の権利」を主張するとともに核開発活動を継続させており、米国を始めとする関係各国による同活動の阻止に向けた対応が現在焦点となっている。核兵器製造に転用し得る技術をイランが保有することは、中東情勢のさらなる不安定化を招きかねない。加えてこの問題は、中東諸国への核拡散の懸念と相まってNPT体制に動揺を与え、IAEA体制下における核管理の在り方にも影響を及ぼしつつある。また、核開発問題をめぐって米国・イラン間の対立は深まる一方だが、その要因にはイランの核開発のみならず米国の中東政策とも密接な関連がある。
-発を意図するとの疑惑を招いた。その後の調査により、イランによる過去18年間に及ぶウラン濃縮実験の事実等が報告され、IAEAに対する義務違反が明らかになるとともに核兵器開発疑惑が一層強まった。イランはこれに対し、NPT4条によって加盟国に認められた「原子力の平和利用の権利」を主張するとともに核開発活動を継続させており、米国を始めとする関係各国による同活動の阻止に向けた対応が現在焦点となっている。核兵器製造に転用し得る技術をイランが保有することは、中東情勢のさらなる不安定化を招きかねない。加えてこの問題は、中東諸国への核拡散の懸念と相まってNPT体制に動揺を与え、IAEA体制下における核管理の在り方にも影響を及ぼしつつある。また、核開発問題をめぐって米国・イラン間の対立は深まる一方だが、その要因にはイランの核開発のみならず米国の中東政策とも密接な関連がある。+
== イラン核問題の今後== == イラン核問題の今後==
-安保理によるイラン制裁決議が採択されたことで、核開発問題の解決に向けて一定の前進が見られた。しかし、イランと経済面及び資源面等で利害関係を有する中ロは依然とし+安保理によるイラン制裁決議が採択されたことで、核開発問題の解決に向けて一定の前進が見られた。しかし、イランと経済面及び資源面等で利害関係を有する中ロは依然として米国の強硬姿勢を牽制しており、その溝は容易には埋まりそうにない。制裁が効果を挙げられない場合、イランは引き続き核開発を軸にその存在感を維持し続けることができる。またイランは現在もNPT体制下における「原子力の平和利用の権利」を主張している。米国や西側諸国が恐れるのは、イランが北朝鮮のしたようにNPTの下でウラン濃縮等の技術を取得した後、NPTを脱退して核兵器製造へ向かうことである。2005年5月に開催されたNPT再検討会議において、イランの核開発問題やNPT脱退条件の厳格化等が議論されたが、NPTの枠外で核の保有・開発を黙認されているイスラエル等の存在に対する批判があったことなどから、目立った成果を上げることはできなかった。その背景には米くの核管理政策における「二重基準」が存在しており、このことがNPT体制を動揺させ、核兵器関連条約とそれを所掌するIAEAの権威・正当性をも損なわせる結果となった。加えて、イランがイラク、シリア、レバノンのイスラム教シーア派を通じて域内の影響力を拡大させていることに対する警戒感から、サウジアラビアなどの湾岸アラブ諸国による核技術取得に向けた動きも見られ、イランの核開発問題とともに中東における核拡散の懸念は一層強まりを示している。昨年12月、イラクの情勢悪化を受け、米国の超党派の諮問機関である「イラク研究グループ」により、戦闘部隊の2008年初頭までの撤収やイラン・シリアとの対話等が提言された。しかし2007年1月、ブッシュ大統領により発表された「イラク新政策」には同提言は盛り込まれず、逆に米軍約2万人の増派やイラン・シリアと引き続き対抗するなどの方針が示された。同政策にはイラクの安定化のほか、親米アラブ諸国の同盟を再結成してイラン等の反対勢力を孤立化させることにより、中東全体を支配下に置こうとする狙いがあるとも指摘されており、事実、サウジアラビアなどイスラム教シーア派を警戒するアラブ諸国は、同政策に対する支持を表明して「イラン抑止」で足並みを揃えた。現在イラクでは、「イラク新政策」に基づきスンニ、シーア両派の民兵組織に対する大規模掃討作戦が展開されているが、親イランのマリキ首相はシーア派民兵組織に対する本格的な攻撃に踏み切っていない。同政策で「イラン抑止」を掲げながら親イランのマリキ首相に協力を仰ごうとする米国の作戦上の矛盾点が露呈している。シーア派民兵組織の幹部は、最近関係を強化しているイランとシリアの両国に潜伏しつつあり、このままイラクの内戦状態が続く場合、イラクの国家破綻と近隣諸国による介入も懸念されている。これに加え、核開発をめぐって存在感を強めるイランに対し、米国やイスラエルによるイランの核施設への攻撃の可能性を指摘する報道も見られるなど、中東情勢は緊迫の度合いを益々強めていると言える。