フードバンク

出典: Jinkawiki

2016年7月30日 (土) 20:51 の版; 最新版を表示
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目次

概要

食品の安全、品質には、問題ないが、食品企業の製造過程で発生する規格外品や包装の破損や汚れなどで出荷できない商品、商品入れ替えで余剰食品となってしまった商品、いわゆる食品ロスと呼ばれる商品を無償で譲り受け、必要とする人に再分配する活動、および活動する団体の名称。正社員はとらず、ボランティアのみで構成される。食品製造業者、食品輸入業者、食品小売店、卸店が寄付し、NPO法人,ボランティア団体、セカンドハーベストジャパンや宅配会社で集められ、児童養護施設、女性シェルター、支援施設、福祉施設、コミュニティセンター、炊き出し先などへ無料で提供される。例外的に個人的な食品寄付を受け付けているケース、運営主体に十分な設備が整っておらず、直接企業側に団体が受け取っているケース、食品提供の情報だけを提示し、受け渡しは提供源の企業が負担しているケース、地方自治体のの福祉課などが窓口になり提供するケースもある。市場に流通させることができない余剰食品を特定の場所に蓄えて、分配することから、〝食糧の銀行“と呼ばれる。 フードバンクにおいては提供された食品をできるだけたくさん受け取ってもらうのではなく、必要な分を必要な分だけ=マッチングという形式をとっている。 食品ボランティアだけでなく、食品倉庫の貸し出し、食品の入出庫の総量パソコンで記入するパソコンボランティア、配送ボランティア、役所、支援センターとの仲介を担う相談ボランティアがある。その他、使用しなくなった家具の提供や、食品を遠隔地に輸送する際の運送会社による運賃の値引き、食品倉庫の貸与も支援の一環である。日本の食料自給率は40%前後(2015年現在、農林水産省調べ)と先進国の中でも最も低い水準にあり、毎年我が国では推定500万トン~900万トンもの食品が廃棄されている。食品ロス解消策として始まった活動だが、貧困支援策としても注目されている。


扱える食品と扱えない食品

扱える食品は安全、品質上問題がない米、パン、麺類、菓子、飲料、調味料、インスタント食品、など、全体的には常温食品、保存食品を主とする運営主体が多い。加工食品の場合、賞味期限が1か月以上のものとされている。一部、生鮮食品や 冷凍食品を扱う団体もあり、数時間以内に提供されるように配慮されている。農業が盛んな地域では農家や個人の家庭菜園から寄付される農産物を主に取り扱うところもある。お弁当とサンドイッチ(販売期限と消費期限の間隔が狭すぎるために配送不可)、食べ残し(衛生上の問題)、消費期限が切れた食品、消費期限の記載がない商品(安全上の問題)は扱えない。


日本のフードバンクの歴史

日本で初めに設立されたフードバンク企業団体は元アメリカ軍のチャールズ・E・マクジルトンによるセカンドハーベストジャパンで、2000年1月に設立、当初は炊き出しのために食材を集める連帯活動から始まった。2002年からは、Food Bank Japanという名称で本格的に活動を開始、特定非営利活動法人となり、2004年には東京・浅草に事務所を設立。2007年にセカンドハーベストジャパンに改名、配送用車両の寄付、冷凍車の寄付を受ける。食品の扱い量、種類を拡大させてきた。3月27日にはテレビ東京「ガイヤの夜明け」〝余った食のゆくえ~消費期限 もう一つの物語~としてその活動が紹介された。2008年には大原悦子著「フードバンクの挑戦」で日本初の取り組みとして大きく取り上げられ、フードバンクという言葉が広く知られるようになる。2010年に日本を含むアジアにフードバンクの発展を促進するミッションを掲げ、アメリカミネソタ州にセカンドハーベストアジアを設立した。2011年に起こった東日本大震災では浅草、上野にて帰宅困難者への炊き出し、仙台、福島、石巻に支援物資を配送した。同年、社団法人日本パブリックリレーションズ協会主催の「PRアワードグランプリ」で最優秀賞を受賞、翌年1月から12月にかけては農林水産省とのフードバンク推進事業を推進。現在、セカンドハーベストジャパンの他にも、40以上の団体がフードバンクの活動を行っている。画像:Http://2hj.org/about/images/img history.jpg


成果

農林水産省の国内のフードバンクの活動実態調査によると、東日本大震災が起こった2011年では、7,398.9 トンの食品の取扱のうち被災地向けの支援物資は、1,597.3トンであり、正規品の寄付量は、2,285.3 トンである。また、他のフードバンクからの寄付量は 2,652.8トンで、5,113.6 トンがフードバンクにおいて取り扱われた販売期限切れ等の食品量である。また、同様に、2012 年と 2013 年の食品ロス削減量を算出した結果、それぞれ 6,443 トンと 4,524.8トンである。 セカンドハーベストジャパンは、被災地への合計発送回数は184回、13,060個の食品パッケージを発送し、(2012年12月31日時点)集まった寄付金は188,489,245円であった(2011年11月時点)。セカンドハーベストジャパンは活動開始時の食品取扱高は30トンであったが、2012年には3152トンと約100倍になった(2012年12月時点)。フードバンク関西は食品取扱高が統計を取り始めた2004年には18トンであったが、2013年には187トンになった。

