宗教問題2

出典: Jinkawiki

2018年1月26日 (金) 21:54 の版; 最新版を表示
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目次

ヨーロッパと宗教

移民と難民

 EU諸国には2000万人以上と推定される移民が住んでいる。北アフリカ、サハラ以南アフリカ、トルコ、インド亜大陸などが主な出身国・地域である。イギリスやフランスの植民地出身者も多いが、これは、第二次世界大戦によって多くの人命、労働力を失った国々が、復興とその後の経済発展のため外来の労働者を必要としたということだ。そして、移民労働者の貢献なしに、今日の西ヨーロッパの経済とその豊かさはあり得なかったと言っても過言ではない。この人々がその後定住し、家族を呼び寄せ、今日では二世たちが移民の中心となっていて、市民としての権利が認められている場合が多くなった。  加えて、ヨーロッパ各国は、政治的・宗教的迫害を受けたり、戦火に遭ったりした難民を、かつてのソ連・東欧諸国、パレスチナ、インドシナ三国、今は戦乱の地シリアなどから受け入れてきた。  それゆえ、EUのヨーロッパは、国、民族と文化の多様性を特徴とし、数十の言語が使われ、尊重され、五指を超える宗教が存在する、多文化共生を実現してきたと言えるだろう。

「イスラム問題」を受けて

 今日、ヨーロッパのなかに幾つかの亀裂が走るようになった。その一つが「イスラム問題」という亀裂だ。  2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センタービルが破壊され、続いてヨーロッパの三つの首都で地下鉄の爆破などのテロ事件が起こり、イスラム過激派の攻撃として大きな衝撃を与えた。その間にイラク戦争があったことも忘れられない。これらの事件は、ヨーロッパ社会に緊張と苦悩をもたらした。イスラムは「狂言的」で、「暴力的」だと警戒心や敵意をあおるような報道や政治宣伝も行われるようになり、批判の眼が、ヨーロッパのなかに定住している移民にも向けられるようになったのだ。  国籍・出身国からみて「ムスリム(イスラム教徒)」とみなされる移民は確かに多かったが、非ムスリムもいる。ヨーロッパで生き、教育を受け、イスラムから離れる者、個人的信仰としてモスク(イスラム教の礼拝所)に通うなど集団行動は行わない者、宗教は私的なこととし、仕事など社会関係の場では誰とも隔てなく付き合う者も、少なくない。  しかし、ヨーロッパ内外で起こったイスラム過激派のテロ行動から衝撃を受けた市民は少なくなく、ムスリムといわれる移民にも動揺が起こった。イスラム過激派の脅威を強調することで支持を伸ばそうとする政党も現れた。フランスでは、政治と宗教の分離という考えに基づき、公立学校のムスリム生徒の服装に条件を付けようとし、紛争が起こる。すると、「イスラムは近代国家と相容れない宗教」といった宣伝がなされた。

問題の本質

 ムスリムの移民の若者のなかから、ごく少数ながら過激派の直接行動に参加する個人が生まれてしまう問題の背後には、差別されていると感じ、失業し、貧しい移民二世たちの存在がある。2015年1月、預言者の風刺マンガを掲載したフランスの一週刊紙の社屋を襲って死傷者を出した事件の容疑者は、そうした青年だったと思われる。  移民の失業率の高さや貧しさは調査や統計でも示されている。ヨーロッパ各国にとって社会経済改革は必要な大きな課題であり、特に雇用差別を無くし、平等な市民として扱うことが大切なのである。


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