事実、米国によるペルシャ湾への空母増派や中東を担当する中央軍司令官に海軍出身のファロン氏が指名されたことなどは、地上戦が選択肢にないイラン攻撃を強く意識したものとの報道もなされた。このような状況に対し、イランの核施設に対する攻撃は効果的でない上、イランによる報復やテロを招くとともに原油価格の高騰などの国際経済上の混乱を引き起こす恐れがあることから、外交交渉こそが最善の選択であるとの指摘もなされている。今後、米国を軸としながらも、あくまで外交交渉に解決の可能性を求めるEU、経済制裁などの強硬措置による解決には反対する中ロ等の関係国がいかなる形でイランの核開発問題の解決に取り組むのか、また、それによりイラクを始めとした中東情勢がいかなる影響を受けるのか、その動向と行方が注目されている
-て米国の強硬姿勢を牽制しており、その溝は容易には埋まりそうにない。制裁が効果を挙げられない場合、イランは引き続き核開発を軸にその存在感を維持し続けることができる。+
-既に述べたとおり、イランは現在もNPT体制下における「原子力の平和利用の権利」を主張している。米国や西側諸国が恐れるのは、イランが北朝鮮のしたようにNPTの下+
-でウラン濃縮等の技術を取得した後、NPTを脱退して核兵器製造へ向かうことである。2005年5月に開催されたNPT再検討会議において、イランの核開発問題やNPT脱退条件の厳格化等が議論されたが、NPTの枠外で核の保有・開発を黙認されているイスラエル等の存在に対する批判があったことなどから、目立った成果を上げることはできなかった。その背景には米くの核管理政策における「二重基準」が存在しており、このことがNPT体制を動揺させ、核兵器関連条約とそれを所掌するIAEAの権威・正当性をも損なわせる結果となった。加えて、イランがイラク、シリア、レバノンのイスラム教シーア派を通じて域内の影響力を拡大させていることに対する警戒感から、サウジアラビアなど+
-の湾岸アラブ諸国による核技術取得に向けた動きも見られ、イランの核開発問題とともに中東における核拡散の懸念は一層強まりを示している。昨年12月、イラクの情勢悪化を受け、米国の超党派の諮問機関である「イラク研究グループ」により、戦闘部隊の2008年初頭までの撤収やイラン・シリアとの対話等が提言された。しかし2007年1月、ブッシュ大統領により発表された「イラク新政策」には同提言は盛り込まれず、逆に米軍約2 万人の増派やイラン・シリアと引き続き対抗するなどの方針が示された。同政策にはイラクの安定化のほか、親米アラブ諸国の同盟を再結成してイラン等の反対勢力を孤立化させることにより、中東全体を支配下に置こうとする狙いがあるとも指摘されており、事実、サウジアラビアなどイスラム教シーア派を警戒するアラブ諸国は、同政策に対する支持を表明して「イラン抑止」で足並みを揃えた。現在イラクでは、「イラク新政策」に基づきスンニ、シーア両派の民兵組織に対する大規模掃討作戦が展開されているが、親イランのマリキ首相はシーア派民兵組織に対する本格的な掃討に踏み切っていない。同政策で「イラン抑止」を掲げながら親イランのマリキ首相に協力を仰ごうとする米国の作戦上の矛盾点が露呈している。シーア派民兵組織の幹部は、最近関係を強化しているイランとシリアの両国に潜伏しつつあり、このままイラクの内戦状態が続く場合、イラクの国家破綻と近隣諸国による介入も懸念されている。これに加え、核開発をめぐって存在感を強めるイランに対し、米国やイスラエルによるイランの核施設への攻撃の可能性を指摘する報道も見られるなど、中東情勢は緊迫の度合いを益々強めていると言える。事実、米国によるペルシャ湾への空母増派や中東を担当する中央軍司令官に海軍出身のファロン氏が指名されたことなどは、地上戦が選択肢にないイラン攻撃を強く意識したものとの報道もなされた。このような状況に対し、イランの核施設に対する攻撃は効果的でない上、イランによる報復やテロを招くとともに原油価格の高騰などの国際経済上の混乱を引き起こす恐れがあることから、外交交渉こそが最善の選択であるとの指摘もなされている。今後、米国を軸としながらも、あくまで外交交渉に解決の可能性を求めるEU、経済制裁などの強硬措置による解決には反対する中ロ等の関係国がいかなる形でイランの核開発問題の解決に取り組むのか、また、それによりイラクを始めとした中東情勢がいかなる影響を受けるのか、その動向と行方が注目されている+
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2015年8月5日 (水) 08:55の版