海外での活動

フードバンクが誕生した米国での歴史はおよそ40年と日本よりも長く、広く民衆に知られ、食品流通量も多い。アメリカでは1967年にJohn van Hengel氏によってアリゾナ州で活動が開始され、食品ロス削減がきっかけであったが現在は飢餓問題の解決に目的が変化している傾向がある。アメリカには200の活動団体があり、その中でも最も大きい団体がFeeding Americaである。Feeding Americaは赤十字など他の災害救済機関と協力し、災害地の支援活動も行っている。日本と違う点として、企業から寄付の少ない肉や乳製品を購入し、施設などに配給している点である。寄付品に偏りがある一方、提供者には子供たちが多く含まれることから、栄養素の多い食品を食べてもらいたい、という動きが高まり開始された。災害時には、一刻も早く支援物資を届けるために包装の破損や汚れで出荷できない商品を待つ時間がない為、通常に市場に出回る商品を提供している。アメリカのフードバンクは市民にも広くその活動が知られ、企業側も社会貢献に対する非常に強い積極性がみられる。そのため個人的からの寄付金も多く、フードバンクの組織の重要な収入源となっている。そして、寄付した企業や個人を保護する法律Emerson Good Samaritan Food Donation Actが制定されており、寄付した食品が原因で起こった不慮の事故を、善意の行為から起こったものとして寄付した企業や個人に責任を追及しないことが定められている。フードバンク間の連携を促進・調整するために取りまとめる組織がオンラインで食品の調整を行うことができるシステムがある。 ヨーロッパでは1984年に初めてフードバンクが作られた。1986年にはフードバンク同盟が作られてどちらもフランスに設立された。続いてスペインやベルギーに設立され、次第にポーランドやリトアニア、セルビア、チェコ、スロバキアなどの東欧諸国に広まった。ヨーロッパではフードバンクの活動より炊き出しを多く行っており、国からの援助も厚い。しかし、災害時の援助は行っていない。理由としてヨーロッパに自然災害が少ないことが挙げられる。EUに所属する国はPEADから安定して食品を受けとっている。ヨーロッパでもアメリカと同様、フードバンク間の連携を促進するために近隣諸国のフードバンクと電話でやり取りをして食品の調整を行っている。

課題

日本でのフードバンクの歴史はまだ浅く、農林水産省のヤフーリサーチを利用した調査によると、フードバンクの活動を知らないと回答した比率は全体で74.8%と7割を上回る結果となった(2009年 農林水産省調べ)。また、一般市民がフードバンクに対し、正しい認識を持っていないことも課題の一つだ。フードバンクは野宿の人を支援する活動である、売れ残った魅力のない商品ばかりを商品として扱っている、企業の売名行為であると一部の人は認知している。無償の活動であるため、資金不足、人手不足が問題となっている。フードバンクの活動は寄付金、補助金、会員費から得た数十万~数百万で成り立っており、その費用を事務所の賃貸費、維持費、通信費に充てる場合が多い。食糧の提供量は年々増加しているもののそれを配送が追い付いていないのが現状である。また、提供した食品が転売、再販されないという担保や、提供する企業と受け取る側の団体の責任の明確にすること、提供される食品の中には賞味期限、消費期限の迫っている食品もあり、それらの食品の適切な管理体制の構築も課題となっている。さらに、生鮮食品や冷凍食品を一時保存する倉庫や食糧を管理する上で十分な設備が整っていない団体が複数あり、提供元から配送先に短時間で直接届けなくてはならない場合が多く、スタッフの負担が大きい状況にある。受け取った団体がさらにほかの施設に再供給している場合、輸送が完了するまでに期限切れになってしまう、安全上の問題で受け入れ拒否されるなどの問題もある。アメリカ、ヨーロッパとのシステムを参考にした、フードバンク間の連携を促進し、食料の調整を行うことができるシステムの構築が進められている。フードバンクの活動においては、配給する商品の量、時期が一定でないため、フードバンクに依存しすぎると、一時的に配給されなかった場合に大きな影響が出る可能性があることが懸念されている。安全かつ衛生面の保証、効率的な配送方法が今後の課題とされる。

メリット

受け取る側のメリットは食費の節約、貧困の解消があげられる。福祉施設による、より質の高いサービスの提供になる。また、生活困窮者と企業側のネットワークが、災害時の助け合いに大きく影響する。 企業側のメリットとしては第一に廃棄コストと環境負荷の削減、もったいないという気持ちを持たせること、広報や人材採用に好影響を与えていることが挙げられた。 行政側のメリットは食品ロス削減、財政負担の軽減、または地域活性化や社会貢献に重要な役割を果たすことができると大きな期待がかかっている。

脚注

食料自給率 国内の食料消費が国産でどの程度賄えているかを表す指標。品目別自給率=国内生産量/国内消費仕向量

      (=国内生産量+輸入量-輸出量-在庫の増加量(又は+在庫の減少量))

食品ロス まだ食べられるのに廃棄される食品のこと。我が国では年間推定500万トン~900万トンもの食品が廃棄されている。、家庭における一人当たりの食品ロスは、1年間で24.6kg。これは、茶碗164杯分のごはんに相当する。(茶碗1杯分のごはんを150gとして計算)


PEAD European Food Aid Programを指す。1980年代、EUに設置されたプログラムである。倉庫内の備蓄食品をニーズがある施設に配送、過剰食品に関する問題を解決している。シリアル、米、バター、オリーブオイル、塩を扱っている。


参考資料

朝日新聞朝刊 「キーワード」(2016年3月28日)

農林水産省 食品ロスの現状 平成25年度推計値

フードバンクという挑戦――貧困と餌食の間で――(岩波現代文庫 大原悦子著)

平成21年度フードバンク活動実態調査報告書(株式会社三菱総合研究所 2010年2月)

外部リンク

[1]セカンドハーベストジャパン|フードバンクとは|食べ物の問題

[2]農林水産省|フードバンク

[3]フードバンク宇都宮|助け合う栃木

[4]消費者庁|食べ物のムダをなくそうプロジェクト


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