イランの核開発の問題点

イランの核開発問題は、2002年8月、イランが秘密裡にウラン濃縮施設を建設していた事実が暴露されたことに端を発する。イランは、国際原子力機関(IAEA)及び核拡散 防止条約(NPT)体制下にあり、核兵器製造に転用し得るウラン濃縮1等の核関連活動の運用には高い透明性が求められるが、同国による秘密に行った核関連施設の建設は核兵器開発を意図するとの疑惑を招いた。その後の調査により、イランによる過去18年間に及ぶウラン濃縮実験の事実等が報告され、IAEAに対する義務違反が明らかになるとともに核兵器開発疑惑が一層強まった。イランはこれに対し、NPT4条によって加盟国に認められた「原子力の平和利用の権利」を主張するとともに核開発活動を継続させており、米国を始めとする関係各国による同活動の阻止に向けた対応が現在焦点となっている。核兵器製造に転用し得る技術をイランが保有することは、中東情勢のさらなる不安定化を招きかねない。加えてこの問題は、中東諸国への核拡散の懸念と相まってNPT体制に動揺を与え、IAEA体制下における核管理の在り方にも影響を及ぼしつつある。また、核開発問題をめぐって米国・イラン間の対立は深まる一方だが、その要因にはイランの核開発のみならず米国の中東政策とも密接な関連がある。


イラン核問題の今後

安保理によるイラン制裁決議が採択されたことで、核開発問題の解決に向けて一定の前進が見られた。しかし、イランと経済面及び資源面等で利害関係を有する中ロは依然として米国の強硬姿勢を牽制しており、その溝は容易には埋まりそうにない。制裁が効果を挙げられない場合、イランは引き続き核開発を軸にその存在感を維持し続けることができる。またイランは現在もNPT体制下における「原子力の平和利用の権利」を主張している。米国や西側諸国が恐れるのは、イランが北朝鮮のしたようにNPTの下でウラン濃縮等の技術を取得した後、NPTを脱退して核兵器製造へ向かうことである。2005年5月に開催されたNPT再検討会議において、イランの核開発問題やNPT脱退条件の厳格化等が議論されたが、NPTの枠外で核の保有・開発を黙認されているイスラエル等の存在に対する批判があったことなどから、目立った成果を上げることはできなかった。その背景には米くの核管理政策における「二重基準」が存在しており、このことがNPT体制を動揺させ、核兵器関連条約とそれを所掌するIAEAの権威・正当性をも損なわせる結果となった。加えて、イランがイラク、シリア、レバノンのイスラム教シーア派を通じて域内の影響力を拡大させていることに対する警戒感から、サウジアラビアなどの湾岸アラブ諸国による核技術取得に向けた動きも見られ、イランの核開発問題とともに中東における核拡散の懸念は一層強まりを示している。昨年12月、イラクの情勢悪化を受け、米国の超党派の諮問機関である「イラク研究グループ」により、戦闘部隊の2008年初頭までの撤収やイラン・シリアとの対話等が提言された。しかし2007年1月、ブッシュ大統領により発表された「イラク新政策」には同提言は盛り込まれず、逆に米軍約2万人の増派やイラン・シリアと引き続き対抗するなどの方針が示された。同政策にはイラクの安定化のほか、親米アラブ諸国の同盟を再結成してイラン等の反対勢力を孤立化させることにより、中東全体を支配下に置こうとする狙いがあるとも指摘されており、事実、サウジアラビアなどイスラム教シーア派を警戒するアラブ諸国は、同政策に対する支持を表明して「イラン抑止」で足並みを揃えた。現在イラクでは、「イラク新政策」に基づきスンニ、シーア両派の民兵組織に対する大規模掃討作戦が展開されているが、親イランのマリキ首相はシーア派民兵組織に対する本格的な攻撃に踏み切っていない。同政策で「イラン抑止」を掲げながら親イランのマリキ首相に協力を仰ごうとする米国の作戦上の矛盾点が露呈している。シーア派民兵組織の幹部は、最近関係を強化しているイランとシリアの両国に潜伏しつつあり、このままイラクの内戦状態が続く場合、イラクの国家破綻と近隣諸国による介入も懸念されている。これに加え、核開発をめぐって存在感を強めるイランに対し、米国やイスラエルによるイランの核施設への攻撃の可能性を指摘する報道も見られるなど、中東情勢は緊迫の度合いを益々強めていると言える。事実、米国によるペルシャ湾への空母増派や中東を担当する中央軍司令官に海軍出身のファロン氏が指名されたことなどは、地上戦が選択肢にないイラン攻撃を強く意識したものとの報道もなされた。このような状況に対し、イランの核施設に対する攻撃は効果的でない上、イランによる報復やテロを招くとともに原油価格の高騰などの国際経済上の混乱を引き起こす恐れがあることから、外交交渉こそが最善の選択であるとの指摘もなされている。今後、米国を軸としながらも、あくまで外交交渉に解決の可能性を求めるEU、経済制裁などの強硬措置による解決には反対する中ロ等の関係国がいかなる形でイランの核開発問題の解決に取り組むのか、また、それによりイラクを始めとした中東情勢がいかなる影響を受けるのか、その動向と行方が注目されている

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